◯ATTENTION◯・Dreamhammer(Folly×Mach)
・大幅な捏造、妄想、幻覚補完、特に雇用主周りの捏造100%
・失禁、小スカあり
・フォリーがふたなり化
・マッハ様がかなり可哀想
・尊厳破壊、淫語、下品表現等過多
・シリアスあり
・マッハ様の誕生日記念ページや関連フロッピー公開される前に書いたものなので雇用主や組織周りの解釈等が辻褄合わないものとなってる
以上とそれ以外含めて大丈夫な全てが許せる方のみどうぞ
誰も知らない、この世に在る本ならば全て在る書庫にフォリーはいた。未だに誰も通した事のない書庫にある無数の本の内の、フォリーにとってはつい最近出たばかりの雑誌や書籍を何冊も読み漁っていた。その内容はいずれも悪趣味で、露悪的で、下品で、そして主観的感想と不確かな情報に塗れている、所謂アダルト系雑誌やその関連書籍ばかりであった。大きなその手でペラペラと読んでいると、興味深い単語が目に入る。
“ポリネシアンセックス”、このような雑誌を漁っていると頻繁に見かけ、そして題材にしている作品を何度か読んだことあるフォリーは、ふともっと詳しく知りたいと思うと何処の本棚からか論文や民俗学に関する書籍を自らの元へ飛ばし、パッと掴んでまた読み漁った。凡ゆる言語の本や雑誌のページがパラパラと開かれ、それぞれ読んでいた。フォリーは大身体の言語は知っていたし、理解していた。彼女は大半のことを理解している。己の運命と倫理観以外は知っていた。
「……また伝言ゲームの弊害が、ねぇ」
雑誌に合わせて論文や解説書を照合しながら読んでいると、フォリーは溜息を吐いた。ちょっとした検証結果が所謂変態達が尾鰭背鰭付けて話を盛り合わせ、結果として存在しない風習となったものをテクやらSEXのバリエーションとして嬉々として紹介していただけだった。無駄に詳しく嘘を書いている似非科学に、フォリーは呆れながらも読んでいる。軽く知っていただけで深くは分かっていなかったが、一般的に5日を目安に数日かけてゆっくりと情欲を煽り、愛撫をし、最終日に行為をするというものらしい。
尤もそれも人々の嘘と妄想で固められたものな上、効果も人によるとしか言えないが、ふとフォリーは思う。最近はマッハとシ過ぎていたと。また出逢ってから、初夜を過ぎてから頻繁に絡み合い、抱いて抱かれて、おまけに例のフロアから出た後の3日は媚薬とショックのせいで情緒不安定で泣きじゃくっていたマッハをなんとか落ち着かせる為に、無理矢理抱いてなんとか薬を抜いていた。それもあって流石のフォリーも少し疲れていた。普段は実体の無い身体も、流石に疲弊するものだ。
「…でも、4日ヤらないだけじゃアイツも…んー…」
酷い週では2日に何度もしていたくらいな為、一般的な期間では特に休まることはない。そこでフォリーは少し考えた。マッハからシたいと言われるまでを期間にすれば良いと。
「そしたらマッハもおねだりしてくれるかしら…フフ…いつもあんな被害者ヅラの受け身なんだからねぇ…」
そっと指を動かし、全ての本を元の位置へ戻すと、何処からか現れた鏡にフォリーは入り、何処かへ出掛けた。
「えぇ…はい…冬眠機の再検査は…必要ありません、もう睡眠中における観測は不可能です、アレは現実へ侵入していますから。彼女の実体?…………ありません、えぇ…その…現時点では私のハンマーも通用しないかと…いや、大丈夫です、私が…………食い止めて、いますから…あぁ、いや、その、襲撃される事が偶にある程度で、それで、負傷は…ありませんから、ですからご心配なく、では」
焦りながら通話を切ると、マッハは手に持っていた光学迷彩機能付き通信機をまた木箱の中の隅に隠した。サラシで潰している胸はドクドクと鼓動が早くなっていたが、次第に落ち着くと、また窓の外のデスクを見ていた。上階にて、久々に来た雇用主からの連絡にマッハは顔を顰めていた。特にドリームパラサイト…フォリーに関する報告は最近ではあまりしたくないものとなっている。雇用主達は一刻も早い彼女の始末を望んでいるが、マッハはやはり出来なかった。だから密かに嘘を塗り重ねている。フォリーは最近ではほぼ完全な実体化が行えるようになっているし、ハンマーも出力最大で殴り掛かればきっと殺す事、殺せなくとも大打撃を与える事は理論上は可能だし、襲撃…もとい来訪も頻繁であった。そして、食い止める方法が彼女に強制されている性処理だなんて口が裂けても言えなかった。もしそれらを一つでも零せば、または誰かが言いふらせばきっと、多くの観衆の元で彼女を殺さねばならない。そして皆己の事を怪物に犯され傷つけられながらも打ち勝った、悲劇を乗り越えた勝利の英雄であると皆口々に称賛するだろう。
過去のマッハなら、それを僅かに望み、隙を狙って殺そうと必死になっていただろう。しかし、情を覚えてしまい、更に身体を重ねた事で幼き日に遊んで仲良くしていたのにある日消えた友の成れの果てが、その悪意に満ちた怪物であると気付いてしまってからは、彼女の中で殺してやりたいという感情は日々薄れつつあった。勿論いつか行わねばならない日が来るであろう事も、それが己の運命であることも、何れあの夜を過ごすこともできない身体に変えられるであろうことも、理解してはいたが。
「………そういえば、アイツ、もう5日も来ていないのか」
毎日の様に神出鬼没に現れては揶揄ってくるフォリーが、もう5日もこのオフィスに、それどころかホイールにも何処にも現れない事に寂しさでは無いが、違和感を覚えていた時だった。
「ハローマッハ〜!」
「煩い」
背後からの声に振り向かず、間髪入れて足を後ろにやると蹴る感触がした。いつもそうだ、来ないと思ったら来るのがフォリーだ。マッハは呆れながらデスクのある下の階へ降りようとすると、フォリーもその重たげな容姿に見合わず音を立てずに階段を降りた。
「…最近来ていなかったのはなんだ?」
オフィスチェアに身体を沈ませながら、デスクの前でニヤニヤと笑いながら見下すフォリーにマッハは問いかける。
「別にィ?出掛けたり、ウォルターとお茶飲んでたらねぇ」
「食べ物は食べられないんじゃないのか?」
「実体化さえできりゃ話は別よ、それに、最近は精度も上がってさぁ甘いものとかなら食べられるようになったのよね〜嬉しいわ、マッハと同じドーナツの味とか楽しめるし」
「そうか、お前にはドーナツ一個もあげないがな」
「えー酷い、いっつもスイーツショップで両手箱いっぱいにして買ってるのに1人で食べる気?太るわよ?」
「ピルビーにはあげるがお前にはあげないという意味だ」
「じゃあピルビーにあげて、ウォルターにもあげて、残りは誰にあげるの?2人ともそんなに食べな」
「お前の顔もお前が殺した仔兎の様にしてやろうか」
「…これも言わない方が良さそうみたいね?アンタのバスルームにあったヒビの入ったガラスの」
「あぁ、その通り黙っておけ」
先程の不安や、危機感を忘れる様に苛つきながらフォリーと会話するマッハ。その間、フォリーは猫背になってデスクに肘をついたり、指で突いたりなどしていたが、マッハの身体には一度も触れなかった。触れないようにしていた。フォリーはマッハに何も言わずに、ポリネシアンセックス…的な事を始めていた。自分からは身体に触れず、何もしない。いつもなら身体をベタベタと触ってスーツの中まで手を入れたりなどしていたが、勿論そんな事はしなかった。ただマッハが自ら志願し、触れようと、求めようとするまで待とうとしていた。
そんなフォリーの思惑に対して、マッハはそんな事一切気付かない。敵を察知する能力等はずば抜けているがそういった事に対しては鈍感だった。普段と違って触ってこられない事に何の疑問も持たず、仕草の違いも気付かなかった。
そのまま話してから、フォリーがまた霧になって帰ってからもマッハはただフォリーの身の事や、この先のことに対して思考するばかりで違和感を持たなかった…その時までは。
静かなオフィスにて、紫色のマグカップに入ったまま放置され、冷めてしまったコーヒーを口にしながらマッハはぼんやりと、フォリーのことについて考えていた。
頻繁であったフォリーの来訪は、最近では数日に一度、それも大抵は喋るだけ喋って満足したら帰るくらいになっている。普段は行為をするために来ていたようなものであったのに、パタリとしなくなった。それももう2週間も。
その事実に対して元々は性行為なんて嫌だった、好んでしてはおらずあくまでも抑え込む為に受けていたマッハは安心しながらも、身体は淋しさを覚えていた。マッハの意識に反して、或いは深層意識に従ってか、身体は日々の習慣的でもあった行為を望んでおり、マッハは妙に胸が張って苦しかった。今朝もサラシを巻く時、濡らした布を胸に当てた時、その水で冷たくなった繊維が乳房に当たっただけで静電気の様に一瞬の痺れが身体に渡り、ふっくらと乳首が勃ちそうになった程だ。固く締め付けられた胸は、また快感を欲する様に張り詰めて、弾け飛ばないか不安になる程だった。
「……それでいい、元々、そんな関係で…あるべきでは無いのだ……」
そう思いながらまたパソコンから各フロアの管理や監視をしていたが、ふと暗い考えが過ぎる。フォリーが自分に飽きてしまったかもしれないということを。マッハは正直に言ってフォリーとの関係は、所謂遊びの関係であると思っている。彼女の興味と好奇心、それに性欲を満たして満足させる為だけの愛も何も無い関係。自分から情を抱いてはいるが、フォリー本人はただ自分を都合の良い玩具程度、と思い込んでいる。実際のフォリーの感情や本心に気付かぬ鈍感さから、被害妄想の様なものが脳内に渦巻く。もし仮に自分に飽きて行為をしなくなったのならば、逆説的に言えば彼女を食い止められなくなったの同然だ。自分があの慾望や悪意を受け止め発散させていた分、周囲への安全もある程度は保証出来た。自分だけが貪り喰われる事で、少なくともフォリーが他に襲うことはなくなっていた。しかし、今はフォリーが襲って来ず、性処理もさせていない。それは、フォリーが自分以外の誰かを襲っているのかもしれない可能性がある事だ。それが性的な意味でも、暴力的な意味でも。
