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yuzuさんの作品全部全部素晴らしくて芸術作品かなんかかと思いながら読んでます。大好きです。楽しみにしてます
今回もさいこー!!!
【閲覧注意⚠︎】この小説はnmmnです。
nmmnが苦手な方やタグの意味が分からない方は一度ご確認の上、再度閲覧をするかのご検討をお願いします。
又、
この小説は作者の妄想・フィクションです。
ご本人様(キャラクター等)には一切の関係・関連はありません。ご迷惑がかからぬよう皆で自衛をしていきましょう!
閲覧は自己責任です。
※その他BL要素有り( 🟦×🏺)
今一度ご確認の上、ご理解ご了承頂ける方のみ本文へお進みください🙌
ご確認ありがとうございます!!!
それではどうぞ〜🫶✨
🏺『』その他「」無線「”○○○”」
「つぼ浦」
『ん、…あぁアオセン。なんすか?、』
不安だった。
時々垣間見えるその疲れきった声色が、表情が、背中が、瞬きをしてる間に消えてしまいそうなその淡白な返事が、とても不安だった。
けれどもつぼ浦自身はなんとも無い様子で、ただ気だるげに首を傾げては早く要件を言えとサングラス越しに熱い視線を送り続ける。
「…んーん。別になんでも無いんだけどね」
『なんすかそれ(笑)、』
よく晴れた青空の下、警察署の屋上はやけに静かで穏やかな時間が流れていた。
青井がつぼ浦の隣に座り込めば、つぼ浦はけらりと笑って息を吐く。
『ふぅ。…なんか食います?』
「何があるの?」
『んー、と。ハンバーガーとコーラと、魔法少女カフェの色んなものと、、それぐらいっすかね』
「じゃあコーラ1つちょうだい」
『ついでにハンバーガーもくれてやりますよ』
一つで良いと言ったのに、つぼ浦は否応なしに十個ずつまとめて青井のスタッシュへと飲食物を押し込む。
「こんなに食べきれないんだけど?」
『いいじゃないっすか別に。腐るもんでもないし』
ロスサントスの技術は凄いのだ。
作った食べ物は永久的に腐らない、形が崩れない。
それは食べ物に限ったことでもなく、人間だってどんなにぐちゃぐちゃな怪我をしようと死ぬことはないし、外傷的にはそこまで酷くも見えない。
『そういやアンタ、ちゃんと病院行きました?』
「え、なんで?」
『いやいや(笑)、だってずっと包帯ぐるぐる巻いてたから。出血してんだろうなぁって思って』
ちらりと青井の衣服を見れば、特段血が滲んでいる場所は無い。
『病院行ったんすか?』
「……いーや。行ってない」
『ふは(笑)、正直者が。はよ行ってくださいよ』
「うん。後で絶対行くわ」
『今行けいま』
「今はちょっと厳しいかも」
“ケツくっついたから動けないわ”と気だるげに呟いて、身体に悪そうな重めのタールを肺いっぱいに吸い込む。
流れるようなタバコ休憩につぼ浦は仕方がないと諦めて、一緒に吸おうとタバコを懐から一本取り出した。
『アオセン、火ぃください』
「…お前吸えるの?」
『吸えるから持ってんだろ』
「あっそぅ…、ならいいけど。じゃあ口にくわえてよ」
『?、こうっすか』
まだ火を付けてないのになぁと思いながらタバコを口に加えれば、青井はつぼ浦にぐっと近づいてそのままタバコからタバコに火を移す。
『ッ、』
「あは。びっくりした?」
『…別に。やり慣れてんなと思いはしたがな』
とても手際よく火を付けたものだから、つぼ浦は口の中にほろ苦くて甘い味を感じながらそれをふーっと吐き出す。
「初めてやったけどね」
『嘘つけよ』
「はいそうやって決めつける〜。つぼ浦くんいけないんだァ、署長に言って減給してもらおう」
『うぜぇ。ぶっ飛ばすぞ』
淡々と述べる言葉にケラケラと笑って、青井は鬼の被り物をしているというのに随分と器用にタバコを吸う。
しばらく二人とも無言で休憩を挟んでから、あと一吸いで青井のタバコが終わるというところで…つぼ浦が不意に呟いた。
