彼は廊下を下り、錆ついた銅版プレートの傾く狭い戸を押した。母なる碧い星の写真を通り過ぎる。足にウームの茎がかすった。茎の先端の房が破れて、中から種が飛び散るのが見える。地球から持ってきた植物と、途中立ち寄った星で採集した生物をかけ合わせたこの生命(ウーム)は、複数の遺伝子の中から環境に合うものを自分の中に探していく。発芽するのは一握りだが、一旦芽を出すと地球の地平に太陽が沈みゆくときのように、肉眼でもわかる速さで成長していく。環境の方を合わせようとする地球人とはちょっと違うよなと笑う乗組員仲間の声が、今も郷田の耳の奥に残っていた。彼らの遺影は今、向こうの壁に貼られている。
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