──マッハは全く気付かない。人一倍フォリーに警戒しておいて、人一倍フォリーの心も思考も読めていなかった。そのサディスティックな悪戯心からの遊びである事にも一切、気付かない。
ただ1人最悪の事態を想定して頭を抱えていると、デスクを小突く音が聞こえた。顔を上げれば、やっぱりあの赤い目だ。
「何突っ伏してるの?マッハ」
「……あぁ、少し、な」
安堵と不信感の入り混じった気持ちのまま、フォリーとめを合わせると、身体の内側がジワジワと熱くなる。フォリーはデスクを見渡しながら、勝手にマッハの飲みかけのコーヒーの入ったマグカップを手に取り、一口飲んだ。が、直ぐに吐き出した。
「うえッ苦ッ…しかも冷めてるし」
「…実体化してるのか?」
「まぁね、やっぱ何回もやって練習しなきゃなぁって」
「………そうか」
マッハはジャケットを脱ぐと、オフィスチェアの背凭れに掛け、そのままシルクハットもデスクに置こうとしたが、フォリーはそれを冷たい目で見ているだけだ。
「…………」
「何やってんの?」
「…シに来たのじゃ、無いのか」
「全然?別にそんな気分じゃないし、ちょっと顔出しに来ただけなんだけど」
「……」
「まさかヤりにきたと思ったの?マッハも随分欲しがりになったわね〜」
「…こんなこと思わせるくらいに私を襲った、お前の方が変態…だろ……」
「こんなこと思うくらいに抵抗無く抱かせてくれるようになったのはアンタでしょ?」
そうニヤニヤと嗤うフォリーに、マッハはこれ以上話しても無駄だと感じ、再びジャケットを着直すとフォリーの赤黒い手からマグカップを奪い返し、居住区内の方へ入りシンクに古くなったコーヒーを流した。真っ黒な液体が、普段あまり使わない分水垢が薄ら残っているシンクへ流され、マグカップを適当に濯いで布巾で水気を取ったら、コーヒーメーカーに置いて新しい熱々のコーヒーを抽出する。
「焙煎とかしないの?」
「カフェインが効かない身体だからな、別にカフェインの少ないインスタントで十分だ」
「へぇ」
「それに…カフェインが効かない代わりの眠気覚ましなら、これくらい不味いものの方がいい」
抽出されたコーヒーの、黒く熱い液体を見ながらマグカップを取った時、フォリーが背後からコーヒーミルクとスティックシュガーをそれぞれ3つずつドバドバとマグカップに注いだ。
「何してるんだ」
「甘い方が美味しいでしょ」
「それは…そうだが…でも私は、あぁ…」
真っ黒だった液体は、白いミルクと砂糖が混じり合って薄いベージュのような色となる。それをマドラーで掻き混ぜてから、少し引き気味にマッハは口を付けた。最初はキツイ甘ったるさが来ると思っていたが、意外にも丁度良い甘味とコクを感じられる。甘い暖かな液体を飲み下しながら背後を見たが、フォリーは勝手に冷蔵庫を漁って入ってたキャンディを何粒か、味すらよく見ず適当に選んで包装を捨てると一瞬だけ仮面を外し、口に入れたかと思うとまたいつもの仮面姿で、バリボリと音を立てて噛み砕いていた。
「ね、美味しいでしょ」
「まぁ、それは、そうだが」
「てかさぁアンタ冷蔵庫お菓子ばっかじゃない?」
「…ピルビーのために……」
「アンタいっつもいつご飯食べてるの?いや、あんなマシン使って寝るくらいだものね。たまにしか寝ないアンタなら、そんなに食べなくったって…」
フォリーがまたマッハを見る。マッハは自分でも気付かぬうちに顔を顰めていた。まるで、人間では無いような物言いを、あからさまに人間ではないその怪物にされていた。日々人の様に、真似事が真実になる様に、機械の様に冷たい自分とは違って食べて寝て楽しげに喋るその怪物に。
「………何、その顔」
「…お前には私が、どう見えている?」
「普段食わないくせに人いないと思ったら1人でドーナツバカみたいに食べる、自分のステッカー貰ったらちょっと嬉しそうにして帰ってもらった後に剥がして集めてる、暇も無いというのに料理番組見てアレ作りたいとか思ってる、たまに姉や弟の死に顔思い出して泣いている、人じゃ無くなろうとして人を捨てられてない、矮小な人間」
「人間基準なら私は矮小では無いが」
「アタシから見たら矮小よ」
「ウォルターは?」
「アイツは人間じゃないわ、コンクリート製のサキュバスよ」
「否定はしないが…」
「とにかく、アタシはアンタが思うよりも…アンタを見ているわ。勘違いしないで、アタシはアンタを人間と思ってる、逆にアンタ自ら人から遠ざかろうとしてるだけよ?」
自らと、そう言われるとマッハは、ばつが悪そうに目を逸らしながら言う。
「……あまり見ないでくれ」
「目が10、20、いや、数えられないくらいあるのに、どうやってアンタを見ないようにできたらいいかしら?」
「用がないなら、さっさと、お前から去れ」
「やーん意地悪ッ、自分から脱ごうとしたくせに」
「調子が狂う…確かもうすぐ…予定的にエレベーターが来る、お前はいつも通りあの森に戻ればいい」
「はいはい、素直じゃないんだから」
マッハは背を向けてまた新しくコーヒーを淹れ直す。一つ一つ軽く刺さった棘を指で引き抜く様に、なんとか振り切ろうとしていたが。
「マッハ」
「…なんなんだ」
振り向いた隙に、そっと脣に触れられたかと思うと、舌先同士が軽く触れ合った。突然の接吻にマッハは思わず触れようとしたが、フォリーはそのまま真っ黒な霧となってそのまま消えた。
「……なんなんだ、本当に……」
コーヒーメーカーの駆動音が止まり、マグカップに再び注がれたコーヒーに、マッハはスティックシュガーとコーヒーミルクを5つずつと、飴玉を一粒入れて掻き混ぜた。甘味料と植物性油脂が溶け合ってどろどろの熱い液体となったそれを、マッハは無理矢理飲み干すとそのままデスクの方へ戻った。
「…自ら遠ざかっている、か……」
マッハは、軽く、無理矢理口角を上げる様に笑いながら、帽子を被り直す。
「…最初から、私は人間では無い、絶対に」
人間が死ぬ様な環境でも平然と生きている、一部の物質が効かない、人ならざるものの血が混じっている、腕はもう人のものでは無くした、これから、全てを置換し人の物から遠ざけることを許諾し望んでしまった、そして、情を掛けても、快楽を感じたとしても、愛を求めようとなんて思えない。マッハにとってそれは、人間では無かった。人の形をした、何かであった。
レコードから静かなクラシックが流れているオフィスにて、マッハはぼんやりとまたいつも通りデスクに座った。座った途端またあの胸の張りと、それに加えて何故かショーツが湿った気がしたが、何故かは分からなかった。デスクに置かれた書類の下に、以前オフィスで行った性処理中に付けた引っ掻き傷は、見ないフリをした。
デスクチェアに付着した僅かなシミと水滴を、乾いた布で拭き取る。最後の情事から1ヶ月が経った頃、マッハはこの頃オフィスにいる時ふと濡れてしまうことが多々あった。身体に刻み込まれた、オフィスで2人きりの時に行った情事の記憶がオフィスに連れて行っただけでその時の感覚を想起させて濡らしていた。
「……一度、トイレに行こう…あぁ…」
マッハも一応生理現象も起こる様になっている。つい2日前に月のものが終わった程度にはまだ機能している。居住区からバスルームに入り、トイレへ入るとスラックスを下ろして座った。ショーツにはねっとりと愛液が糸を引いていて濡れている。その日は2時間後に別フロアに行く予定があった為シンプルな黒のロングショーツを穿いていたが、クロッチ部分が既に若干白く濁ったその粘液がべっとりと付いている。
「…はぁぁ…私…は………」
股間の方を見下ろせば、ガチガチに勃起したクリトリスが、血管を浮き出して反り立っていた。マッハの人差し指くらいの長さはある陰茎の様な─フォリーが生やすあのペニスを見れば、それは本当に矮小なものではあるが、他の女性と比べるとその異質さが際立つ─クリトリスを、そのまま握ると上下に擦る。まるで、男性の自慰の様に。
しゅっ…ぐにっぐにゅっ……♡
「…ッフゥーッ…ヴッ…フーッフゥーッ……」
確かな存在感と感触のあるクリトリスは、マッハの手の中で更に大きくなる。マッハは確かに人とはかけ離れた生活を送るが、性器を弄って快楽を得る様は人の其れであった。結局カロライナ・マッハという存在は人間の定義には当てはまっていた。一度知った快楽に依存して離れられなくなり、心地良いと思った部位を自ら触り快楽を得る生き物であった。例え異常存在を殺す力があっても、音速で移動することが出来ても、少なくともクリトリスに触れると気持ち良くなれるという知識を得てしまった以上もう彼女はその以前へ戻られない。特に、フォリーとの逢瀬で多くの快楽と悦びを自覚の有無関わらず刻み込まれたその身体と脳は、取り返しがつかなくなった。
むにゅ…ぬるっ…しゅっじゅ♡
「フゥッフゥーッ♡ん゛ッ…あ…あ゛ぁ…♡」
子供の頃から気にしていて、上層部からの指示で受けた身体検査の際もその箇所を指摘され、コンプレックスの塊の様なものであった大きすぎるクリトリスを、自ら嬉々として触って揉み込んで、扱いている。精子の出ない、特に意味の無いその器官を意味も無く気持ち良いからという理由だけで触れて獣の様な荒い息遣いをしていた。
