「パパはママを愛してるの?」 「愛してるよ。愛してるからいっしょに暮らしてるんだ」
そうだろうか? とっくに愛は冷めていても子どものために仮面夫婦を続けているカップルは星の数ほどありそうだけど。
「ママのどこがいいの?」
「すべてだよ」
「特にここがいいという点ある?」
「やさしいところかな」
「やさしい? 何かの間違いじゃ……」
「僕とママは高校のクラスメートだったんだ。僕が不良たちにいじめられてると、よくママが助けてくれた。僕にとって当時のママはヒーローだったよ」
「もしもの話だけど、たとえばママが不倫しても愛せるの?」
「ママは不倫しないよ」
「なんで?」
「僕が不倫したら慰謝料一億円払った上でもう子どもにも会えないという約束をしている。僕にそんな約束をさせるくらいだから、ママが不倫することもきっとないよね」
あの女、盗人猛々しいにもほどがある! さすがに怒りが顔に出てしまったと思うが、パパは気づかなかったようだ。
「でも本当に不倫してたとしたら離婚した方がいいよ。余はパパについていくから」
「冗談でもそういう話をするべきじゃない。ママと離婚することになったら、僕はもう生きていけないかもしれない」
「なぜそうなる? 家族なんてどうでもいいから不倫できるんだろう。そんな女ならこっちから捨ててやればいい」
「不倫はよくないことだけど、ママが不倫したとしたらきっと夫である僕に至らない点があったからだろうね。不倫はやめさせるけど、僕の方も改めるべきところは改めて、夫婦の危機を乗り越えて家族を続けていくつもりだよ」
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