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花火大会だったはずだが、花火した記憶がない。帰宅したのは夜中だった。案の定あの女は残業を理由に不在だった。
パパはリビングで読書中。歴史小説のようだ。古代ローマ帝国の皇帝ネロの話だろうか。少し気になったが、今はそれどころではない。
「パパ、聞いていい?」
「この前した皇帝ネロの話が気に入ったようだね。またその話をしてほしいのかな?」
「その話はまた今度で」
ママを殺していい? と気安く言い出せる状況ではないようだ。
「あの女――じゃない、ママのことなんだけどさ」
「ママがどうかした?」
思い切りどうかしてるよね。毎日残業だと言い張って午前様。裏では妻子持ちの男と不倫している。
慎司たちは男の素性についても調べていた。立花恭平、あの女と同い年の42歳。十年前からあの女が事務職員として勤務する立花建設株式会社の社長。二人の不倫はW不倫であると同時に職場不倫であったのだ。
職場不倫した配偶者に対する制裁として職場に通報するという手段があるそうだが、今回その手は使えない。社長自ら部下に手を出しているのだから、腐り切った会社なのだろう。潰れてしまえばいい!