「ハァーッ…ハァッん゛ッ…イ…イッ…♡」
パタンと、何かが倒れる音がする。その瞬間マッハは思わず手を止めてしまい、押し寄せていた快楽の波は収まり引いた。
「…………」
じょぼぼっ…しょわ…じょろろろ………
無自覚に我慢していたのか、自然と放尿するマッハ。勢い良く排出される真っ黄色なおしっこに混じって溢れて止まらなくなった愛液がぼたり、ぼたりと便器に滴り落ちていた。快楽への欲求がイマイチ収まらないまますっかりやる気を無くしたマッハは、トイレットペーパーを少し多めに使って股間を愛液含めて拭いて、またクロッチも拭いた後そそくさと流し、手を洗ってからバスルームを後にした。
「…………………」
「おっ来た、アンタこんな堅っ苦しい本と絵本以外無いわけー?漫画とか読まないの?」
そう言いながらフォリーはリビングの本棚を物色し、本を散らかしていた。本棚の中は歴史書や旅行本、小説や鍛錬に関する参考書等にピルビーの影響からであろう絵本が何冊か入っていた。
「…勝手に触らないでくれ」
「だって、なんか読もうと思ったらコレよ?小説もこんな面白くなさそうなやつばっかり、ORGASMACHINEとか、Histoiredel’œilとかの方がもっと面白いわ」
「知らない…」
「ま、アンタにはもっとこういうやつ読むべきだけどね、結構おバカでガキみたいにはアンタには」
そう言いながらフォリーはセーターの裾に手を入れると、そこから一冊の本を取り出した。
「………お前本当に…」
「フハハハッ、アンタの顔傑作よ」
マッハは手渡された本を見てわなわなと震えている。それは一般的なアダルト雑誌だ。それも、レズビアン向けの。裸の女性同士の絡み合った描写には、勿論乳首も陰部も何もかも写されている。腹を抱えて笑うフォリーに対してマッハは怒りを剥き出しにしそうになったが、それに興味が少しある自分を否定出来ず、渋々受け取ってソファの隙間に入れた。
「アンタエロ本そこに隠すんだ笑」
「ピルビーも来ることがあるこの空間にこんなもの飾りたく無いだけだ」
「…ピルビーのこと大好きね」
「当たり前だろ、大事な友達なんだ、それも、無垢で守るべき…」
「アタシはー?」
「殺すべき対象」
「………あぁそう、じゃ、アタシ帰るから」
その言葉を聞いた途端、マッハはハッとして、若干焦る。
「…今日」
「行く日なんでしょ、ささっと行きなよ」
引き留めようとしたもののつまらなそうに、白けた様な顔でそう言って霧となって帰ったフォリーに対して、マッハは選択を間違えたと思いながらも予定時刻が近いことに気付いて急いで出た。
ウォール、ホール、そしてホイールフロアとフロア中を周り、いつも通り木箱に座ってホイールを回す時を待っていたが、マッハはその時ふと思い出す。あのフォリーの冷かな目を。普段おちゃらけていて、気が抜ける様な雰囲気な分忘れがちであった、人を殺す人ならざるものであることを想起させてくれる目であった。だからこそ、彼女を将来的に殺さねばならないという意思も強まった。
「………でも」
マッハの胸には、奇妙な熱いものがあって、それが冷めてくれない。アダルト雑誌を渡された時からずっと、焦がれる様な熱い何かがある。マッハは数十年の生涯においてアダルト関連に触れたことなんて全く無かった。国の為、雇用主の為に生きていたマッハには、そんなものを気軽に触れられる環境なんてものは無く興味も無かったのである。正確に言えばマッハはこれまで、性というものを不純であると思い、毛嫌いしていた。性に触れたのもつい2ヶ月前の初夜の、フォリーに強姦されたのがマッハの人生において初めての性体験であったほどだ。マッハは月に一度来る月経の流れる血の意味も、パンティからもっこりと浮き上がる程の大きなクリトリスの意味も、何も知らなかった。全てが不要としか思っておらず、その血を己が終わらせられればそれでいいとさえ考えている。
けれども、その意味を段々知りつつある今、身体から湧き上がる性欲のその熱を感じている。彼女はもうあの日から後戻り出来なくなってしまっていた。生理周期記録のノートを付ける様になったのも、雇用主共に見つかる可能性が限りなく低い場所で避妊ピルを買うようになったのも、それらをあの逢瀬部屋に隠しているのも、全てがフォリーによって狂わされ、翼を捥がれて堕ちてゆく過程の内一つだ。
「………私は」
エレベーターが到着する音が鳴る。開かれた扉からは多種多様なプレイヤー達がわらわらと何の意味も無く、或いはコインを狙って、そのまた或いは自分を望んでホイールへ向かって来た。マッハはホイールを廻す。この何のためにエレベーターに乗っているのか分からないプレイヤー達の為に、また、自分の運試しの為に。
廻り巡るホイールはREROLLで止まる。低いブザー音が鳴った後にもう一度廻すが、またREROLLで止まる。
溜息を吐きながらもまた廻した時、3回目もREROLLだった。
「…なんて、運が悪いんだ」
プレイヤーにでは無く、自分に向かって吐き捨てる様に呟いてまた廻すと、FUNへ止まり、やっとかと思い口笛を鳴らして一番の道化師を呼んでやったが…ドアから出てきたピルビーはエレベーターの方を見るとハッとして、また、少し泣きそうな顔になってそそくさと別のドアから舞台裏へ戻ってしまった。
「………あぁ…」
マッハはエレベーターを見て頭を抱える。エレベーターは満員であった。それも、フォリーが中に居る状況だ。苛々しながら見てみると、距離はかなり離れていたが、フォリーと目があってしまった。目が合ったフォリーはエレベーターの中で、ただ、ニヤリと笑って手を振った。その、小馬鹿にする様な笑顔を見た瞬間、マッハは腰に一瞬だけ痺れを感じると、またクロッチが湿った感覚がして顔を顰めた。
エレベーターに乗れなくて拗ねてしまったピルビーを慰めた後、マッハは再びオフィスに戻ると、直ぐに居住区へ入り、ソファからアダルト雑誌を取り出し、周りを何度か見てからバスルームに行くと、床下扉から逢瀬部屋の方へ降りた。誰も知らない入ることのないこの部屋唯一の照明を点灯してから、マッハは出入り口近くにあるハンガーにシルクハットとジャケットを掛けた。電気を点けても薄暗い狭いこの部屋にポツンと置かれた、普通の人間が使うにはあまりにも大きすぎる、フォリーとの逢瀬にも耐えられる事を前提としたふかふかとしたベッドに寝転ぶと、そのまま雑誌を開いて読み始める。内容はレズビアン向けなだけあって見開き1ページ目から美しい女性同士が、柔らかな髪と透き通る様な白い肌の嫩い身体を押し付け合い、互いの脣を貪る様であった。それに対して少し引きながらも、マッハはページをぱらり、ぱらりと捲り読み進める。内容としてはよくある女性向け雑誌の少しディープの話に加えて、女性同士の行為の話やテクの話、体験談にコラムと色々あったが、やはり女性同士シている写真ばかり掲載されている。フォリー以外と関係を持った事が無く、別に恋愛感情も無かったマッハだったが、読んでいて写真の中の乱れ愛し合う乙女達を見ていると、ふと子宮の奥底がきゅぅっと引き締まる感覚がする。
「……?」
フォリーが居る訳でも無いのにする感覚。最近少し柔になったお腹を手で触りながらマッハは読んでいると、また、頬が熱くなり、疼いてくる。
「……玩具の使い方…か……」
アダルトグッズの特集ページを開くと、部屋にもあるがまだ使ってはいないものを多く見つける。ディルドやバイブ、ローター等、マッハも知っているものもあったが、その中で気になったのは尿道ブジーだ。細長く、畝りやブツブツのある金属の棒、その隣には…実際に挿れている様子の写真があった。おしっこを出す場所に、その棒を挿れている様子が。
「…これ、確か…」
ベッドの隣にある黒っぽい色をした玩具保管庫となっている棚、そこの二段目の引き出しを開けて少し探ってみると、細長いレザーのケースに入ってあった其れを見つけた。
「………こんなのを…」
挿れることを考えると、やはり怖くなって仕舞おうとしたが、一段目の引き出しに入ってある潤滑剤や消毒液は、確かに雑誌に載っている、必要な道具の内に当てはまっていた。
「………………ッ」
息を小さく吸って、吐くと、覚悟を決めたのか、マッハはズボンを下ろし、そのままショーツを脱ぐ。白く柔な尻臀と、盛り上がっていてふっくらとした陰部、そして、固くなっているクリトリス。マッハは一段目の引き出しから消毒液とコットンを取り出すと、コットンに消毒液を染み込ませプラグと手を拭く。次に潤滑剤を掌に出すと、尿道近くに多過ぎるくらいに塗り込み、またプラグの、冷たく銀色に輝くその身にべったりと付けた。
「…これを…な、中に……い、いけるの、か?……」
枕を背凭れにして仰向けになりながら、股を大きく開き、なるべく力を抜いて、膣よりも更に狭く小さな尿道へプラグの先端を宛てがう。
「う…ふぅ…ッ……はぁッ…」
なんとか勇気を出してゆっくりと、押し込むとつぷっ♡と先端が入ってしまった。
「ん゛ッ………ハァーッ…ハァッ…ハァー……ッ……」
普段何を目にしても恐れぬマッハだが、流石に本来出すのに使う場所にあえてモノを挿れることは、未知の領域に踏み込む以上の恐怖はあった。しかし、それ以上に彼女の中に、持ち手近くまで、丸々飲み込むとどうなるのかという好奇心もあった。マッハは聡明でありながら愚かでもあった。快楽を知った彼女は、知っている範囲以上の快楽を探求したいという慾望を持つ様になっていた。そのせいでフォリーが密かにマッハのことをマゾヒストであると思っていることも、勿論マッハ本人は知らなかった。
