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#外伝
夕暮れの手前、光はまだ白く 影だけが長く伸びている
凪いだ空気が、山全体を包んでいた。
(あの時以来だ)
無惨戦から数ヶ月経った今日 冨岡義勇は狭霧山へ帰っていた。
(こ)
(この匂いは)
コンコン。
「先生、義勇です。今日は鮭大根ですか」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「本当によく来てくれたものだ。 もう少し蝶屋敷で休んでいてもよかったのだぞ、まだ体調も万全ではないのだから」
「俺のことなら大丈夫です。仕事が無くなって手持ち無沙汰だったので」
「そうか…
しかしわかっているな、無理は禁物だ」
「はい、ありがとうございます」
「うむ、まあ…
未調理の生鮭と大根で鮭大根とわかるあたり、まだ大丈夫そうだが」
「これだけは得意なので」
「今更だが本当に、お前は鼻がきいていないのだな?
…まぁ冗談はさておき、久々に腕を振る舞うとするか」
「手伝います」
「いや 今日はいい。 座って大人しくもてなされとけ」
「…はい」
この家に帰ると、思い出す。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
13の夕方
岩を斬る訓練の最中だった。
俺は中々岩が斬れなくて、こんな事を言った。
「錆兎だから斬れたんだ。 でも俺には無理だよ。
“あの時”も何も出来なかった。今回だってきっと」
「やっぱり姉さんじゃなくて」
「俺が死ねばよかっ
パァン
人に死ぬなと言うくせに、俺のことは置いていった。
いつも、
いつも俺の何歩先を歩んでいる。
同い年とは思えないほど頼りで大人で
型の習得も岩を斬るのも結局
何一つ敵わない
真っ直ぐで強くて憧れていた
忘れたと思っていた。
忘れてしまいたいと思っていた。
でも、
ここまで己が生にしがみつき戦えた理由
引っ張りあげてくれたもの
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「少し、岩を見てきます。 炭治郎が斬った岩は俺の数倍もでかいとききました。」
先生に一言いい、俺は岩のところへ
俺がここにいる理由になったあの地へ行った。
「…あった」
(これが、炭治郎が斬った岩、本当にでかい)
(これを1人で…)
俺はちゃんと繋げただろうか、
繋いでもらった命を
託された未来を
やり遂げられただろうか、残された者として
恥じぬ闘いを。
岩の下へ腰を下ろした瞬間
「あ」
ちりん。
もう日が沈みきる時刻、
どこからか風とともに風鈴の音がする
その風の温度があの暖かな体温みたいで
その風鈴の音があの真っ直ぐな声みたいで
ぽろぽろと涙が溢れてくる
「あはは。
…やっぱりずるいよ 」
(錆兎。)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
おまけ
「…むむう 起きないねぇ。 鱗滝さんご飯用意してくれてるんじゃないの?」
「まさか、泣き疲れて寝るとは。相変わらず男らしくない。 これが柱になったやつの姿か。
…ああもう風邪をひく」
「…っふふ」
「…なんだ」
「錆兎、嬉しそう」
「は?」
「義勇さーん!!!」
と、そこで遠くから2人の足音がする
「義勇さーんどこでっあ!! あーー!居ました義勇さん」
「大丈夫ですか!!ぎゆうさ………ね」
「寝てます。」
「こら義勇! こんなところで寝てどうする鮭大根が冷めるぞ」
「……先生、と炭治郎?…… ここは…」
「朝霧山の上の方ですよ義勇さん」
「ほら立て、はやく戻って飯を食べよう」
「さっき禰豆子と一緒にきたんです。義勇さんも来てたんですね!」
「そうか、禰豆子もいるのか」
「大丈夫そうだね錆兎」
「なにが」
「義勇のこと。」
「…そうだな」
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恋煩い/リュックと添い寝ごはん
13の夕凪に
風鈴の音がする
そこねあなたはそこにいるのね
風邪がふたりをつなぐ
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