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番外編98『屋敷に帰らなかった主様』
悪魔執事の主は2つの世界を行き来する大変な身。今私達は大学の授業やオープンキャンパスで忙しい時期だった。だから、屋敷に数週間帰れなかったのだ。それが、例え――
「天使狩り」の時であっても。
そして、恐れていたことが、起こってしまった。
ある日のこと――。
『やっと一息つけたわね…百合菜、屋敷に帰りましょう。』
『うん、そうだね。』
と、その時――。
ネックレスにしている指輪から声がする。
『…じさま、主様…お願い…します、今すぐ屋敷へ…。』
『ベリアン…?』
(なんだか、声が弱々しい…?)
私達は急いで指輪をはめ、屋敷へ帰る。
『『な…っ!』』
屋敷に着いた途端私達は声を失う。
屋敷がめちゃくちゃに荒らされていた。
『そんな……っ。みんな、みんなは何処に…。』
私達は庭へ向かった。
そこには――。
『嘘……。』
執事達があちらこちらに倒れ、血を流し意識がない状態だった。
『ぅ…あ、あるじ、さま…?』
『ベリアン…!!』
木にもたれ掛かり、お腹を抑えるベリアン。
『申し訳ございません…屋敷が…』
『謝らないで!私達が屋敷に帰らなかったから…。』
『いいえ……主様には主様の生活があります…。だから…気に病まないでください…』
『っ…』
どうして、こんな時まで…私達の心配なんて……っ。
『ハウレス!ボスキ!お願い、目を開けて!』
離れた所で百合菜が叫ぶ。
『どうしてなんだ、ハウレス…なんで庇ったんだよ…っ。』
『ボスキさん…なんで……。』
『百合菜、ハウレスとボスキは…?』
『っ、俺とバスティンが…知能天使に襲われそうになったところを……』
『2人が助けてくれたんだ…。』
『『――』』
ハウレスとボスキはお互い背中を預けたまま眠るように亡くなっていた。
『ふざけんなよ…っ。なんで俺なんか庇って死んでんだよ…っ。』
『あんたらしくないな…ボスキさん…。』
ザッ…。
『っ!』
裏山からラトとフルーレが出てくる。
『ラト、フルーレ…。』
『主様…。』
ラトは瞳に光を失ったような顔をしていた。
『ミヤジは……?ねぇ、2人共、ミヤジは…』
『っ…!ミヤジ先生は…っ。 』
俺とラトが下級天使を倒した後…。
知能天使に襲われ……ラトが俺を庇いそうになり、それをミヤジ先生が……。
『ラト君!フルーレ君!』
ザシュッ!!
『そんな……。』
『ミヤジ先生…どうして俺達なんて…』
『……。』
『…様、ルカス様!目を開けてください!ルカス様!!』
『ラムリ!もうやめなさい…!』
『離してよっ!!』
遠くでラムリとナックの声がする。
『主様…。』
『主様!ルカス様が…。』
『ルカスさんは…自身も致命傷を受けているのに、怪我を負った我々の治療を優先し…力尽きてそのまま…』
ルカスは最期まで医者としての勤めを果たしたのだ。手には包帯やら消毒液が握られていた。
『どうしてご自分のことを優先しなかったんですか…ルカスさん……っ。』
私達のせいだ。私達が、帰らなかったから。
こんな目に……っ。
ギュッと拳を握りしめた。
『主様…』
『フェネス…。っ……!』
フェネスは手にアモンを抱いている。
『――。』
『アモン…?』
『…アモンは、今さっき息を引き取りました。ハウレスと、ボスキがロノとバスティンを庇って、俺達2人だけになって…アモンは最前線に出たんです。それで……。俺は、近くにいたのに、何も出来なかったんです…っ。俺が殺したようなものです!!俺はアモンの先輩なのに、何も、何も……っ!!』
違うわ…フェネス。違う。悪いのは私。
帰らなかった私たちのせい……。
『ハナマルさん!!こんなところで死ぬなんて許しませんよ!』
『どうして、なんで、俺たちのこと……っ。』
『ユーハン…テディ…。』
『っ、ハナマル、さんは…』
ベリアンがお腹を抑えながら歩いてくる。
『ベリアン!無理しちゃだめ…。』
『私達最年長の室長は一緒に戦っていました。知能天使がユーハンさんとテディさんに襲いかかり…攻撃されそうになり…ハナマルさんが前に出て……それで…。』
『前に言ってた…ユーハンとテディは俺にとって息子みたいなもんだって。』
ハナマル…貴方って人は本当に――。
『ベリアン…。別邸2階の3人は…?』
『……。』
ベリアンはフルフルと首を横に振る。
『っ、そんな……。』
私達は3人の元へ案内される。
『ベレン、シロ、クロウザー…。』
『ベレンは我々と一緒に戦っていました。ベレンは私を庇い、深手を負い、それが致命傷となって…。』
『ベレンらしいね…ベレンにとって、ベリアンは弟みたいって言ってたから……。』
『シロさんとクロウザーさんはスローンとケルビムの2人を相手にして…力及ばず、そのまま……。』
『みんな…ごめん…。』
『私達のせいよね……。』
私達が屋敷に帰らなかったから。悪魔の力を解放してたらこんなことには――!!
生き残ったのはベリアン、ロノ、バスティン、フェネス、 ナック、ラムリ、ラト、フルーレ、
ユーハン、テディの10人。
ハウレス、ボスキ、アモン、ミヤジ、ハナマル、ベレン、6人はベリアン、ロノ、バスティン、フェネス、ラト、フルーレを庇って亡くなり…。
ルカスは同室のナック、ラムリの治療を優先し、自分のことを後回しで出血多量により亡くなり…。
シロ、クロウザーは2人の知能天使の攻撃に力及ばず、深手を負って亡くなってしまった。
主様の皆様。どうか屋敷には帰ってあげてください。こんな悲しいことが起きる前に。
執事が、貴方の前からいなくなる前に。
どうか、定期的にデビルズパレスに帰りましょう。
MAKO
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ぷち
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コメント
1件
ああっ…読んでて胸がぎゅーってなったよ😭💔 帰らなかったことへの後悔が重くのしかかってくる…。ハウレスとボスキが背中合わせで眠るように亡くなってたシーン、ルカスが最後まで治療を続けた姿、アモンを抱くフェネスの慟哭…どれも涙なしでは読めなかった🥺 主が帰らなかったからっていう自責の描写が切なくて。生き残った執事たちの心の傷も癒えないよね…。ぷちさん、ここまで心揺さぶる物語をありがとう…!次はどうなるんだろう…続きが気になるよ…🌸