「………くッ…ん…んぅッ……♡」
ずぷ………ぬぷ、ぷ…♡
ゆったりと微細に動かしながらブジーをより奥へ挿れると、マッハの腰がガクッと上がり少し力んでしまったが、息を深く吐きながら力を抜いて、更に奥へ奥へと挿れると、やがて持ち手の手前まで丸々飲み込んでしまった。本来尿道開発は少しずつ挿れる長さを長くしてやるものの筈だが、強靭な肉体と、マッハの無自覚なマゾヒズムが先行してここまで来てしまった。
「ッハァーッ…ハァーッ……♡フゥッ…フゥー……♡こ、これで…お゛ッ……♡」
ずぷ、にゅ、ぬちゅ♡
ブジーを尿道の中でくねらせながら、マッハもまた腰をくねらせて鉄の冷たさと中の痺れる様な快感に尿道の肉壁もマッハ自身も蠢動し、下品な獣の様な唸り声を上げて悶える。
「お゛ぁッ…♡ひぅッ…んひッ…♡」
ぐぶちゅっ♡ぬちゅ♡ずぷぅ♡
膀胱内まで辿り着き、ゆっくりと膀胱の肉壁に粒々とした部分を擦り当てていると、急に尿意が込み上がってくる。マッハは反射的にぎゅっと中を締め付け、我慢しようとするが、それが反対に肉壁にブジーが食い込み電撃の様な快感が直撃した。
「ん゛お゛お゛ッ!?♡イッイ゛グぅッ♡♡」
突然繰り糸を引っ張られた人形の様に身体を引き攣り仰反ると、マッハは思わずクラクラとした意識の中でブジーを引き抜いた。
しゅぃぃ……しょわわわ………
今日入るまで使っていなかった為清潔だったベッドに、薄い色をした尿が染み渡る。思わず失禁してしまった事にマッハは目を泳がせながら股を隠すと、ねっとりとした愛液も指に絡まり、ツンとした臭いがした。
「わ、私……は……♡」
上半身こそは皆が知るカロライナ・マッハそのものをなんとか保てていたが、下半身は皮の剥けた巨大なクリトリスを下品にも隆起させ、愛液と尿で穢れた丸出しの股間と濡れたふっくらした尻に、体液が掛かって湿った黒のハイソックスと靴下留めだけの、娼婦の下半身の様な無様な姿であった。この逢瀬部屋に居るのは高貴なる仕事人でも、悲劇の実験体でも無い、快楽に溺れる卑しい牝豚、或いは怪物に翼を捥がれ自ら堕ちる様になった天使だった何かだ。
彼女は鳥籠から堕ちようとしていることに、自ら気付いていない。カロライナ・マッハは何処までも愚かであった。忠誠と性欲の二律背反の中でなんとかまだ鳥籠にしがみついていた、捥がれた翼では二度と鳥籠に戻れぬことを知らぬ天使だった。
揺れて、止まって、誰かがまた入れ替わり立ち替わるのを繰り返すエレベーターにて、フォリーは相変わらず猫背で見下す様な目で周りを見ていた。しかし、今は自分もまた見下されている。
「恐ろしき我が友よ、まだ拗ねているのですか?」
エレベーターが止まり、プレイヤーが皆地雷原の向こう側にあるアイスクリームを目指して出て行った所だ。ウォルターはフォリーにそう話しかけると、空のエレベーター内で囁く様な声でフォリーは話す。
「だって、マッハとっても酷いわ、アタシがこんなにも可愛がって、愛しているのに…ピルビーのことばっかり…それにさァ」
「二番目の雇用主の話、でしたかな?」
「そうそれ!本当アタシ以外の奴にばっかり笑顔向けて…妬んじゃうわ…それに、アイツまだ求めてくれないのよ?我慢してて苦しい癖にヤッてって言わないし…」
足をパタパタとしながら、顔を顰めているフォリーをウォルターは少し呆れながらも宥める。
「まぁまぁ、そんなに苛立たないで…代わりに私が口でしましょうか?」
そう言いながらウォルターは指で輪を作り口元へ持っていくと片腕で乳を寄せながら下品に舌を出し誘ってくる。2人きりの時に限って誰にでも慰めを、身体を好きなように提供してくれる“彼女”はいつでもそうやって慰めようとしてくるが、フォリーは少し引いている。
「…ヤらなくて結構よこのクソビッチ」
「まぁ、私の穴にもあんなに沢山出してくれたのに…お口が悪いですよフォリー」
「アレは丁度貯まってたからであってさァ!?アンタじゃなくったってよかったし」
「私だって貴方じゃ無くてもいいですよ」
いつものあのニコニコとした笑顔で、巨大な胸を腕で寄せながら言うウォルターにフォリーはまた一歩後退した。
「……アンタよくその乳で周りの奴らに男って嘘付けたわね?」
「えぇ、マーク彼が残したスカーフのお陰でもありますけどね。喉元隠すだけで結構それっぽく見えるでしょう?」
「はぁぁ……そういえばだけど、普段は口以外でもシてくれるんじゃなかったの?いやアンタとシたいわけじゃないんだけどさ…」
「あぁ、それは…こっちはランパート今の彼に命令されましてね…」
ウォルターは履いている男性用ズボンのチャックを下げると、その股間を見せつけてくる。パンティは履いておらず、代わりにステンレス製で飾り気の無い武骨な貞操帯が穿かされていた。
「うっわ、あのランプ頭そんなことさせるんだ」
「もれなくディルドとプラグ装着型なので…うふふ」
微笑みながら腰を捻り、またチャックを上げるウォルターに、フォリーはなんとも言えない気持ちになりながらも、着けている其れそのものには興味があった。
「貞操帯ねぇ、アイツがアタシ以外とヤるとは思えないけど…」
「何も貞操を守る為じゃ無くても、自慰しないように制限とか、そういう目的でも使われますよ?あと、私はちょっと身体が大き過ぎて出来なかったのですが胸用も」
「……また機会があれば、アイツにもしてみるか」
「結構いいですよ、あぁ、そうそう、こちらも…」
ウォルターはセーターの襟元に手を入れるとガサゴソと弄った後に、一つの小さな小瓶を取り出した。ピンク色の液体が入っており、透明な小瓶の中でキラキラと揺らめいていた。
「…媚薬?」
「はい、それもあの今はまだプレイヤーさん方には見つかってないであろうあのフロアのものと同じ」
「ちょっと待って、どうやって手に入れた?」
「え?別に排出口を破壊して中の液体取り出して…あぁ勿論丁度我らが盗人の友が居たので…」
「…アレをどう壊したかも今更聞きたく無いし、あの虫ケラ野郎とどうやって合意を得たのか想像つかないけど、貞操帯って…」
「まぁ、出る為に仕方なくしたものの今の彼に怒られましてね…そんなことよりも、フォリー、貴方にはこれが必要じゃなくって?」
ウォルターは小瓶をフォリーの手にそっと握らせて、艶やかな微笑みを浮かべる。それは若い者同士のまだ垢抜けない初々しい恋心に背中を押す様な言い方と仕草をしていたが、ビブとスプリットの2人にならそう言えただろう。実際は遊び手と玩具、主人と性奴隷とも言うべき拗れた関係の劣情の焔に、より油を注ぐ様なものであった。小瓶を受け取ったフォリーはそれをタートルネックに入れると、ニヤリと笑顔を作った。
「…あぁそうだね、アイツも…口を割らせてやらねぇとな」
「ふふ…楽しんでくださいね、あぁそう、これミスト状態でもあの効果でしたから、決して原液では…」
言葉は戻ってきたプレイヤー達の騒ぎ声で掻き消された。アイスクリームをなんとか貰えた者、貰えずヤケになってジェムポップを食べる者、実体を顕現させていない状態のフォリーに無理矢理アイスを食べさせようとする者でエレベーターは瞬く間に賑やかになった。フォリーは言葉の続きを聞こうとしたが、ウォルターは目を逸らしながら微笑うだけで、諦めて渋々姿勢を正した。
「………マッハ」
「………」
「…マッハ、聞いてる?」
「………………」
「…カロライナ・マッハ、返事は?」
「…はっ、はい、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎様」
ハッとなってマッハは姿勢を正す。地球には無い植物に囲まれた庭園のガゼボ内にて、置かれたティーテーブルを挟んでマッハは二番目の雇用主と話している。穏やかな陽射しの降り注ぐ庭園、鼻腔を擽るレモンティーの香り。 まるで彫刻かのように美しい女性は、気品漂う笑顔を浮かべていたものの、憂う様な表情である。二番目の雇用主は、気まずそうに話す。
「……もう、聞いたでしょう?私が…現場から離れること、貴方を雇用する者が私では無くなることを」
「えぇ、丁度昨日聞きました」
「………私、結婚するの。ずっと付き合っていた人とやっと落ち着いて結婚式を挙げられそうになったから…だからこそ、離れる事になったわ、この…美しい星からも……」
「………⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎様」
「マッハ、貴方がその、恋とかに興味ないことも、そんな感情も抱かないことは知っているわ、だからこそ、言うわ…」
囁く様に、涙を抑える様な震える声で二番目の雇用主は、マッハに言った。
「不変というものは無いわ。永遠はあっても、変わらないものは無い…だからこそ…もし、そういう感情が生まれたら、素直に受け入れてみなさい…無事を、幸運を祈っているわ…マッハ……」
「……あ、あぁ…」
マッハはその運命の化身へと手を伸ばそうとしたが、その手は、腕は瞬時に千切られ地面に堕ちる。気付けば周りは赤い空と赤い落ち葉で染まった地面に、鬱蒼としたアスペンの木がマッハをぐるりと囲んだ何処かであった。腕からは血が流れず金属の接続面が剥き出しになり、落とされた人工の腕はただ物言わず横たわっている。
「変わらないものは無いわよね、そう、アタシみたいに」
かつての純潔の象徴が、穢れたドス黒い姿でマッハを背後から包み込む。
「ほら、アンタだって変わっちまった、下品な身体、性に溺れた姿、アンタだってもう、戻れなくなっちまった」
マッハの盛り上がった肩甲骨辺りの、ある筈の無い捥がれた翼を撫でる様に、その大きな黒い手が触れられた。
