霊弍は昨日行ったカフェの[季節のフルーツ贅沢スムージー]を飲みながら任務に向かっていた。
(えっと今回の任務はっと…違法武器工場の制圧任務か…さっさと終わらせて晩飯作らないと…)
霊弍は家事スキルも高く、任務がない日等は朝ご飯や夜ご飯を造ることがあるのだ。理由はただ一つ、母である8代目当主の夜桜京子と夜桜万は各々任務やら出張やらで家にいないことが多い(というか家にいないのが基本)ため、霊弍と零が代わりに家事をしているのである。(そもそも学生時代には成績も学校1で、女子からも人気もあったのに、現在は家事も出来て金級スパイで裏社会からも人気があるとかって悪い箇所ないじゃん!)
しばらくすると霊弍は任務場所に到着する。そこには、武装した集団が待ち構えている。(じゃあ、一丁やりますか!)
そう言い、飲みかけのスムージーを天に放るとスムージーが頂点に達するか否かの時点で霊弍は大きく踏み込み、敵部隊に突入していった。数分後、霊弍が天に放ったスムージーをキャッチするとストローを咥え、スムージーを飲みながら去るのだった…その後ろには先程の武装集団が、山積みになって倒れているのであった。
(ただいま~)
霊弍は屋敷の玄関の戸を開け、食堂に向かう。
(お帰り、お兄ちゃん)
食堂の近くのキッチンには零が晩飯の準備をしている。
(零、今日は俺がやるって言ったのに~)
(だってお兄ちゃん遅くなるって言ってたから準備しちゃった)
(ありがとな、零)
(いえいえ)
しばらくすると、二人の笑い声が聞こえるのであった。
その日の夜中、霊弍は机の上で何かの作業をしていた。
(今日の内に完成させないとな…)
霊弍が作っているのはキーホルダーの様にも見えるが、実は違った。
(明日は零の誕生日だからな~早めに完成させないと)
そう、霊弍が作っていたのは零の誕生日プレゼントである。そのプレゼントとは、零の色である青色のミサンガ。霊弍は過去に小学生の時の零から誕生日プレゼントとして貰っており、以降、肌身離さず身に付けている、いわば、宝物のような物だ。
(明日は父さんと母さんも来るって言ってたし、久々に家族揃って零の誕生日を祝うか~)
霊弍は明日をとても楽しみにしているのであった。
そして、来たる翌日。
(ふんふんふ~ん♪)
今日は珍しく零はとても機嫌が良い。霊弍は零が機嫌を損ねないように、厳重に行動しながら夜頃を待つのだった。
そして、夜。すると、玄関の戸が開く。
(ん?誰だ?)
霊弍が食堂を出て玄関付近を見ると、そこには見覚えのあるシルエットが2つあった。
(父さん!?母さん!?)
(あら、霊弍じゃない、元気にしてたかい?)
(お~霊弍!元気にしてたか?)
それは、零と霊弍の母で、夜桜家8代目当主の夜桜京子と、その夫で零と霊弍の父の夜桜万だった。
(俺は元気だけど、二人とも来れたんだ、昨日は一応行けるって言ってたけど仕事が終わるかわからないって言ってたし)
(せっかくの娘の誕生日よ、来ないわけ無いじゃないの)
(その通りだぞ~霊弍)
(なら良かったよ、すでに準備出来てるから)
(あら、それはありがたいことね)
(霊弍~お前も成長したな~あの時はベソ搔いてたのに)
(いつの話してんだよ、零待たせてるから行こう)
(ええ)
(だな)
食堂に着くとすでに零がいる。
(あ、お母さん!お父さん!)
(久しぶりだな~零!)
(久しぶり、お父さん)
(久しぶりね、零)
(久しぶり、お母さん)
(すっかり大きくなって)
(もちろんよ)
(2人が出張とか任務で居ない時は、お兄ちゃんが世話してくれたからね)
(あの時は2人に大変な思いさせてたなぁ)
(ふふ、そうだったわね)
(けど、こんなに元気な姿を見れて父さん嬉しい!)
(私もよ、お父さん)
久しぶりの再開で盛り上がる一向だが、霊弍が言葉を放つ
(父さん、母さん、そろそろ零の誕生日祝おう)
(そうだったそうだった)
(そうね)
そして、4人とも席に付き、クラッカーを手にする。
(零、誕生日おめでとう!)
手にしたクラッカーの紐を引き、パァン!という音と共に零の誕生日を祝う夜桜家9代目一同であった。
(んじゃ、そろそろブレゼント渡すか)
(そうね)
(だな)
一人一人、零にプレゼントを渡し始める。
(まずは俺から~、零、これ)
(これはなにかしら?)
(まぁ開けてみろって)
(?)
零は万から貰った箱を開ける
(これって)
(そう!茶葉や豆を入れるだけで世界中のコーヒーやら紅茶やらが味わえるメーカーだ!)
(こんな高いの貰っちゃって良いの?)
(可愛い娘のためだ!)
(ありがとうお父さん)
零は微笑む。
(次は私ね)
京子が紙袋を取り出す。
(零、お誕生日おめでとう)
紙袋からお菓子の箱を取り出す。
(お母さん、これって…)
(そう、超高級の雪ちゃんスフレよ、キャビア味にフォアグラ味、トリュフ味などの高級品の味のスフレよ)
(お母さん、これって何万円もするんじゃないの?)
(そうよ、だけど、可愛い零のために奮発しちゃったわよ)
(ありがとう、お母さん)
またしても零は微笑む。
(じゃあ、最後に…)
霊弍の番である。
(俺は2人よりも凄いものじゃないけど)
そう言うと、小さな袋を取り出す。
(これ)
(これは何?)
(まぁ開けてみて)
零が袋を開けると…
(これ…)
(そう…ミサンガ)
(過去に零が俺にくれただろ?)
そう言って左腕を見せると、手首には零がくれたミサンガがついている
(懐かしいわ…これはお兄ちゃんの手作り?)
(そう、見様見真似で作ったけどどうかな?)
すると、零は袋を両手で握り、霊弍に向けて顔を上げる。
(ありがとう、お兄ちゃん)
零の笑顔は1層と美しく見えた。
その日の夜は久しぶりに夜桜家は大盛り上がりだったそうだ。
その日依頼、零は霊弍から貰ったミサンガを肌見放さず身に付けるようになるのであった…