5限が終わり、友人たちと講義室を後にした。
待ち合わせ場所は、11号館2階のベンチだ。
明那はもう授業終わったかな と思いながら歩いていると、
友人のひとりが「あ!」と声を上げた。
彼女の視線の先を見ると──階段の手前に立っている明那を見つけた。
「三枝くんだ!」
レアキャラだー! といったような感じで わらわらと明那に集まる。
専攻が違うから、明那とはほとんど授業が被っていないのだろう。
私も 彼女たちと会うのは資格取得のための講義だけだし、
見かけたらレアだと思う同級生も結構いる。
だから まあ わかるんだけど、
胸のあたりが少し 濁る。
人だかりの中心にいる明那は笑っていて、私は目を逸らして、
窓の向こうの空の色を見て、ときどき会話に混ざった。
「三枝くん、このあと暇だったらカラオケ行こうよ」
akn「ごめん今日菜央と寿司だからさ、また今度みんなで行こ!」
な、と話を振られて、頷いた。
友人たちも各々「寿司いいな〜」や「今まぐろフェアやってるよ」と話す。
早く行かなきゃ混んじゃうんじゃない、という友人の一言により、
私たちは足早でバス停へ向かう。
駅までは大学バスが出ている。
私と明那の下宿先は駅の近くで、
いったん明那の家に寄ってから行くことになっていた。
akn「あ やばい 電話だ」
バスに揺られながら話していたとき、明那のスマホが震えた。
画面に表示された名前は「ふわっち」。
『ふわっちさんって あの……明那のゲーム友達?』
akn「そうそう。なんだろ ゲームの誘いかな」
ふわっちさん。フルネームは知らない。
明那のゲーム友達で、配信者らしい。
私がゲームとかそういう動画? に詳しくないのと、
明那が話したがらないからほとんど知らないけれど、
明那もインターネットで活動しているというのは一応知っている。
話したがらないというか 隠したいのかなって思って、聞いてないだけなんだけど。
ふわっちさんには、バスに降りてから折り返すようだ。
明那の横顔が なんだか少し遠く感じた。
コメント
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ぷわみにゃと!あきふわの絡み好きよ🫶 菜央ちゃんと出会うかな?