「アンタはもう戻れない、一生、その淫らな身体で生きてくのよ…今からも、これからも、その分…」
優しい吐息混じりの声で囁かれる。
「アタシがアンタを、たっぷり愛してやるから」
赤い空に罅が入り、そこから陽が射した。
「………ん……今は…」
仮眠室に掛けられた時計は午前11時を指している。時計の針をぼんやりとした目のまま見ながら、マッハは仮眠用の小さく硬いベッドから起き上がった。昨日はあの後1人でバレないようにシーツやマットレスを洗い、そのついでに身体も洗って疲れ切って思わず仮眠を取ってしまった。それも、派手なレースの紫の下着姿にガーターベルトだけの姿で。
「……着替えるか…」
隣に置いていたシルクハットを手に取り仮眠室から出て自室に向かい、クローゼットからいつもの紫のスーツを着た。ほぼ毎日やっているサラシを巻かずに。マッハは特にオフィスに人が来る時以外はサラシを巻かなかったが、オフィスに誰かが来訪することはほぼ毎日の事だ。必然的にに殆どをサラシを巻いた状態で生活していたが、この日はオフィスに人が来るかどうか確認せずスーツを着た。
「んっ……よし、これで…私は…私だ」
お尻を抑えながらマッハはオフィスの方へ向かう。大き過ぎる胸が僅かな振動でもたぷたぷと揺れているが、それ以上にマッハは尻に挿れたアナルプラグの方を気にしている。昨晩、後片付けをする前にふとした好奇心から、また己にある欲求不満の様な感覚を抑える為に挿入した、丸いコブの連なった様な形をした太く長さのある其れは、マッハの狭い腸内の中でギチギチに詰まり、じわじわと拡張させていた。
オフィスに戻り、オフィスチェアに座る時ですら、マッハはプラグが中で食い込む感触がして思わず声が漏れそうになりながらも、早速仕事をしようとした時、デスクに紙袋に包まれた本があるのをマッハは見る。
「……フォリー…」
若干恨めしそうな声色でそう呟きながら紙袋を破くと、そこには何冊かの…所謂エロ漫画が入っていた。艶々とした塗りの下品極まりない表紙で、豊かな体をした女がまた別のペニスが生えた女に犯されているものが、何冊か入っていた。
「…………ちょっとくらい…」
そのうち一冊を手に取ったマッハは、捨てる訳でも燃やす訳でも無く、普通に読み始めた。かつての性愛を嫌っていた頃のマッハならば即焼却処分していたが、既にレースのブラの一部が押し上げられる程に陥没乳首がふっくらと勃起してしまっている今のマッハには、その様な選択肢は無かった。
パラパラと薄いページを捲り読む。中身はふたなりの女の子がふとましい身体の女を平伏させ、その柔らかな膣肉を貪り犯すものだ。可愛らしい女の子の顔に対してグロテスクなまでに強調して描かれた、血管がバキバキに浮かび上がり凶悪そうな見た目をしたペニスが目を引くその絵面に、またフォリーとの情事を思い出してはマッハは深い深呼吸をする。強調された胸や性器、漫画特有の膣内の断面表現、下品なセリフ等マッハはこれまでに読んだ数少ない漫画達と比べると当たり前だが無かったその表現に彼女は今行っている行為の禁忌さと、反面膨れ上がる背徳感とクリトリスのズキズキとする様な欲求をより感じ取った。
「……ん…こんなのっ……読むべきでは無いが……」
一冊読み終えると、またもう一冊とマッハは手に取り読んでしまう。まるで教会でずっと清純を保つ生活をし続けていた聖少女が、禁書を初めて読んでしまった時の様な。その純潔であった蕾が開花し雌蕊を下品にも見せつける様に花瓣が開いてしまう様であった。マッハは28にして純潔を失い、やっとその穢れに触れた。平均に比べれば遅いくらいだ。彼女は処女達が性に触れ、恋に触れて女となる中、性を嫌い、恋心を持たずにただ鍛え戦い強化され、兵器となる所だった。後少しで熟し始めるその身体はやっと性欲というものを認識して、マッハに性に対する渇望とその苦しみを与えた。それ故にその反動が、今マッハにアナルプラグを入れたままデスクに着き、仕事もせずエロ漫画を読むという狂った行動をさせていた。
「………誰も、見てないよな?」
周りを警戒しながらその日のスケジュールを見てエレベーターが来ないことを確認すると、マッハはデスクにエロ漫画を広げたまま、右手をスラックスの中に入れ、そのまま股間を弄り始める。
くちゅっ…ぐちゅぅっ♡くちゅ、くにゅっ♡
「フゥッ…ん…ッ…♡」
ぺらりとページを捲りながら、白黒で描かれているふたなりの女をフォリーに置き換えて読みながら、その手を止めず指を肉襞のその奥へと入れては掻き混ぜる。脣の端の窄みから涎を垂らしながら、蕩けた顔でマッハは快楽に耽っていた。
「あ…ッ……お゛ぉ…ん゛ぅッ…♡ふぉ、フォリー…ッ♡」
あの消したい程に憎く悪夢の様な情事の記憶が、今マッハにとってはオカズとなっている。強制され仕方なくしている、周りを守る為の防衛手段として行なっていた性処理は、今ではマッハにとって最も渇望するものであり、マッハ自身も行いたいと強く思ってしまっていた。その上で彼女は体裁や、上っ面の地位、それに固いプライドが邪魔をしてしまい、とにかく頭の中に浮かばない様に押し殺し上の口はシたくないと強く言い張っていた。下の口はもっと慾望に素直で正直者であったが。
「ん…ッん゛お゛ッ……あッ…いく、いっちゃ」
「もう3冊読んだの?早いわね」
唐突に自分の一番望む相手が来て、思わずデスクチェアから崩れ落ちるマッハ。床に倒れ込んでしまい、両手で顔を覆うがそのせいで濡れた右手が顕になりしていたことが速攻でバレてしまう。
「……あー、大丈夫?痛く無い?」
「………………出ていけよ…」
「その言い方はないんじゃあないの?」
「頼むから…見ないで…くれ…」
「………強がりね」
暫くすると、フォリーはマッハの腕を手に取り、無理矢理起こしてやる。その際ずっと目を逸らしていたが、通常見えない分を含んだ無数の赤い目は、起こされた後ハンカチで手を拭きながら、掴まれた箇所を触って顔をぽおっと紅くさせるマッハの姿を見てしまっていた。
「アンタエロ漫画読んだことなかったの?」
「……まず、そういう、破廉恥なものを目にする機会自体あまり………」
「28でそれはやばくない?」
「………………」
マッハは顔をまた赤くして、怒った様な顔をする。しかし事実そうであった。一番親しんでいた二番目の雇用主とすら恋愛や、そういった生々しい話になった途端ついていけず、何も分からなくなって最終的に雇用主から話題を変えられる程だった。
「……これからエロ漫画毎日差し入れてやろうかしら?フフ」
「やめてくれ…」
「そんなこと言ってぇ〜」
「それくらいなら…」
「それくらいなら?」
「…………」
マッハはこれ以上は言えず、黙り込んでしまった。自分からしたいだなんて、到底言えなかった。勿論フォリーはそんなこと察している。だからこそ、彼女はまた笑いながらマッハの懐へ瞬時にまた新しいエロ漫画を数冊差し込んだ。
「ほら、色々読んでお勉強しなさいな…ねえ、マッハ?」
「………あぁ」
「それじゃ、アタシもう行くから
「ま、待っ…」
引き留めるまでもなく、フォリーはそのまま霧となって消える。マッハは落胆しながらも、懐に仕舞われた新たな禁書の厚みと重さを感じながら再びデスクに着くと、今度こそ真面目に仕事に戻った。
その晩、マッハはまた逢瀬部屋の方に入ると、スーツからエロ漫画を取り出した後、全てを脱ぎ捨てて裸に靴下留めと靴下だけの姿になり、そのままベッドに転がった。仰向けになり、脚をM字開脚させながら手を股間より更に下へ移動させると、丁度輪っか状になって突き出ている持ち手を掴む。
「ハァ…ッ…んッ…」
ぎゅっと力を入れて、マッハは一気に引き抜く。
ずりゅりゅっずるんっ♡
「ほお゛お゛お゛ぉッ♡♡ん゛ほお゛ッ♡」
腰をガクンっと振るわせ、極太の棒に大粒の玉が5つ連なったそのプラグを引き抜くとマッハのアナルはぽっかりと開き、ピンク色の健康的な腸壁がしっかりと見える。そのままヒクヒクと収縮を繰り返すアナルに、マッハは潤滑剤をたっぷり付けた黒い色をした大きめの─フォリーのものに較べればまだ小さい方に見える─ディルドを即座に突っ込んだ。
「お゛あ゛ぁッ♡きもちッ…ん゛ぉ♡」
ディルドを腸内へ激しく出し入れし、蜜壺から愛液を迸らせながらマッハはまたエロ漫画を読んでいる。自分よりも強く、凶悪な逸物を持った女に犯されよがる女。その快楽への堕落の末に淫らな言葉を使い、手を組んで舌を出して相手に行為を、逸物を求めて媚びる姿。絶対に自分では出来ない言えないその屈辱的なおねだり姿に、マッハはまた興奮しながら自慰を続けている。
(もしこんなことフォリーに言っちゃったら…私…♡)
ぐぽっぐぽぉっ♡ぐちゅっぐぷっ♡
下品な水温が響き、マッハは1人寂しく己を慰めよがっている。将来的に身体改造を、また実験体としての役目を背負っている彼女がフォリーに屈した時、どうなるかは明白だ。破滅は逃れられないものとなり、その瞬間フォリーを食い止める者は居なくなる。マッハは今まで性処理を対価に周囲へ手を出さないことを頼み食い止めていた。だからこそもしマッハから性を、快楽を求めれば即ちある意味平等であったこの関係は崩れ落ち、一気にフォリーが優位な主従関係と化す。それもあってマッハは媚びることもねだることも出来ない。だが…
ぐぼっぐぽっ♡ぐぽちゅっ♡
「イグッイグッ…お゛ほッお゛ぉッ♡♡」
ぷしゃぁっ…しゅぃ♡
