テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#元カレ
まぁ
15,183
#nagiコン🐈⬛🩷
りー
251
latte
699
#学園
大正
5,257
第二十八話 それぞれの景色
「同じ夢を追う必要はない。同じ想いを持っていれば、それでいい。」
五月。
新緑が眩しい季節になった。
校庭の木々は鮮やかな緑に染まり、
吹き抜ける風が心地よい。
湊は部室で写真を整理していた。
気づけば、カメラを手にする時間が増えていた。
紬がいなくなってからも、
写真を撮る理由は消えなかった。
むしろ、前よりも一枚一枚を
大切に撮るようになっていた。
*
「神崎。」
顧問の先生が部室へ入ってくる。
「これ、見てみろ。」
一枚のチラシを手渡された。
高校生フォトコンテスト。
全国の高校生が応募する写真展だった。
「応募してみないか?」
湊は少し驚く。
「俺がですか?」
「お前の写真には、人を見つめる優しさがある。」
先生の言葉に、胸が少し熱くなる。
今まで写真は、自分のために撮ってきた。
でも。
誰かに見てもらうための一枚を撮るのも、
悪くないのかもしれない。
*
その日の夜。
スマートフォンに紬からメッセージが届く。
《今日ね、学校でフォトコンテストに応募することになった!》
湊は思わず笑った。
《実は俺も。》
すぐに返信が返ってくる。
《え、本当に!?》
《同じこと考えてたんだね。》
画面越しでも分かるくらい、
紬が嬉しそうなのが伝わってきた。
《負けないからね。》
《俺も。》
短いやり取り。
でも、その言葉だけで心が軽くなった。
*
翌日。
写真部では、
新入部員たちが撮った写真を見せ合っていた。
「先輩は、どんな写真が好きなんですか?」
一年生に聞かれ、湊は少し考える。
「……笑顔かな。」
「笑顔?」
「うん。」
「作った笑顔じゃなくて、気づいたら笑ってた瞬間。」
そう答えながら、自分でも気づく。
自分が一番好きな写真は、
きっと紬が自然に笑っていたあの一枚だった。
*
休日。
湊はカメラを持って街へ出た。
公園では、
小さな男の子がシャボン玉を追いかけている。
母親が笑いながらその姿を見守っていた。
その瞬間。
男の子が振り返って笑う。
カシャッ。
シャッターを切る。
画面の中には、何気ない幸せが写っていた。
湊は思う。
特別な景色じゃなくてもいい。
誰かの大切な瞬間を残せる写真を撮りたい。
それが、自分らしい写真なのかもしれない。
*
夜。
紬から一枚の写真が送られてきた。
夕焼けに染まる石橋。
橋の上を歩く一人の女性。
その写真には、静かな強さがあった。
《この写真、コンテストに出そうと思う。》
湊はしばらく眺めたあと、返事を送る。
《すごく朝比奈らしい写真だね。》
数分後。
返信が届く。
《ありがとう。神崎くんも、自分らしい一枚を撮ってね。》
その言葉に背中を押される。
遠く離れていても。
互いの夢を応援できる。
それだけで十分だった。
📷 Photo.028『それぞれの景色』
撮影日:5月8日
同じ景色を見なくても、
同じ想いを抱くことはできる。
その想いは、
離れた距離を越えて、きっと届く。
コメント
4件
書くのすごい苦戦しますけどね?🤭 でもかけがえないものこそ守りたくなるじゃないですか! 何気ない日常だったとしても、、、
温かいエピソードだったなあ…「同じ夢を追う必要はない」っていう冒頭の言葉が、二人の距離感をそのまま表してるみたいで刺さった。コンテストに応募するって話をしてる時の、お互いを応援し合う空気がすごく良かった。湊が「自然な笑顔」を好きだって気づくシーンとか、公園でシャボン玉の男の子を撮るシーンとか、日常の美しさを切り取る感じがM.Sさんの作品らしくて好きだわ。離れてても繋がってる感がじんわり来た📸