テラーノベル
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『以上が、今日の報告です』
会長「そう。ご苦労さま。もう戻っていいわよ。あと、目良が今夜の書類を持っているから、受け取っておきなさい」
……朝から夕方まで雄英で任務をこなしていたのに、まだあるのか。
『承知しました』
もちろん、そんなことは口が裂けても言わない。
言われたことは素直に受け入れ、淡々とこなす。
それが、この人の望む蛇神澪。
拒否したところで、結局苦しむのは自分なのだから。
『失礼します』
一礼してから、会長室の扉をできるだけ音を立てないように閉めた。
廊下を歩き出したところで、後ろから足音が聞こえる。
振り返ると、そこには職員の目良さんがいた。
目良「蛇神さん……」
『あ、目良さん。ちょうどよかった。私の今晩の書類、今あります?』
目良「ええ、ありますけど……本当にやるんですか?」
『やるも何も、そういう指示ですから』
目良「そう、ですか……。体調には気をつけてくださいね」
目良さんの目の下には、今日も濃い隈が浮かんでいた。
……隈だらけの人にだけは言われたくない。
『ありがとうございます』
口ではそう答え、書類を受け取る。
軽く頭を下げ、その場を後にした。
『今日は事務仕事だけか……』
自室へ向かうため、エレベーターに乗り込む。
手元の書類をぱらぱらとめくりながら、内容を確認していく。
幸い、今夜は現場に出る必要はなさそうだった。
それだけが救いだ。
そう思った、そのとき。
ふわりと身体が浮くような感覚が途切れ、エレベーターの扉が開いた。
目的の階ではない。
……誰か乗ってくるのか。
そう思って顔を上げた瞬間。
『げ』
ホークス「げって何、げって」
そこにいたのは、見慣れた金髪と赤い翼。
公安にいると、どうしてこうも遭遇するのだろうか。
……NO.2との遭遇率が異常に高い。
このままだと、いつかファンに刺されるな。いや、冗談抜きで。
『先輩、ほんとに暇なんですか』
ホークス「うん、暇」
『さらっと嘘つきますよね、先輩って』
ホークス「えー、ひどくない?」
どの口が言う。
そんなことを考えているうちに扉が閉まり、エレベーターが再び動き出す
ホークス「まぁまぁ。じゃあ、その暇を埋めるために先輩を助けてよ」
『……はい?』
話が飛躍しすぎている。
そもそも、先輩だって今夜任務があるだろう。
どうして私が助けなければならないのか。
意味がわからず顔をしかめていると、
『あ』
一瞬の隙を突かれた。
ホークスは私の腕に抱えられていた書類をまとめてひょいと取り上げた。
『……は?』
ホークス「これで俺も暇じゃないね」
『いや、私が暇です。返してください』
ホークス「えー、もう俺の仕事になったし?」
『勝手すぎます。というか、先輩だってまだ任務がありますよね』
ホークス「さあねー」
『さあね、じゃないでしょう』
この人、本当に何を考えているんだ。
私が呆れている間にも、エレベーターは目的の階へと近づいていく。
やがて、到着を知らせる音が鳴った。
ホークス「あ、俺ここで降りるんで」
『あ、ちょっと先輩!』
ホークス「もう遅いけん。はよ寝り」
そう言い残し、ホークスは書類を抱えたままエレベーターを降りていった。
閉まりかけた扉の向こうで、赤い翼が揺れる。
そして。
扉は無情にも閉じた。
『…………』
再びひとりになったエレベーターの中で、私はしばらく立ち尽くしていた。
……何なんだ、あの人。
人の仕事を勝手に持っていくなんて、余計なお世話にもほどがある。
『……ほんと、余計なお世話すぎる』
そうつぶやいた声は、誰もいないエレベーターに虚しく響いた。
コメント
1件
読ませていただきました! ホークスの“余計なお世話”が、めっちゃ優しさに見えてきちゃいましたね…笑 あの「はよ寝り」には胸がギュッとなりました。澪さんの心の声がすごくリアルで、「隈だらけの人にだけは言われたくない」っていう冷静なツッコミも好きです。 お互いにツンデレな関係性が滲んでいて、この先また会話が読みたくなりました🌷
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#ヴィデク
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