舌を出してマッハは絶頂し、体力の潮を撒き散らし脱力した。微かに痙攣を起こすマッハの身体は、もう汗と愛液で全身がぐっしょりと濡れていた。マッハはそのままふわふわとした頭の中でエロ漫画を読む。その中に映るのは、ガーターベルトにミニスカートの下品な格好の女。ふっくらとした太ももが食い込んでいるのを気にしていないかの様な立ち振る舞いの、けれどもやはり簡単に敗北し顔を赤らめる女であった。
「………これだ…♡」
マッハはほくそ笑む。中々折れず、素直になれず、口にできない彼女はそのページを優しく指でなぞりながら、またフォリーとのあの情事を思い出した。
翌朝、マッハは鏡の前で息を呑んだ。普段の極力性別感を無くすような服装…潰した胸の上から着るシンプルな露出の少ない紫のスーツ姿からうって変わって、マッハは痴女のような姿をしていた。
肌色が透ける程薄い生地の白いシャツ、菫色のリボンタイ、膝上程度の長さしか無く尻のところが少し突き出ている様に見えるほどぴっちりとした紫のタイトスカート、黒いガーターベルトに薄手の黒のガーターストッキングに紫のハイヒール、面影があるのは同じ紫の高いシルクハットぐらいしか無い。完全にエロ漫画に影響された、下品な女の姿であった。
「これなら…フォリーも……」
気付けば自分の方が求めていることを見て見ぬふりをしながら、マッハは己の姿を確かめる。普段は全くやっていない化粧もこの日脣だけはほんのり桜色に色付く程度に口紅を塗っていた。また、服の下は当たり前かのように下着を着ていない、そのため僅かに服が濡れようものならばマッハの大きめのパフィーニップルは見えてしまう程で、股間はその上にアナルにエネマグラ、クリトリスにはローター、そして秘部にはバイブを突っ込んでいた。設定はなるべく微弱な振動程度にしていたが、スイッチはポケットに入れておりいつでも強弱の設定が可能である。つまり、いつでもどこでも彼女は絶頂の準備が出来ていた。
(……フォリーを満足させることができたらいいだけ…だから……)
マッハは悉く己の慾望から逃げ、全てフォリーの為であると理由付ける。それが例え、己のマゾヒズムで歪んだ肉慾や願望であるとしても。
着替え終わりその異常な服装が正常であることを確認したマッハは居住区から出て、オフィスに入る。ブラで固定されていない大き過ぎる胸をたぷたぷと揺らしながら、いつも通り職務を遂行しようとするが…当たり前だが玩具を入れて起動させ、布一枚擦れるだけで勃起する感度の高過ぎる乳首をブラというプロテクター無しにシャツに重ね合わせた時点で、もうマッハは仕事をする気なんて殆ど無かった。ただフォリーを誘惑させ、満足させ、この欲求不満を晴らすことが出来れば、また、フォリーが誰かを襲うかもしれないという可能性を排除する事が出来ればそれで良かったのだ。この内一番大きく割合を占めているのは、マッハ自身の欲求不満であったが。
「ん……ふぅ、今日は…エレベーターが来るのが遅い…その時に上の方に行けば…」
僅かな動きで布地と擦れる乳首は既にシャツから透けている程に隆起している。一応フォリーが来るまでは仕事をできるだけしようと、パソコンを起動する。キーボードを叩きながら、さっさと書類に書き込むマッハは、ふと握っていたペンに目が入った。紫の万年筆は、かなり前から使っていたものながら傷はあまり無く、その外装は光沢がある。そして、キャップの先端には金で出来た天冠がきらきらと輝いていた。
「…………ちょっとくらい…」
マッハはキャップの先端を、乳輪に押し付ける。陥没している乳首を押し出す為に、ぐにぐにとその周りを押し込んだ。元々ふっくらとしていた乳輪は押し込まれることにより段々乳首の方が出てくる。
「んっ…早くっ…っ…♡」
暫くするとぷりんっと、勃起して固くなった乳首が出てくる。もう片方の乳首も同じように少し強めに押し出すと、勃起した大きな乳首がシャツの中でピンッと突き出てた。乳首の部分が強調され、誰から見ても勃起しているとわかる状態、更にいつエレベーターが来るのかも分からなかったが、マッハは気にせずペンで乳首を弄り始めた。天冠を押し付け、装飾部分で撫でみるとマッハは脚を痙攣させ、もう片方を指で摘み、爪でカリカリと引っ掻く。
「んッ…んぅッフゥーッ…♡フゥッフゥー……♡」
股間に付けた玩具達の微弱ながら確実に快楽を蓄積し続ける振動とやめられない乳首弄り、それに加えてもしフォリー以外の誰かに見られたら確実に終わる様な状況でそんな下品なことをするという背徳感がマッハのデスクチェアを愛液で汚し濡らした。
「…フォリーッ…あッ…んひッ…♡」
またフォリーのことを想いながら、マッハは己を慰める。恋する乙女と主人を待つ欲求不満の性奴隷を掛け合わせた様な異常な姿。マッハはきっとフォリーに、恋をしてしまっている。だがそれを封じ込め、性的感情ばかり先行した有様がこれである。相手にされなくなった途端自分から求め始め、けれども言葉には出来ず1人で慰めるしかなくなった様だ。
座ったまま脚を大きく開き腰をカクカクと震わせていると、ふとマッハは気配を感じ、手を止めた。
「……いるんだろ、フォリー」
「うわ、こんな状態でも分かるんだ」
背後に現れていたフォリーはデスクの前まで歩くと、真正面からマッハの痴女の様な姿を舐め回すように見る。どう見ても昨日渡したエロ漫画に影響されてしまっている服装に、フォリーは思わずクスクスと笑いながらも内心興奮はしていた。
「アンタにしては随分破廉恥な格好ね、誘ってるつもり?」
「………ま、まぁ」
誘っているつもりであり、これならばフォリーもシてくれるであろうとすら思っているマッハ。汗ばんで少し濡れ透けてきたシャツのボタンを一つ開けて、目を細めて誘うような顔をしてみるが、フォリーは一蹴するように嘲る。
「下のお口は大分お利口さんになったのに、上はまだまだだめね。言わなきゃ伝わらないって事知らないの?フフフ…」
「え、な、何が」
「あらやだ、こんな玩具まで持ってきてたの?なんてド変態…フハハ…」
リモコンは気付けばフォリーの掌にあり、マッハはそこでこの自分の体内に入っている玩具の操作権は今フォリーにあることにやっと気付いた。
「ちょっと…ッ…お゛ッ!?♡」
中の振動が少し激しくなり、マッハの身体ががくんっと跳ね上がる。フォリーはそれを面白がって見ながらも焦がれるような声で囁く。
「欲しいなら言いなよ、ほら、アタシにどうされたいわけ?」
「う゛ぅん゛ッ♡…いッ言えな…お゛ほぉッ♡」
口を抑えようとするが声は漏れ、愛液は止まる事なく垂れ流され続ける。マッハはそんな我慢し難い状況ですら言うことが出来ずにいる。長年のプライドと世間からの抑圧が、強く高貴で純潔なるカロライナ・マッハを作り上げ、呪いの様にその身体に影の様に付き纏う。マッハは決して自分から求める様なことはしたくなかった。自分の言葉で懇願するなんてことが出来なかった。
中で唸るローターの振動ばかり気を取られ、デスクにしがみついて快楽を享受しているマッハの姿を棒立ちになって見ているフォリー。フォリー自身も限界は近い、自ら始めたことながら、あまりにも折れず媚びず耐えているマッハのせいで、溜まりに溜まった性欲が暴走しそうである。フォリーはその性質上姿を自由に変えることが出来、最近は姿を変えた状態で実体化を行う練習もしていたが、ふたなり状態で実体化を練習し、その度にマッハで抜いていたせいでそうじゃ無い状態でも玉に発射されていない濃いザーメンがパンパンに溜まってグツグツと煮え滾っている様な感覚がして仕方ない。今でも、止まらず与えられる振動による快感に震え顔を紅潮させ、淫らな姿を曝け出しているマッハを見ているだけでまだ出していないモノが反り勃つ感覚がしていた。
「…言えば?我慢できないんでしょ?」
「ん゛ぅぅッいッいや゛ぁッ…♡言わな…お゛ぉ♡」
「……強がるんじゃ無いわよ、ほら、さっさと…」
苛立ちながらも、フォリーは襟元からあの媚薬の小瓶を取り出し迫る。媚薬を盛ってでも強制的に言わせようと企んでいた。掌に収まるどころか持っているとミニチュアに見えてしまう様なサイズの小瓶のコルクを爪先で外し、デスクチェアごと後退りするマッハの舌を掴むと中の媚薬をちょっとだけ口内に垂らす…時だった。
「ひッらッらめッ…お゛♡」
快楽の波に思わずマッハの身体がびくつき、それに釣られてフォリーは手を滑らせた。
「あ゛」
大きな掌から滑り落ちた小瓶の中身が、殆どマッハの口内に零れ落ち、ついでに開いていた胸元の皮膚へ直にかけられてしまい、小瓶は空っぽとなって床に転がり落ちた。フォリーはその一瞬、全ての眼を固くギュッと閉じたが、恐る恐る眼を開けると、マッハが全身から汗を流し、酷く紅くなって、そして…
ドサッ…………しゅぃ…しょわわ……♡
「………原液はダメってそういう……」
マッハは床へ倒れ込み、そのまま失禁した。逆上せた時の様な真っ赤な顔でその身体は力が抜けきっており、唾液含めて垂れ流し状態だ。フォリーは頭を抱えたが、マッハがすぐには起きてこない事を悟るとその身体を抱え上げ、なんとか居住区の仮眠室へ運び込んだ。
「はぁ…重過ぎでしょコイツ…」
人のことを言えないフォリーがそうぼやきながらも小さい仮眠用ベッドに寝かせてやる。ミスト状態のものを吸った時でさえ三日三晩抱いてやっと抜けきったというのに、原液をそのまま摂取したマッハの身体は酷く火照っていて、触るだけで火傷してしまいそうだ。
「……いっそのこと」
そのまま抱いてやろうかと思い、手を伸ばすが、なんとなくする気が起きず手を下ろした。
「どうしようかしらねぇ…」
悩みながら仮眠室を見ていると、小型冷蔵庫があるのを見つけたフォリーはその扉を開く。中には冷やされた水のペットボトルがあり、それを手に取るとフォリーはマッハの口に些か乱暴な手付きで水を注いだ。
