テラーノベル
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前作のちょっとしたおまけ。
「ちょ、も、ん、むりだって……ッ」
寝ようとしていた涼ちゃんの上に跨ってキスをしようとすると、泣きそうな声を出しながらいやいやと駄々をこねるように首を振った。
……ちょっと、拒否されんのはいやなんですけど。
ムッとして涼ちゃんの顎をつかみ、強引に唇を軽く触れ合わせながら、まぁそうだろうな、と少しばかり同情する。若井が帰ってくるまでに既に二回戦を終え、これで三回目ともなれば、一旦休憩したとはいえ流石の涼ちゃんも弱音を吐きたくなるのもまぁ分からなくはない。涼ちゃんは俺より出してるし、疲労もあるだろう。
でもねぇ、涼ちゃん、俺はちょっとムカついてるんですよ。自分の家で半裸でいたって仕方ないし、若井は鍵を持ってるんだから急に開いたドアの前に偶然いたっていうのに怒るのはちょっと違うとわかっている。だけど、ムカつくのは仕方ないでしょ?
「なんで?」
唇を離して至近距離でじとりと涼ちゃんを見つめ、ゆるやかな曲線を描く腰を空いた手で撫でながら首を傾げる。ぴくんと身体を震わせながら、なんでって……と言葉に詰まった涼ちゃんの首筋に咲く赤い痕を目掛けて歯を立てた。甘噛みよりは強く噛みちぎるよりは弱く、肌の感触がしっかりと歯に伝わるくらいの力で噛み付く。
「いっ!」
「……ねぇ、だめ?」
眉を下げて、涼ちゃんが弱いと知っている顔を作る。案の定目を泳がせた涼ちゃんが、だめじゃなくて無理なの、と困ったように言った。
「……りょうちゃん」
「ぅ……むり、っあ、ねぇ、もとき……ッ」
する、と太腿に手を滑らせて、中心に程近い場所を撫でる。ひくつく喉に唇を寄せ、今度は甘く噛みつく。しばらく首が出る服は着させられないなぁと思いながら痕を残していく。
俺の肩を押すという小さな抵抗を試みる涼ちゃんの手を取り、指を絡めてシーツに沈み込ませた。むりだと言いながら俺の指に絡む手にきゅ、と力が入る。ほんとかわいい、こういうところ。
「……若井さぁ」
「ん、ぇ?」
「涼ちゃんに見惚れてたね」
セックスの後一緒にシャワーを浴びていたけど悪戯を繰り返す俺に怒って先に上がった涼ちゃんを追いかけるように廊下に出た俺の目に入ったのは、半裸の涼ちゃんが若井にグッと近づいておでこに手を当てる姿だった。
後ろ姿さえ扇情的なんだから、真正面からあの色気を喰らって見惚れるなというほうが無理だ。本職の女神も裸足で逃げ出すような色香を漂わせていただろう。だから、見惚れた若井を責めるのはお門違いだ。むしろ玄関を開けて帰宅したら女神がいたんだからここが天国だと錯覚したに違いない。
……なんか話がズレた。
「見惚れてた? ……何回も見てるじゃない、僕の裸なんて」
きょとんとする涼ちゃんに、これだからこのポンコツは、と溜息を吐く。その言い方ちょっとやだ。
確かに着替えなんて死ぬほど見てきたし、なんならお風呂だって一緒に入ったことがあるんだから裸を見たことがないなんて言わない。
だけど、性の匂いをさせた涼ちゃんを、表に出したことなんて一度もない。セックスをしましたと言わんばかりの色気を振りまく涼ちゃんを、俺以外の誰かに見せることなんてあって良いわけがない。
「……若井はきっと、俺に抱かれる涼ちゃんを想像するよ」
「えぇ……?」
「俺に可愛がられていじめられて、泣きながら気持ちいいって喘ぐ涼ちゃんを思い描くよ」
「んなっ」
言葉を選ばず直截的に告げると、涼ちゃんは唖然としてぽかんと口を開けた。
涼ちゃんが意図して若井を誘惑したわけではないことくらい分かっている。若井の方にも涼ちゃんをどうこうしようとか、涼ちゃんとこういうことをしたいとか、そんな意思があるとは思っていない。
でも、“そんな気がない人”を“そんな気にさせてしまう”くらい魅力的だということを、涼ちゃんには知っていて欲しい。
今回は相手が若井だから許す……許……いや許せないけど、俺にも落ち度があるしとりあえず今から可愛がらせてくれたら手打ちにしようじゃないか。
「んー……そんな想像しないと思う、けど」
「けど、なに?」
「想像じゃない本物は元貴しか知らないんだからよくない?」
にこ、と無邪気な笑顔ではなくて、口の端だけを上げる嫣然とした微笑みを浮かべた涼ちゃんが、俺の腰に両脚を巻き付けた。
これはあれだ、俗に言う、
「煽った涼ちゃんが悪い」
微笑みをかたどる唇に噛みついて、文句も制止も甘い嬌声に変えてもらった。
終。
翌朝は上機嫌にお世話をする魔王がおりましたとさ。
コメント
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やばい、ニヤニヤが止まらない🫣 ❤️さんのヤキモチがたまらなく好きだし💛ちゃんの♡♡♡が可愛いのに色気満載で…🤤大好きです! 💙様でこれですから、これは最近のマフィア(失礼)の妻事件やこっちのさんとの腕組みお幸せに事件ではさぞお怒りになったのでしょうとまたもいらぬ妄想が膨らみましたꉂ🤣𐤔 (変なこと言い出してすみません😅)