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第二十七話 新しい日常
「景色が変わっても、前を向けば新しい出会いが待っている。」
四月も半ばを迎えた。
校庭の桜はすっかり葉桜になり、
吹く風も少しずつ暖かくなっていた。
湊は朝の教室で窓の外を眺める。
去年は、毎日が新鮮だった。
今年は違う。
景色は見慣れているはずなのに、
隣にいるはずの人がいないだけで、
どこか違う学校のように感じた。
*
昼休み。
「神崎!」
蓮が勢いよく席にやってくる。
「今日も写真部?」
「うん。」
「相変わらずだな。」
「蓮こそ。」
「俺は部活より腹減った。」
「それは毎日。」
美桜が笑いながら会話に入る。
「神崎、最近ちゃんと笑うようになったね。」
「え?」
「去年はもっと静かだった。」
そう言われて、湊は少し考えた。
確かに。
以前の自分なら、
誰かとこうして話すことも少なかった。
人は、少しずつ変わるものなのかもしれない。
*
放課後。
写真部の部室には、新入部員が集まっていた。
「失礼します!」
元気な声が響く。
先日見学に来ていた一年生たちだった。
「今日からよろしくお願いします!」
緊張しながら頭を下げる姿を見て、
湊は自然と笑みを浮かべる。
去年の自分も、きっとこんな顔をしていた。
「じゃあ今日は、学校の中で自由に写真を撮ってみようか。」
そう言うと、
新入部員たちは嬉しそうに校内へ走っていった。
*
部室に残った湊は、一人カメラを手にする。
その時、スマートフォンが震えた。
紬からだった。
写真が一枚届く。
石畳の道に、小さな花が咲いている。
《今日は迷子になりながら見つけた場所。》
思わず笑ってしまう。
《迷子になったの?》
送ると、すぐ返事がきた。
《少しだけ。でも、そのおかげでこの景色に出会えた。》
湊はその言葉を何度も読み返した。
遠回りしたからこそ見つかる景色。
それは、人生も同じなのかもしれない。
*
夕方。
新入部員たちが戻ってきた。
「先輩、見てください!」
一人の一年生が、
夕日に照らされた廊下の写真を見せる。
まだ構図もぎこちない。
でも、その一枚には「好き」が詰まっていた。
「いい写真だね。」
湊は素直にそう言った。
「本当ですか!」
嬉しそうに笑う一年生を見て、湊は思う。
今度は、自分が誰かの背中を押す番なんだ。
*
帰り道。
夕焼けに染まる空を見上げる。
同じ時間。
遠い国でも、紬は空を見ているのだろうか。
湊はカメラを構える。
夕日に照らされた校舎。
風に揺れる若葉。
そして、今日出会った新しい笑顔。
カシャッ。
春は終わっていない。
新しい日常は、まだ始まったばかりだった。
📷 Photo.027『新しい風』
撮影日:4月20日
新しい季節は、
新しい人を連れてくる。
その出会いはきっと、
誰かの未来を少しだけ変えていく。
コメント
4件
そうなんですよね! あ!そうだったんですか! でも少しわかる気がします! えー!ほんとに嬉しいです! ありがとうございます!
第27話、読み終えました……。春の空気がそのまま文章になったみたいで、とてもあたたかい気持ちになりました。特に、「遠回りしたからこそ見つかる景色」という紬くんの言葉が心に残りました。そして、湊くんが今度は誰かの背中を押す側になったんだな、と思うと、静かに成長を見守ってきた読者として胸が熱くなりました。新しい風が確かに吹き始めていますね🌷