テラーノベル
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韓国旅行中、ソウルの地下鉄に乗っていたら、偶然にも兵役中のヨンスと出会った。
「あ、兄貴!안녕하세요!」
「おー、ヨンスあるか。久しぶりあるな」
「へへ、久しぶりなんだぜ!」
当の本人は、軍人らしくベレー帽に迷彩服という出で立ち。どうやら休暇中らしい。
「兄貴はこれから何処に行くんです?」
「梨泰院ある。お前は?」
「俺も梨泰院まで。どうせなら二人で散策します?」
「んー、そうあるな」
電車が一旦停車し、多くの人が降りる。我とヨンスは、空いた席に並んで横に座った。
「そうそう、菊とは連絡取ってるあるか?」
「カトクでしょっちゅう取ってるんだぜ。あと、時々手紙も送ったりとか……」
「それだけマメにやってるなら、菊も寂しくねぇあるな」
「いや、それが全然。『会いたいです』『恋しいです』って時々送ってくるんだぜ」
「あはは、菊の奴、お前にすっかりゾッコンあるなぁ」
「そうなんだぜ。可愛いチャギヤなんだぜ」
だからいっそう訓練を頑張って、菊の隣にいられる男になるんだぜ────頬を染めながらも、瞳の奥で強く煌めく、確かな決意。
其処にかつての奔放で甘ったれな面影は、すっかり見当たらない。今、我の目の前にいるのは…………情に篤く愛に誠実な、満20歳の立派な青年だ。
「お前…………変わったあるなぁ」
「そうですか?俺自身はそんなつもりないですけど。強いて云えば、体が更にデカくなったくらいなんだぜ」
笑って答えるヨンス。その直後、電車が停まった。徐ろに窓から外を覗けば、見えたのは目的地である「梨泰院」の文字。
扉が開き、二人一緒に降りる。
「早速、梨泰院の何処に行くあるか?」
「世界グルメ通りとかどうです?其処で昼飯摂るとか」
「それが良いあるな」
「そうだ兄貴、ついで俺のモッパンの写真も撮ってくれたら…………菊に『俺はこの通り元 気だ』って伝えたいんだぜ」
「ん、了解ある」
本人の言う通り、確かにあの頃よりも、更に背が高くなったヨンス。そんな奴の凛々しい面を仰ぎ見ながら、我は正午の眩い光の射す、地上への階段を登っていった。
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