「……だ、だったら、なんでそっちは裸なのよ……」
意外に筋肉がついてがっしりと引き締まった身体を、真っ直ぐに見ることもできずに、目を逸らして言う。
「ああ、俺は寝る時いつもこうだからな。ただの習慣だって」
「……習慣って言っても、ベッドで裸でいっしょに寝ていて、何もしないでいられるわけなんて……」
言いかけた私を、「してねぇつってんだろ」と、銀河がやんわりと遮った。
「……寝込みを襲う気なんてねぇよ。それに『2人で寝よう』ってベッドに引っ張ったのは、おまえの方だからな」
「……そんな、ウソ…」
酔っ払って自分がやらかしてしまったことに、声を失っていると、
「……ただ、本当にいっしょに寝ただけで、何もしてねぇから」そう、もう一度念を押すように口にして、「だから、心配しなくていい」と、気遣うように付け足した。
「うん……ごめんなさい…なんか昨日から、迷惑かけてばっかりで……」
「いいって、気にすんなって」
銀河が場を和ませるように、ニッと笑って見せると、
「酔いざましに、シャワーでも浴びてこいよ? 俺は、その間に着替えとくから」
と、すかさず話題を切り替えてくれて、
「あ…ありがとう…」
ブランケットを剥いで、もそもそとベッドから脱け出そうとした──。
と──、
向けた背中にふと手の感触があたって、肩を過ぎる長い黒髪が、突然にひと房ふわりとすくい上げられた……。
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