──食事は、前菜のサーモンのマリネから始まり、ヴィシソワーズ(じゃがいもの冷製スープ)に、メインの牛フィレ肉のソテーと……さながらフルコースディナーのようなメニューで、どれもとても美味しかった。
「……本当に、お城の中みたいで」
デザートの、バニラビーンズの入ったアイスをスプーンで一口すくって言うと、
「ここを気に入ってくれたのなら、良ければ今夜は泊まっていかないか?」
彼の方から、そう誘いかけられた。
「えっ、でも……」
実際まださっきの熱が悶々として冷めやらず、彼もきっと同じ気持ちでいるのだろうことは察していたけれど、即座に同意をするには少しばかり羞恥が先立った。
「どうぞ泊まっていかれてください。遅くにお嬢さまをお帰しするのは忍びないので」
そんな私の背中を押すように、給仕で控えていた源治さんが、すべからく口添えた。
「あっ……ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて泊まらせていただきますね」
まだ彼といたい気持ちはやまやまだったこともあり、今や断る術もなく頷くと、
「ありがとう、嬉しい」
私の返事を待ち望んでいたのだろう彼が、ふっと表情を和らげ笑顔を見せた。
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