「…ッゲホッゲホ…ッ…ん…な、何…?」
ボトル半分程度の水を口に注いだところで、マッハは咽せて起き上がる。口から溢れた水を手で拭きながら身体を起こしたが、まだ体は火照っていた。
「大丈夫?」
「……そんなわけ無いだろう」
不機嫌そうなマッハに対して、フォリーも流石に揶揄うことは出来なかった。一応完全に飲み込んではいなかったのか口から溢れた分でなんとか抜けたが、それでも身体にはある程度浸透している為、マッハは人間には無い筈の発情期が来たかのように息を荒くしたままであった。
「…とりあえず着替えたら?」
「分かっている…あぁ…クソ……びちょびちょ…」
悪態をつきながらもバスルームに行くマッハ、その間にフォリーはオフィスの方を掃除した。床にぶち撒けられたマッハのおしっこにすら、フォリーはほんのりムラつくが、布巾でさっさと拭いてやった。椅子の方に垂れていた愛液も含めて。
居住区に戻ると、マッハはシャワーを浴びた後のホカホカとした身体を紫のバスローブ一枚掛けただけの状態で冷たいコーヒーを飲んでいた。バスローブは前を閉めておらず、マッハの縦に長い豊かな乳房と小さなほくろがちらりと見えており、股間に関してはガーターリングでローターを固定しているのが見えていた。
「…調子はどう?」
「………」
「聞いてる?」
「…あ、あぁ…平気だ。かなり落ち着いた…からな」
そう言いながらマッハはソファに座ると、バスローブをさらにはだけさせ、ちらりとフォリーの方を見る。
「…なぁ」
「…しないのか?人をこんな…火照らせておいて……」
誘う様な目つきと、マッハなりの要求をしているが、先程の様子を見たのもあってフォリーはなんとなく手を出したいと思えなくなっていた。
「……今日は気が向かないからいいわ、それよりももうちょいしたらエレベーター来るんじゃ無いの?着替えたらどうよ」
「……………」
「いや、あの、そのさぁ…格好あんなのするくらいならもっと…」
「…分かった」
マッハはそうポツリと言うと、部屋に戻り着替えてしまった。マッハの変容や態度の変化等に、フォリーは満足しそうではあったが、やはり、言葉というものが足りなかった。素直になれず、厳格な言葉遣い、或いはフォリーに対しては罵詈雑言ばかり言えるその悪い上の口が気に入らなかった。…内心、フォリーは求められる事を求めているのかもしれない。己が求めてばかりだからこそ、相手から望まれ、求められることを欲しているのだと、解っていた。だからこそ何も言わずマッハを試したり、差し入れたエロ漫画で何かしら変わってくれる事を願っていた。
着替え終えたマッハは、今度は紫の長いワイシャツに膝丈の黒いスリット入りタイトスカート、そして透け感のある30デニールのタイツと革靴のコーディネートをしていた。スリットは位置的にガーターリングで留めてあるローターのコントローラーは見えず、ただマッハのむっちりとした太い御御足だけがぎっちりと詰まって見えていた。
「もう大丈夫なの?」
「………大丈夫じゃなければいけないからな」
そう真顔で言うマッハだったがフォリーはタイツに垂れてきた愛液のシミがついていたことに、既に気付いていた。フォリーは溜息を吐きながらも、なんとなく居た堪れなくなり、結局霧となり帰ってしまった。
オフィスに戻った後のマッハは、当然ながら仕事なんてまともに身に入らず、更にフォリーの目も無くなったことでエレベーターが来るまでずっと自慰ばかりしていた。
ぐちゅ♡ぎゃるっぎゅぅっ♡♡
「お゛おッ♡来てる来てるッ♡♡」
デスクに置かれていたバイブのコントローラを使い振動や動きのパターンを弄りながら、片手で乳首を引っ掻き捏ねくり回す。媚薬が残留しているとはいえあまりにもはしたない姿のままマッハは快楽に耽った。
とは言え、未だフォリーとも行為をして貰えずまだまだ欲求不満のマッハはその晩、再び逢瀬部屋にて、ディルドで自慰をしていた。今度はヴァギナに一回り大きなモノを入れ、何冊かのエロ漫画を読み漁っている。
「ん゛ひッ♡お゛ッおまんこきもちッい゛ぃッ♡」
紙面上に書かれる淫語の羅列、それをマッハは読み込み、学び、覚えてしまう。重要な単語と数列ばかりが並んでいたマッハの脳内は今バカみたいな意味しか持ち合わせていない下品で卑猥な単語で埋め尽くされている。
ぐぼちゅっ♡ぬっぷずぷぅっ♡
「いぐッいぐッい゛ぃッ♡お゛ぉッん゛ぅッ♡」
何度も果てては繰り返し慰めているが、それでもマッハは物足りなく、治らない。媚薬だけのせいではなく、心の底から求めていた。
「おちんちん…ほしいッ…ぐりぐりされたいッ…♡」
エロ漫画のセリフを読み上げる様にボソボソ言うが、それこそマッハの本心かもしれない。巨大な体格と手とグロテスクな凶器に喰われ犯されるあの感覚を、マッハは求めていた。
「おなかきゅんきゅんするッ♡だめなのにッ…欲しがってるッ♡」
愛液でドロドロの下半身を晒し出し、逢瀬部屋のベッドをぐちゃぐちゃに濡らし汚す。今なら、欲しがることも、ねだることもできたかもしれない。今の完全に慾望に狂わされている様子ならば……
しかし、フォリーはこの後何日も来なかった。何日も、何日も。
フォリーが会いに来なくなってから早1週間と4日が経った。行為をしなくなってからは1ヶ月以上経ってしまった。マッハは毎日、フォリーが来る事を期待して破廉恥な服装にノーパンノーブラで業務を遂行していた。丈の短いスカートにぴっちりとしたワイシャツ、それにガーターソックスやタイツを履いて胸元を大きくはだけさせていた。勿論その間に多くのプレイヤー達に見られており、邪な目で見られたり、ヒソヒソと噂をされたり、スマホで撮られたりなどもされたが、マッハは段々その感覚が心地良くなり、背徳感からより濡れてしまった。
マッハの格好が段々より過激なものになる中、この日ピルビーは久々にマッハの元へ遊びに行っていた。マッハは黒のキャミソールに白い半袖ブラウスを胸を大きく開けたまま重ね着し、かなりミニ丈でギリギリ股間が隠れる長さの紫のスリット入りタイトスカート、ガーターベルトに網タイツというなんとも危ない格好をしていた。勿論ノーパンノーブラで、一歩間違えれば即中身が見えてしまう。しかしピルビーはそこまでマッハのその大胆な格好を気にしておらず、いつも通り接していたが、やはりそれ以外の変化には薄ら気付いていた。
「…ねぇ、マッハ」
リビングにて、ソファーに座って共にドーナツを食べていた時に、ピルビーはひっそりと訊く。
「あぁ、なんだいピルビー、飲み物足りなくなったか?」
「ううん、あのさ……もしかしてだけど、恋してるの?」
突然のその言葉に、マッハは思わず飲んでいたレモネードを吹き出し咽せる。
「ゲッホッゲホッ…!な、なんだ急に…そ、そんなこと言って…」
「ご、ごめんね。えっと、なんていうか、最近のマッハなんだかおしゃれだし、化粧もずっとしてなかったのに始めたし……」
最近では毎日口紅やチークをするようになり、服装も毎日全く同じものから変わったマッハに対して、ピルビーも流石に変化を感じ取っていた。その変化を、恋による変化であるとピルビーは感じた。しかしマッハはどうしても、否定してしまう。
「そ、そんなものではない…ただ…もう少し服装に気を遣おうかと…」
「でもよく顔赤くしたり、考え込んで気付かなかったりとか…最近のマッハずっとそんな感じだよ?やっぱり、恋してるんじゃないの?」
「そんなわけない、絶対……」
身体と快楽、求めているのはただそれだけだと思いながらも、今のマッハは、フォリーに対して愛欲の様なものさえ感じていた。愛おしくはないが、妙に心惹かれてしまい、その蠱惑的な赤い目と惑わせてくる雰囲気に魅了されてしまっていた。勿論本能は彼女が敵である事、危険である事を必死に警告してはいたが、欲求不満で卑猥な言葉と妄想でいっぱいの彼女の脳内には伝わらず、残っていたのはフォリーのあの大きな手と巨根で自分をめちゃくちゃに犯してほしいという肉慾のみであった。その上で、恋心よりも濃厚にして拗れた、愛がある。彼女は知らぬ間にあの怪物を愛していた。変わり果てたその姿を、寧ろ、もうその姿から戻れなくなっていた。思い出というものは静かに穢れてゆく。
「…マッハ」
「何だい…ピルビー」
少し不安げに何かを問い掛けようとするピルビーに、マッハは目線を合わせた。
「…もしマッハが恋人できても、ぼくらはともだ─」
マッハがハッとなって、ソファから立ち上がり、居住区から出ようとする。
「ど、どこ行くの?」
「本部の方から電話が来る時間帯だ…確かもうすぐ…」
「そ、そう、ぼくまってるね?」
心配しているピルビーをよそに、マッハは急いで別の戸口から階段を登り二階の方へ行き、木箱に隠していた通信機を手に取る。丁度それに合わせたかの様に通信機は電波を受信し、通信開始した。
「こちらCM…」
マッハが名乗りを入れた瞬間、怒号が入る。
「マッハ!どういうことか説明しろ!」
現在の雇用主からの、煩くの太い声が鼓膜を破きそうになったが、マッハはなるべく冷静になって対応する。
「な、なんのことで…」
「この前お前の様子を確認する為、本部からお前のオフィスへ調査員を派遣したんだ…内緒でバレない様にな…そしたらそいつがお前のこと淫らで痴女みたいな格好してたって言ってきやがって……最初はそんなわけ無いと思っていたが写真を見たらガッツリお前のす、すけべな姿写っていたんだ!どういうことか説明できるか!?」