『俺アオセンのこと好きなんだよな』
「けほッ、ケホケホ、ッ…。…なんて?」
『二度も言うかよ』
「いや言ってよ。最後の一吸いを無駄にした代償はでかいぞお前…」
未だにぷかぷかとタバコを吹かしているつぼ浦を眺めながら、青井の手元にはもう何もない。
『…まぁ、そうだな。言えるうちに言っておくのも悪くねぇ。……俺、アンタの事が好きだ』
つぼ浦の指先を見ればカタカタと小刻みに震えていて、タバコを吸うなんてとてもじゃないが出来そうに無い。
「…へぇ、俺のこと好きなんだ。…どこが?」
『言うと思ったぜ。自己肯定感の低い男がよォ』
つぼ浦は呆れたようにそう呟き、カチャリとサングラスを整える。
「…ねぇ、どこが好きなの?」
『うっせぇ。…、……全部だぜんぶ。悪ぃかよ』
きゅっと膝を縮こませて、まるで子どものように言葉を漏らす。
「全部かぁ…」
『おう。全部だ』
「……そのタバコもう吸わない?」
『…、やらねぇぞ』
「ちょうだいよ」
『おい。話聞いてたか??』
スっと簡単につぼ浦からそのタバコを奪って、また器用に口内へと煙を潜らせる。
そして深く深く吸い込んでから、ふーっ…と軽くつぼ浦の顔にその煙を吹きかけた。
『っ、けほけほッ、…、てめぇ。暴行罪で切符切ってやろうか?』
「ふは(笑)、ここはロスサントスだから切れないよ。それに、これは愛情表現ね」
『は?』
「…。まぁ、俺もお前のこと嫌いじゃないからさ」
『……男らしくねぇな』
「カッチーン。はぁ好きだが?、じゃあ聞くか?、1〜100まで聞く勇気がお前にはあるのか?」
『いや、その言葉だけで十分だ』
自分で挑発したのに、つぼ浦は“好き”の一言で耳まで真っ赤にして首を振る。
「…はは(笑)、可愛いところあるじゃん」
『笑うな。はっ倒すぞ』
「んふふ、好きだよ。つぼ浦」
『っ、ッ…、馬鹿が、』
そう一言だけ呟いて、つぼ浦はふいっとそっぽを向く。
そんな日々を何回も何十回も続けている。
「…つぼ浦、これで何回目だろうね」
『?、何がだ』
「…んーん。なんでもないよ。何でもない」
青井は知っている。
この後つぼ浦が本署の屋上から飛び降りることを。
しかも誰にも見つからないように、わざわざ本署の裏に位置した場所で飛び降りることを。
「ねぇつぼ浦、俺たち相思相愛だけど。…嬉しい?」
『そりゃあ、まぁ、…嬉しいぜ。凄く』
「……そっか。じゃあ良かった」
恥ずかしそうに小さく笑みを漏らして、つぼ浦はきゅっと口を噤む。
「忘れないでね。俺が言ったこと」
『……、何をだ』
「何って(笑)、…俺がお前のこと好きだってこと」
『すぅーッ…、、゙あ〜、今めっちゃきた。なんかもう十分だわ』
「何が(笑)」
『俺には十分過ぎるっつーか…、…アオセンも、悪ぃな。気ぃ使わせちまって』
「んー。信じてないじゃん。その言い方」
いつだってこいつは俺の言葉を真に受けない。
『はは(笑)。、…だってよォ、アンタモテるじゃねぇか』
白黒関係なく人が集まるその光景は、いつ見たって心をざわつかせる。
『俺、アンタが思ってるより最低なヤツだからさ。…これで満足しとかねぇと、アンタに迷惑掛ける気がするんだよな』
“だからこれで、もう十分だ”つぼ浦はそれだけを言い残してスっと立ち上がる。
「…そ。分かった」
青井はいつだって引き止めなかった。
だってそう告げるつぼ浦の表情があまりにも幸せそうで、苦しそうで、ぐちゃぐちゃな気持ちを抱えてこれからを生きていける兆しがなかったから。
つぼ浦にはつぼ浦なりの深い考えがあって、いつも無闇に飛び降りている訳ではないのだと青井も理解していた。
この後つぼ浦は飛び降りる。
俺がつぼ浦から奪った残りのタバコをぷかぷかと吸っている間に、リスポーンという名の記憶の改ざんを行うのだ。
『あーあ。なんでこの街の人間は身体も心も丈夫なんだろうな』
「なんでだろうね。…、なんでそんなこと言うの?」
