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窓の外には惑星が輝いていた。白、黄、橙と色相を変え、赤みを帯びたところで宇宙と交わっている。表面に刻まれた丸いクレーターが、弧になって消えていった。
光が惑星に遮られると、僅かに紫がかった闇が宇宙から奥行きを隠した。そこへ星屑が少しずつ広がりはじめる。やがて光は無数となり、郷田博の網膜上で粒が均等に広がる宇宙砂漠になる。
壁のアナログ時計は、廊下に青白い光を放っていた。針は故郷の時を、昔と変わらず刻んでいる。但しその単位は、ほとんど意味を失っていた。あの星の二十四時間制や日週十二か月制に従ったところで、メッセンジャー百七十二号に昼と夜が、季節が、順繰りにめぐってくるわけではなかった。それでも郷田は秒針が動くのを見るたびに、かすかな命を確認している。