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こうして会話を交わしている間にもメッセージは何通か届いてくるけど話しをしながら返す訳にもいかず未読のままでいると、今度は電話が掛かってきた。
「すみません、ちょっと……」
流石にこの場で出る訳にも無視し続ける訳にもいかない私は一旦部屋を出て電話をしに行くことに。
部屋から離れ、端の方に寄った私は何度か掛かってきた電話に出た。
「――もしもし」
『お前さ、何約束破ってる訳?』
すると、出た瞬間に不機嫌そうな結月の声が聞こえてきて、電話越しなのに表情まで読み取ることが出来て、マズイと思った私は必死に弁解する。
「違うの、別に約束を破ろうとした訳じゃないよ? 連絡したくても相手の話がなかなか途切れなくて、出来なくて……」
『ンなもん、適当に相槌打ちながら返信すりゃいいだろ?』
「そんな失礼なこと、出来ないよ……」
『何? もしかしてその相手に惹かれたとか? だから無碍には出来ねぇと?』
「別に、そんなこと言ってないでしょ? 人として失礼な態度は取れないって言ってるの」
『どーだかな』
「もう、とにかく、時間までは待っててよ。終わったらちゃんと抜けるから……」
ひとまず会話を終わらせてみんなの元へ戻ろうとしていると、
「葵ちゃん、大丈夫?」
何故か、私の元へ矢上さんがやって来て声を掛けてきた。
勿論、その声を結月が聞き逃すはずもなく。
『おい、誰だよ今の声』
「相手の一人。とにかく私は一旦戻るから、切るね」
『あ、おい待てよ、まだ話は――』
声のトーンが下がり、今の声は誰だと尋ねてくる結月を軽く受け流した私は一方的に電話を切った。
「弟くん、何だって?」
「いえ、本当、大した用事じゃなかったので」
「そう?」
「それより、矢上さんはどうしてここに?」
突然現れた矢上さんにその理由を問い掛けると、
「あのさ、1次会終わったらみんなで2次会やろうって話になってるんだけど、良かったら俺と二人で別の場所に行かない? 俺さ、葵ちゃんのこと、すごく気に入っちゃったんだよね」
1次会が終わったら二人で抜けないかというお誘いと、私を気に入っているという話をしてくる矢上さん。
「えっと……その、ごめんなさい……。私、今日は1次会が終わったら帰らなきゃならなくて……」
気に入っているという話題にはどう答えればいいのか分からずスルーしながら1次会が終わったら帰らなければならないことを伝えると、
「もしかして、さっきの電話が関係してるの? 弟くんが早く帰ってこいって言ってるとか?」
「え? いえ、そんなことは……」
矢上さんは私との距離を詰めながら早く帰らなきゃならない理由を尋ねてくる。
こういうところがやっぱり苦手な人だなと思ってしまう。
「葵ちゃん、今日のメンバーに気に入った人がいるとか?」
「え? あの、まだそんなにみんなと話してないのでそういうのは……」
「ま、それもそっか。っていうか俺がそうさせたくなくてあえて隣の席に座ったんだけど。とにかくさ、俺、葵ちゃんのこと本当タイプなんだよねぇ。だからさ、この後二人で――」
暫く続いたやり取り。
しつこい矢上さんに壁際に追い詰められた私は逃げ場を失ってしまい、どうにか逃げ出そうと焦っていると、
「アンタ、がっつき過ぎじゃね? こんなとこで女口説いてんじゃねぇよ。クソが」
矢上さんの背後から聞き覚えのある声が飛んで来て、
「は? つーか何なのお前」
突如喧嘩腰で声掛けられた矢上さんは苛立ちを露わにしながら振り返るとそこには、
「ゆ、結月!?」
若干息を切らせた結月が立っていた。