『゙あ?、別に意味はないが?。…まぁただ、幸せな夢を見たまんま眠りたい時に眠り続けられねぇのも、嫌なもんだと思ってよ』
直訳すると、今の最高潮に幸せな気持ちを抱いたまま死ぬ事が出来ないことを嫌だと彼は言っている。
「…俺お前のこと心配だわ」
『どこがだよ。そんな余裕こいた座り方しやがって』
つぼ浦を追いかける様子など全くなく、青井はただつぼ浦のその言葉にまたクスリと笑って空を見上げる。
何度目かも分からない告白大会は一旦これで幕引きだ。
「予想していい?」
『なんだよ唐突に』
「明日は晴天で、お前がいつも通りこの場所で休憩をしてて、それから…、、」
“また同じことを繰り返すよ”なんて言えなくて、青井はしばらく考えた素振りを見せてから呟く。
「それからね、また俺が食べ物をねだる」
『強欲だな』
「うん。また貰いに来るから、ちゃんと用意しといてね」
一度スタッシュの中身をちらりと確認したつぼ浦が小さく頷き、仕方なさげにため息を漏らした。
『まぁ考えといてやるよ。じゃーなアオセン』
「…うん。またね」
わざとらしく欠伸を一つして、つぼ浦はその場を後にする。
そしていつだって俺は傍観者だ。
「すぅ…、、はぁ…。嘘ばっか」
時計を見れば、そろそろ大型の事件が数件と重なって発生する頃合だ。
それでも青井はしばらくそこから動くことはなかった。
ゆっくりと静かにタバコを吸って、また憎らしいほどに綺麗な青空を見上げていた。
そうしなければ、つぼ浦が心置きなく最後の舞台を用意出来ないからだ。
「…はぁ……、馬鹿だなぁアイツ。…、そろそろ地獄に突き落としてやろうかな」
そんなことを呟いて、青井はまたつぼ浦御用達の甘ったるいタバコを吹かす。
いつも通りのお昼時。
今日も突然に病院で起き上がるであろうつぼ浦を迎えに、よいしょと重い腰を上げた。
『ん、アオセンじゃねぇか。何の用だ?』
「んーん。別に、特に用事はないんだけどね」
『んだよ。じゃあ俺のチルタイム?、とやらを邪魔すんじゃねぇ』
「はは(笑)、言うじゃんつぼ浦。余計に邪魔したくなるわ。いや、これはもう邪魔するね」
“その一択しかないわ”と呟いて、今日もつぼ浦の隣に座り込む青井。
しかし、今日はいつもと少し違っていた。
『…?、アオセン、なんかアンタから血の臭いがするんだが?』
「あぁうん。怪我してるからね」
『は?』
つぼ浦が青井の動きに合わせてちらりと腕を見れば、弾を掠めたのか割としっかりぱっくりと服が焼け焦げて…そこから血がどばりと溢れ出ている。
『!、何してんだてめぇ。そんだけの傷を放置してよくのうのうと休憩に入ろうと思ったな』
「え〜…、じゃあつぼ浦が包帯巻いてよ。俺もう手元にアイファックスしかない」
『いやいやいや、病院行けって』
「行かない」
『行けよ』
何度かその押し問答を繰り返してから、つぼ浦は諦めたのか仕方なしにスタッシュから包帯を一つ取り出す。
『一個で足りるかァ?、これ…、』
難しい顔をしながらとりあえず軽く止血をして、それから包帯をぐるぐると腕に巻く。
結局包帯は二個消費したが、それでも暫くしたらまた血が滲んで来そうだとつぼ浦は思った。
『ったく、、これで良いかよ』
「うん。ありがとう」
『後でぜってぇ病院行けよな』
「分かった分かった(笑)」
恐らく鬼の被り物の下にあるその顔はにんまりと笑っていて、しかも満更でも無さげなのが余計に腹立たしい。
『はぁ〜、なんなんだよアンタ…、んで、結局何しに来やがったんだ』
「ん、言ったじゃん。別に用はないよ」
青井は気だるげにそう呟きながら、ふと思い出したかのように言葉を付け加える。
「あぁでも、言いたいことは一つ思い出したかも」
『説教なら逃げるぜ』
「んーん(笑)、説教じゃなくてさ。告白ね」
『告白?、何を懺悔しに来やがった』
「お前は司祭か何かか?」
『やぶさかでもねぇぜ』
「ふは(笑)、こんなガラの悪い奴がいてたまるか」
