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律が早速俺のサングラスを装着した。結構似合っていて可愛い。俺は律のどんな姿にも心を打たれるようだ。もう、手が付けられないほどに彼女に惚れている。自分でも膨れ上がった感情を持て余してしまうほどだ。
彼女と一緒にエントランスに入り、エレベーターを待って乗り込んだ。ガラス張りの四角い空間が、あっという間に俺たちを天上世界へ運んでいく。旦那との距離を遠ざけ、遮断してくれる。
今日も、ライブができるのか。
胸を焦がし、灼熱の炎で焼き尽くすようなあの快感を、もう一度味わえるのか。
罪の味は一度知ったらもう止められない。
俺はきっと、殺されない限り彼女を手放すことはできないと思う。
だから俺の時間は、存分に彼女を味わい尽くす。
「気に入ったか?」
「うん! 素敵なサングラスだね。ありがとう。大切にするね」
「だったらプレゼントの礼は、たっぷりもらうからな。今度はお前が俺を喜ばせろよ」
開演前だというのに可愛く笑う律に触れたくて仕方がなくなり、彼女をエレベーターの壁に押し付け、激しく口づけた。
「ん、んんっ…っ、は……っ、ぼっ、防犯……っ、ん、はあっ…カメラ…だいじょ、うぶ……なの……?」
「隅の方はちょうどカメラの死角だから、たぶんほとんど映らねえよ。それに、お前の姿は俺が塞いでるから顔は見えない。大丈夫やと思うけれど、念のためサングラス外すなよ?」
「ふっ……ん、んっ、あ……部屋まで……待ってよぉっ、ん、ぁっ……」
「待てねえよ」
今、この時間までどれだけ俺が待っていたか、律にはわからないだろうな。
相当辛い時間を、たったひとりきりで過ごしている。旦那と仲睦まじく暮らしているお前の生活の片鱗を想像しては、地獄のような苦しみに襲われる。
それでもいいと俺が選んだ道やから文句はないし後悔もしてない。ただ、辛いだけ。
エレベーターホールから部屋までを急ぎ、玄関を施錠した途端に彼女をきつくこの腕に抱きしめた。ここまで誰にも見られなかった。安心して今日は隔離されたこの空間で彼女と過ごせることに安堵する。
背徳感よりも高揚感の方が勝っていた。彼女がそこにいるだけで、俺の心をこの上なく震わせる。
「会いたかった」
「私も」
律が俺を強く抱き返してくれた。
「たった一日が、もう我慢できないなんてな」
「は、博人(はくと)…」
「想いが通じた途端、どうしてこんな会いたくて、触れたくなるのかわからねえけど…俺、めっちゃお前のことが好きなんやな……」
愛おしそうに頬に触れて律を見つめた。彼女の可愛い唇に口づける。
触れるだけであっと言う間に躰が熱くなる。お互いの躰が密着してキスしているから、余計に燃え上がりも早い。
玄関先で暫く深いキスを交わした。
「今日の律さ、めっちゃ可愛い。俺のために綺麗にしてきてくれたのか?」
「うん」
「今からメチャクチャにするのに?」
「…うん」律が俯いて顔を赤くして照れている。
どうしようもなく可愛い。甘やかせて、啼かせて、辱めて、俺だけをその目に映したくなる。
独占欲という愛で縛りつけたくなる。
「照れるなよ。もう少し綺麗な律を眺めておきたいけど、もう我慢できねえよ」
抱き上げると思いのほか彼女が軽いことがわかる。痩せているのが気になった。「軽いな、律。ちゃんと食べろよ?」
寝室に連れて行った。ベッドの上に彼女を寝かせてこのまま奪う。
ここが再び最高のステージになる。彼女が俺のために淫らに歌うライブが幕を開ける。
「もっとちゃんと食って体力つけないと、ブッ壊れるぞ」
腕の中に抱いた細い彼女の身体が心配になって、つい余計なお節介を言ってしまう。
「どうして?」
「悪いけど律が可愛くて手加減できねえ。動けなくなったら、俺が面倒みてやるけどな」きつく抱きしめた。「旦那に返したくない」
「私も…帰りたくない。あなたと、いたい」
「律……」
彼女が瞳を閉じたので貪るようにキスをした。
心の底から湧き上がる感情――これが愛しさなのだろう。
どうして彼女だけが特別なのか。
もう人のものだと言うのに、それでも浅ましく横取りして自分のものにしたいと思ってしまう。触れたい。愛したい。ずっと繋がっていたい。
「博人……」
『ひろと』とは呼んでもらえない。俺はどこまでいっても彼女の中で『はくと』であり続けるのだろう。
結局俺は、こんなに愛しいと思う女性(ひと)からも本当に愛されない偽物の男。
それでもいい。
偽りの名前でも、偽りの愛でも、それでも俺は欲しいと思う浅ましいクズだから。
大切な彼女を傷つけるとわかっていても、この手を離すことができない。
「律」
愛しい女の名を呼べば、心が熱くなる。
彼女をこの腕に抱いたら、心が悦びが燃えあがる。
灼熱の炎で焼き尽くされるかのように、熱く、激しく。
こんな夜は、やっぱりRBの歌が似合う。このステージに相応しいDesireでも歌おうか。
堕ちていく
あなたに、奪われる――