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あかりは、日向を青葉に抱えてもらい、家に連れて入り、寝かせた。
そのあと、青葉が、あかりと寿々花を家まで送ってくれることになったが。
寿々花はまだ、寝ている日向を眺めていたいようだったので、青葉と二人、先に外に出る。
あかりは青葉に、
「お前、助手席に乗れ」
と言われ、
「いえ、そこは寿々花さんで」
と遠慮する。
「確かに助手席の方が親しい相手っぽい感じはするが。
大丈夫だ。
うちの親は後部座席で、ふんぞり返ってるのが通常の状態なんで。
俺が運転してるときも、かなりの確率で後部座席に座ってる」
と言われ、ちょっと笑った。
助手席に乗ると、運転席から自分を見つめ、青葉が言う。
「……思い出せてよかった。
ほんとうに、俺がお前の青葉でよかった」
「当たり前じゃないですか。
あなた以外の青葉さんなんていません……」
そう言いながら、あかりは、
なんか過去の記憶を思い出したとか言われると、緊張するな、と思っていた。
大好きだった青葉さん。
そして、自分のことを好きでいてくれた青葉さんが、いきなり、ぽん、と時空を超えて、ここに現れた気がして――。
「いや、わからないじゃないか。
実は同じ顔の別人だったかもしれない。
だって、記憶がなかったんだからな」
と青葉は言い出す。
同じ顔の別人。
それは大吾さんでは……とあかりは苦笑いした。
「もし、俺が実は、お前の青葉じゃなかったとしても。
俺はお前以外の誰も好きになるつもりはないから。
お前に好きになってもらえるよう、頑張ろうと思ってた」
あかり……と熱く見つめてくる青葉に、あかりは訊いた。
「でも、そういえば、嶺太郎さんがうちに訪ねてきたときのこと思い出したって言ってましたけど。
他のことも思い出せたんですか?」
青葉は沈黙した。
……うん、なるほど。
そこしか覚えてないんだな。
どうせなら、どうでもいい、そこんところじゃなくて。
もっといいとこ思い出して欲しかったな~、とあかりは思っていた。
「なんだ、青葉の奴、記憶が戻ったのか。
俺が青葉の生まれ変わりかもしれんと思ってたのに」
次の日、呪いをかけられた村の土産を持って、大吾がやってきた。
いやあの……青葉さん、死んでません。
そして、あなたの方が青葉さんより年上です。
大吾は、カウンターの上で、土産の手作りオルゴールとやらを鳴らしながら宣言する。
「心配するな。
言わなかったか。
俺はお前たちの愛に打ち勝つ」
だから、打ち勝たないでください……。
「たとえ、過去の青葉の亡霊が、今の青葉に宿っても。
そこにあるのはもう、過去の愛であって、今のではない。
俺が調伏してくれようっ」
……ちょっと音のずれた怪しいオルゴールを鳴らしながら、そんなこと言われると、ほんとうに青葉さんが調伏させられそうで怖いんですけど。
過去の愛であって、今のではない、か――。
あかりは大吾の前にアイスコーヒーを置いた。
「ありがとう。
600円だったか?」
と言って、大吾はカウンターに金を置こうとする。
いや、いつ勝手に値段が決まったんですか……。