︎︎「 光の間に生まれたのは 」 ︎︎
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︎︎第 4 話
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︎︎ ( すれ違う想いは )
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夜が更けるにつれ、ゴンは疲れたのか、毛布にくるまって眠りについた。
焚き火のそばには、キルアとクラピカだけが残された。沈黙が二人を包む。
キルアは膝を抱えたまま、クラピカをチラリと見る。クラピカは焚き火を見つめ、考え込むように黙っている。
「なあ、クラピカ」
キルアが口を開く。
「お前、ゴンといるとき、すげえ楽しそうに見えるんだけど。」
クラピカがキルアを振り返る。その瞳には、わずかな驚きが浮かんでいた。
「…そうか? 先程も言ったがゴンはただ話しやすいだけだ。」
「ふーん、そっか。」
キルアは鼻で笑うが、その目は笑っていない。
「俺には関係ねえけどさ。なんか、お前があんな風に笑うのゴン相手だけ!って感じがしてちょっとムカつくんだよな〜。なんちゃって」
クラピカの眉がピクリと動く。
「ムカつく? どういう意味だ?」
キルアは一瞬言葉に詰まる。自分の感情を言葉にするのは、ゾルディック家の教えに反する行為だ。だが、胸の奥で燃える嫉妬が、キルアを突き動かす。
「別に、深い意味はねえよ。ただ…お前がゴンにだけ心開いてるみたいで、なんか気に入らねえってだけ」
クラピカはキルアの言葉を聞き、胸の奥で何かが揺れるのを感じた。キルアがそんなことを言うなんて、予想外だった。クラピカは冷静さを保とうとしながら、ゆっくりと言った。
「キルアこそゴンといる時が一番自然じゃないか。私には…お前たちの絆に入り込む余地なんてないように感じるが。」
今度はキルアが驚く番だった。
「は?何だよそれ。俺とお前、関係ねえだろ」
「関係ない、か」
クラピカの声に、かすかな苦さが混じる。
「お前がゴンと笑い合ってるのを見ると、私は…少し、疎外感を覚える。ゴンとお前は、特別な絆で結ばれてる。私にはその一部になることはできない。」
キルアの目が見開かれる。
「何…? お前、ゴンに嫉妬してんの?」
クラピカは一瞬黙り、目を逸らす。
「…そんなんじゃない。ただ、事実を言っただけだ」
「ふざけんなよ!」
キルアが立ち上がる。声が森に響く。
「お前がゴンに笑顔向けて、俺のこと見てねえのがムカつくって言ってんのに、お前も同じこと思ってたって事だろ?… 何だよそれ、めっちゃバカみてえじゃん!」
クラピカも立ち上がり、キルアと向き合う。
「バカなのはお前だ、キルア! 私がお前とゴンの絆を羨ましく思うのは、私が…!」
クラピカは言葉を切り、唇を噛む。言ってはいけない言葉が、喉の奥で詰まっていた。
「何だよ、言えよ!」
キルアが一歩近づく。その瞳は、怒りと混乱と、そして何か切実なもので揺れている。
「お前は、俺のことどう思ってんだよ!」
クラピカはキルアの迫力に一瞬たじろぐが、すぐに目を細める。
「…お前こそ、私に何を求めてるんだ? ゴンに嫉妬してるなんて、私には関係ないはずだろ?」
二人の視線がぶつかり合う。焚き火の炎が揺れ、二人の影を長く伸ばす。キルアの心臓が早鐘を打ち、クラピカの呼吸もわずかに乱れている。互いに嫉妬し、互いに相手の心を求めながらどちらもその本当の気持ちを口にできない。