私は勢いよくベッドに倒れ込んだ
今日は先生に国語を教えてもらった
まあ、わからないところを教えてもらっただけで、ほとんど雑談をしていたけど
私は先生に色々なことを聞いた
先生の下の名前は?
『蓮です』
先生の歳はいくつ?
『34になりました』
先生の誕生日は?
『1月22日です』
先生の好きは食べ物は?
『甘いものですね。夏はアイスが好きになります』
先生の好きな動物は?
『うーん、カメですかね。あ、でも犬も好きです。トイプードル、飼っているんですよ』
先生の好きな色は?
『青とピンク色です。なんか、どっちも可愛くないですか?』
先生の好きな物は?
『だいぶ抽象的ですねぇ。まあ、可愛いものとかが好きです』
先生の苦手な物は?
『動物で言えば蛇、食べ物で言えばシイタケ、人で言えば道頓堀とか五反田にいるおじさんですね』
私のこと、どう思っていますか?
『え?宇佐美さんの事ですか?』
嫌な奴だなって、思っていますか?
『そんなことないですよ。だって、毎回ちゃんと部活とか、来てくれているじゃないですか?』
まあ……
『だから、まあ、個人的に、それがすごく嬉しいなって思っています』
なら、良かったです
……
『宇佐美さん』
は、はい?
『今度は逆に先生が宇佐美さんに色々質問してもいいですか?』
え、あ、いいですよ
『宇佐美さんの誕生日っていつですか?』
8月12日です
『宇佐美さんの好きは色は?』
緑、ですかね
『宇佐美さんの好きな食べ物は?
ドーナツです
『宇佐美さんの好きな動物は?』
猫とか、犬とか……
『宇佐美さんの好きな物は?』
お笑いライブとかよく行くので、芸人さんが好きですね
『宇佐美さんの苦手な物は?』
誰かを裏切ったり騙す人は、嫌いですね
『僕のこと、どう思っていますか?』
……
良い先生だと思います
勉強とかも、わかりやすく教えてくれますし、優しいですし……
『そっか、良かった』
今日の会話を思い出した
まあ、心残りはたくさんあるけど
でも満足だった
ベッドの下の箱を取り出す
そこにはプリント類が入っていた
先生が写っているものだけを、昨日この箱の中に入れた
年に1回配られる先生紹介の手紙、音楽祭担当としてのコメントのメッセージ、入学式のときの先生達の集合写真
それらを丁寧に取り出した眺めた
基本的に、神木先生は写真映りがそんなに良くない
フラッシュのときに毎回目を瞑っているからだと、私は予想した
けど、そういうところも良かった
私はなぜ今まで先生のことをしっかりと見ていなかったのかと後悔した
出来れば入学式のときからやり直したかった
1度も担任や授業担当で一緒になれなかった運命を呪った
けれども、これから部活で一緒になれると思うと気が楽になった
初めて恋をしたときのことを思い出す
あのときは小学5年生くらいだっただろうか
もう二度とあんな思いはしたくなかった
あんな思いをしてたまるか
そんなことはないとわかっていたが、不安な気持ちは治まらなかった
なんとしてでも、絶対に取られたくない
……いや、ダメだダメだ
私と先生は生徒と教師という関係
これ以上の関係は望んではいけなかった
今のままで満足しよう
そう思い、プリントを箱にしまった
箱をベッド下にしまったとき、コツンという感覚を確認して安心した
コメント
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今回は短めです。