ひとしきりケラケラと笑ってから、青井はかぱりと鬼の被り物を取り外してつぼ浦を見つめる。
「じゃあ告白をしようか」
『おう。お前の罪を数えろ』
「゙んん(笑)、…じゃあねぇ、1つ目。一つ目はね、救えたはずの命を救わなかったことだね」
『…へぇ、アンタも人間なんだな』
「俺をなんだと思ってる??、、…ふぅ。とにかくさ、俺は毎回毎回救えたであろう命に理由を見出してそのまま放置してたんだよ」
『何か訳ありって事か』
「まぁそうだね。それで二つ目は〜、…、それをちょっと、嬉しく思ってた自分が居たってことかな」
『途端に疑わしくなってきたな』
“一旦手錠でもかけるか?”とつぼ浦が問えば、青井は緩く首を振って言葉を続ける。
「ソイツさ。記憶が無いのに毎回毎回自分から唐突に同じことを言ってくれるんだよね」
『…なにをだ?』
「んー?、…まぁ、それは言わないけど」
『言えよ。そこまで言われたら気になるだろ』
「本当に気になる…?」
青井が少し笑みを漏らしてじーっとつぼ浦を愛おしげに見つめれば、つぼ浦はスっと視線を外して瞬きを繰り返す。
『…いや、気にならん。俺には関係ねぇしな』
「それが関係してくるんだよねー…、…つぼ浦、一旦タバコでも吸わない?」
張り付いてくるような緊張感に息が詰まっていたのか、青井の提案にすぐさま乗ってタバコに火をつける。
カシャリとライターを使用しスタッシュに詰め込めば、つぼ浦は一気に煙を吸って大量の蒸気を空気中に漂わせた。
「勢いよく吸いすぎ(笑)、……あ、」
『ん。なんだ?』
「俺ライター忘れちゃった。はぁ…。悪いけど火、付けてくれない?」
口元にタバコを携えて、青井はつぼ浦の方へ顔を向ける。
『…あぁ、火な。いいぜ』
スタッシュからもう一度ライターを取り出す為に腕を動かせば、何故かその手をパシリと捕まえられて目を見開く。
「そうじゃなくてさ、もっとかっこよくつけてよ」
『かっこよくだァ?』
「ストレス値結構ギリギリだからさぁ、早く早く」
そう急かされてしまえばつぼ浦も若干戸惑った様子で、しかしながら控えめに青井へと顔を近づけて静かに火を灯す。
『………、…、。これで、いいかよ…、』
大変長く感じたその数秒を噛み締めながら、つぼ浦はうろうろと視線を泳がせて問いかけた。
「…うん、ばっちり。ありがとうね」
『、…あぁ、別に。どうってことねぇぜ』
「はは(笑)、あっそぅ?。……じゃあ、最後の告白をしようかな」
『…おう。言ってみろ』
羞恥心と戸惑いで身体が熱いつぼ浦は、ものによっては正義執行…いや、このなんとも言えない状況を作り出した張本人をバッドで殴り倒してやろうかと無意識に企てる。
「…俺さぁ、実はずっと前から、お前の事が好きなんだよね」
『おう。……ぁ?、……は?、なんだって?、』
「だから、お前の事が好きなの。意味…分かってるでしょ?」
掴まれていた片手が更に握力を強めて握り込まれ、つぼ浦は自由なはずのもう片方の手に収まっていたタバコをポトリと落とす。
更には頭の中まで硬直状態、思考が途端に真っ白だ。
『す、は?、いや、その、…?、』
「具体的にどこが好きか教えてあげようか?」
『゙ぇ、い、いや、いい、興味ねぇし、』
「んー、具体的って言うより、やっぱ全部好きかなぁ。ふふ(笑)、俺ね、お前の全部が好きだよ」
それはそれはにこやかに呟くものだから、つぼ浦はその青い瞳から目が離せずにただただ瞬きを繰り返す。
「ちなみにさっき言ってたことは全部お前の事ね」
『…どういう、ことだ、』
「お前がここで俺と休憩をする度に告白してくれるんだけど、何故か両想いになっても記憶飛ばす為にダウンしちゃうんだよね。お前」
ダウンすることに対して何か思う節があるのか、つぼ浦は口を噤んで少しだけ俯く。
「十分過ぎるとか何とか、これ以上は迷惑かけるからとか、、よく分からない事言っちゃってさぁ」
青井が下からつぼ浦を覗き込めば、つぼ浦の額には少しだけ汗が滲んでその表情を曇らせていた。
耳まできゅーっと赤いのに、何故かその表情はいつにも増して深刻そうに見える。
「……、また死にたくなっちゃった?」
柔らかい声色で青井がそう問いかければ、つぼ浦はピクリと肩を跳ねらせて重く口を開いた。
『………俺は、アンタが思ってるより、、最低な、奴で、』
「…うん。そうだね。俺の優しさにつけ込んで毎回躊躇なく飛び降りるなんて、酷い奴だよお前は」
『ぐっ、そ、そうかもしれねぇけど、そうじゃねぇんだよッ…、俺はもっと、なんつーかッ、゙ん〜、欲深くてだな、、』
その言葉を聞いて青井はクスクスと笑う。
「なに(笑)?、嫉妬深いってこと?」
『゙ん。…そういうこと、かも、知れねぇ…、』
このぐちゃぐちゃな気持ちになんという言葉を付ければいいのか分からず、つぼ浦は青井の問いかけに小さく頷く。
「ふは(笑)、…んー。いいよそれぐらい。お前のことちゃんと好きだからさ、嫌なことは嫌って言ってくれたら、俺言うこと聞くよ?」
『゙っ、よしてくれ、余計に強欲なダメ人間になりそうだ』
つぼ浦が後退りをしようとすれば、青井がその腕を引っ張って離さない。
「ダメになったっていいじゃん。俺はつぼ浦が毎回好きだって言ってくれるが嬉しくて、けどそれ以上の重い気持ちを抱えて耐えきれなくなったお前が死ぬのを見過ごしてた男だよ?、しかも少しの優越感を持ってね。…最低なのは、俺も一緒じゃない?」
火をつけたタバコはとっくのとうにジリリ…と大量の灰をアスファルトに落としていて、あと少しで消失する。
「お前は飛び降りて毎回記憶を失ってたからプラマイゼロだけど、俺は毎回同じ記憶と同じ気持ちを持って接してたんだよ?、…お前は今すぐにでも飛び降りたいって思ってるかもだけど、、もう、そろそろ俺と同じ気持ちを味わってもいいんじゃない?」
いたたまれなくなる程の醜い感情の違いはあれど、青井もつぼ浦も人には言えぬグレーな気持ちを胸の内に秘めている。
『゙、でも、俺はアンタに、嫌われたくないんだ、、こんな感情一つで…、俺は、』
「…じゃあ、俺が話したこと全部聞いた上で、お前は俺のこと嫌いになったの?」
『!、そんな訳ないだろッ、』
「俺も一緒だよ。つぼ浦がどんなに自分のことを最低な奴だと豪語しても、俺はお前のことを嫌いにはなれない。ずっとずっと好きなまま、…でしょ?」
ぐるぐるに絡まっていた糸が解けるように、つぼ浦の硬直していた身体も心做しか緩まっていく。
「俺はお前が思ってるより最低な奴かも知れない。だけど、好きだって気持ちだけは本当だから」
毎回信じて貰えないこの想いをつぼ浦に理解させるためには、言葉だけではもう足りない。
「…、つぼ浦、好きって感情と同じくらいにさ、…苦しいって気持ちも味わってよ。…、俺はこの記憶を失いたくないからダウンなんてしないけど、これから先、…きっと、お前にも味わって貰うからね」
青井は今までのお返しだとでも言うかのように、自身のタバコの最後を一吸いしてつぼ浦の顔に吹きかける。
苦い香りのする青井のタバコはつぼ浦にはまだ早いらしく、ケホケホとむせるつぼ浦の顔に手を添えて、青井はそのままつぼ浦に口付けをした。
『ん、ッ、…、、』
「へは(笑)、びっくりした?」
『゙、…、……悪い、男だな、』
「そうだね。…忘れないように、もっかいする?」
飛び降りたいだなんて思わせない程の甘ったるい声色で、青井はつぼ浦に問いかける。
『…………、、じゃあ、…もう一回、して、くれ…、』
つぼ浦は少しだけ自身の内に秘めていた欲を表出させて、その気持ちに戸惑いつつも青井のことをジッ…と見つめ返す。
そんな姿を見て喜ばない恋人などいないだろう。
「んふふ(笑)、うんいいよ。そのお願い、聞いてあげる」
青井はつぼ浦の頬をするりと撫でてから、もう一度苦くて甘いキスをつぼ浦に送った。
晴れのちダリア[完]