気付かぬ間に入られていた調査員というものにマッハは戸惑うが、思い出すと4日前に来たプレイヤー達の内、金髪の可愛らしい女の子ではあったがやけに距離感が近く何を考えているのかわからないプレイヤーがおり、何かをボソボソ呟きながら息が掛かる距離まで近付かれていた。まずその時は少数のプレイヤー達がわざわざフロアチケットを使ってまでオフィスに来たという、なんとも不自然な状況であったが…それにマッハはすぐに気付けなかった。思い出した途端マッハは額に手を当てて蹲み込んでしまった。
「そもそも最近送られた資料が一部おかしかったんだ…それで派遣したらこれだ、お前何だ?何を考えていやがる?」
「そ、その…その訳は…」
マッハは震える声で訳を話そうとしたが、それよりも先に雇用主は言葉を続けた。
「警告だ、お前がもし誰かに恋をしていたとしても、お前は既に実験体として選ばれた。将来的により多くの強化を行う手術をすることになっている。その中には内臓の置換も予定されている…生殖器は将来お前の血統を絶やさない為の人工繁殖器に用いて、お前自身は代替の、機能としては全く意味のないものに置換するつもりだ。お前はその継承の実験と強化手術の同意書にサインをした。取り消すことは出来ない、今からでも諦めろ。お前にはまともな恋なんて不可能だ」
「………………」
「それにまずこっちの評判に傷が付くんだ、大人しくまともな格好をしてまともに業務に集中しろ」
「…は、はい」
「あぁそうそう……」
雇用主は、低音の声でぼそりと呟く。
「ドリームパラサイトを殺せ、アイツの実体化を一瞬程度ではあるが確認した。もしお前もアイツの実体化を一瞬でも確認すれば、その時に叩き潰し殺せ」
その言葉を最後に、強制的に通信は切断されブチッという通信終了音が鳴った。
マッハは落胆し、崩れる。床にぺたりと座り込み、そして、涙が流れた。姉や弟が死んだ時ですらあまり涙を流さなかったマッハが大粒の涙を流している。
「…うぅ…うぅぅぅっ…………」
マッハの声は震え、息は過呼吸の様に悪い意味で荒くなり、拳は強く握られた。
「どうして…っ…どうしてなのっ…ひっ…ゔぅ……」
マッハは全てに絶望した。愛も、恋も、快楽も、その全てを知ったこと、その悦びを知ったこと、知った自分を、知らなかった時に合意書にサインをした自分に。
「あ゛ぁぁぁぁっ……!ゔぅッ…ひっく…どうしてっどうして…なの……っ!」
知らなければ幸福であったのか、知らなくとも何れ絶望していたのかは分からない。自分が何故泣いているのかも分かっていない。マッハは何もかも悲しかった。自分の淫らな姿を見られたことも、フォリーを必然的に殺さねばならなくなったことも、将来的に永遠にあの快楽を感じられなくなることも、あの荒くも優しさのある手付きで抱かれる事もなくなることも、全てが辛く、悲しくて仕方なかった。
涙で何も見えなくなり、全てが終わりであると感じた頃だった。
「おーい、起きなよ」
その声に反応し急いで顔を上げると、彼女が居た。
「しけたツラしてるんじゃあないわ、いつもの威勢の良さはどうしたのかしら」
飄々とした態度と嘲り混じりの笑顔、そして恐らく全ての話を聞いていたであろうはずなのに全く怖気付く事なく、絶対に自分を殺すことなんてできないと思っているその顔に、マッハは全てを抑えられなくなり、指を絡ませ手を組んだ。
「お願い…」
「あ、やるんだったらかわいくおねだりしてよね?出来るでしょ?アンタなら」
「……えぇ、お願いします…」
舌を出して、目を細め、性を知った顔で、昨日も一晩中読んでいたエロ漫画の品々のセリフで学んだように懇願する。
「貴方のおちんちんをください…フォリー…お願いッ…もうッ耐えられないの!…です…だから…どうかこの裏切り者の変態ドマゾ雌豚に…おちんちんいっぱい挿れて壊して…ください…勿論いっぱいしゃぶり…ますし…お願いッ…私を…壊して…ッ」
ボロボロと涙を溢し、媚びるようにフォリーの方へ近付いた。それも、脚に擦り寄りながら。
「……いいのー?アタシすっごく溜まってて、マジに壊しちゃうかもしれないけど?」
「お願いッ!犯して…全部めちゃくちゃにブチ犯して…ッ」
心の底から本気でそう願うマッハに、フォリーは一瞬黙り込んだ。目の前にいるのはいつもの強くてしぶとくて口うるさい、でも可愛いところのあるマッハの、本当の姿だ。彼女は今、そのか弱く、脆い一面を曝け出してまで願ったのだ。
「フフ…ハハハ……まぁ、合格でいいわ、しましょ…久々にたっぷりとねぇ?」
フォリーは艶やかな笑みを浮かべながら、マッハをお姫様抱っこするとそのまま地上の方へ降りて居住区に入り、ピルビーを気絶させ夢を見させてから、逢瀬部屋に向かった。
逢瀬部屋に入ると、帽子を取ってからマッハをベッドに丁寧に仰向けにさせ、ハイヒールを取り、上下共に脱がせる。マッハに残ったのは、ガーターベルトと身体に差し込まれた玩具のみだった。
「大好きな友達に会うときにまでこんなの付けてたんだ…ド変態、ほんっとうに最低で情けなくて…可愛いわ」
「…えぇ、私、最低よ、だから…好きな様にして…♡」
恍惚とした貌で、マッハは舌を出すと艶めかしく動かしながら、股を開いた。
「ふーん…じゃあ、まずはしゃぶってくれる?」
「…勿論♡」
涙を拭ったその顔で、マッハは起き上がり、口を開く。それに対してフォリーがベッドの上で膝立ちになってズボンを下ろすと、ばるんっとその反り勃ったグロテスクな器官が顕になった。肌と同じ様に真っ黒な色に、鬼頭からかけて先端は赤くなっており、血管がバキバキに浮き尖っている様にも見える、皮がズル剥けになった長く極太のペニス。かなり大きく瑞々しい睾丸を垂れ下げている其れは人間の男ですらあまり見ないその肉で出来た凶器は好きな様に実体化可能なフォリーだからこそ出来たモノだろう。マッハはその大きさと、1ヶ月ぶりに嗅ぐあの生臭い臭いに興奮しながら鬼頭から舐め始める。
「ちゅッ…ぺろ…れろ…ッ♡」
濃厚な淫臭と、口に含むのも難しそうな大きさの先端を舐めて、時折キスをしながら舐めていると、今度は先端を口にしてしゃぶり始める。
じゅぷっ♡じゅぽっじゅる♡
穢い水音を立て、少しずつ口元に含めていくが、半分も入らない。それでもマッハは己の喉元にまで突っ込み、なんとか根元まで飲み込むと、口を少し窄めて目を細めながらしゃぶり尽くす。
「んっ…はぁー…出るわ…ッ」
じゅるるるるぅっ♡♡じゅぅっじゅぶぶぶっ♡♡
激しくしゃぶり、喉の襞まで使っていると、フォリーはそのままマッハの頭を掴んだかと思うと、喉元へ射精し、そのまま胃へ流し込んだ。
ごくっごくっ♡ごぷっ♡
フォリーはかなり溜まっていたのもあるが、一回の射精だけでかなりの量を出す。そのせいかマッハのお腹が薄ら膨らんだ。
「ん…げぷっ…♡」
「美味しかった?」
「うん…♡なんていうか…甘い味が…♡」
「へぇ…なんでだよ…」
自分の精液の味に対する感想に若干引きながらも、フォリーは喉元から引き摺り出したペニスをまたマッハの眼前に持っていく。
「…アタシさぁ、やってみたかったことあるんだけどさ…へへ、アンタもう乳首ガッチガチに勃ってて陥没じゃなくなってるわよね?」
フォリーがそう言うマッハの乳首は、毎日の自慰により常にぷっくりと勃つ大きなパフィーニップルとなっていた。少し布に擦れるだけで意識が飛んでしまいそうな程の快感に弱い雑魚乳首を、マッハは長乳を寄せて持ち上げてより見せつける。
「好きな様にして…ッ♡」
「ホントにいい?」
「もう…お願い…ッおまんこもおっぱいも疼いて…おかしくなっちゃうッ…♡」
「へぇ…じゃあやるわ」
フォリーはマッハの片方の胸を掴むと、その大きな乳首にペニスを宛てがい、無理矢理挿入した。
めりめりめりぃっ♡
「お゛あ゛ッ!?!?♡♡♡」
マッハの太い乳首は少なくともフォリーのペニスの先端部分はなんとか挿入出来た。マッハは姿こそ人とほぼ同じだが元より完全に人間と同じ種族では無く、強化された特殊な人類の末裔だ。繁殖と産んだ子供の早急な子供の発育の為に特殊な作りとなった乳房は通常細かな乳管が枝分かれになっている人間のものとは違い、一本一本が太い乳管から大量の母乳が出る仕組みとなっている。更に乳房の発育がずば抜けて良いマッハの乳房は…先端くらいなら挿入可能となっていた。
ぐじゅるっ♡ぐぼっ♡ぐばっ♡
「あ゛あッ♡何コレッこわ゛れ゛る゛ッ!?!?♡♡」
「アンタが壊して欲しいって言ったでしょッ…♡ほらほらッ…♡」
フォリーがもう片方の乳首も掴みながら親指を挿れると、マッハは乳首の中を押し広げられ、熱く固い其れで犯されることによる痺れるような快感に気が遠くなりそうになりながら自ら乳房を揉み込んで更に快楽を得ていた。
「乳首おまんこにされちゃう゛ッ♡♡イグッイグぅッ♡乳首まんこでイッぢゃう゛ぅッ♡♡♡」
「イッちまえッ♡この雑魚乳首悪い子めッ♡♡」
ぐぷにゅっ♡♡ぐぷぷぅ♡♡
マッハは叫ぶ様に喘ぎ鳴きながら頭を後ろに反らし、下品にも舌を出したまま絶頂した。フォリーもまたマッハの片乳を掴み乳腺の奥深くまでザーメンを注ぎ込んだ。引き抜くと少し黄ばんでネバネバとした白濁が大量に溢れた。指も引き抜くとポッカリと穴が開き、乳首の奥深くまでが見える。
「おっぱい壊れちゃった…ッ♡」
空いた穴に指を突っ込み弄りながらマッハはそう呟く。けれども彼女はこれだけでは壊れ足りない。より、破壊を、全てをめちゃくちゃにされることを望んでしまっている。
「……もっと、めちゃくちゃにされたい?」
フォリーが耳元でそう囁くと、マッハは媚びる様な甘い声で願う。
「めちゃくちゃにされたいッ♡壊されたいッ♡お願い…しますッ♡玩具でたっぷりいじめてえっちになったおまんこと…お尻の方…アナルもたくさんいじめてッください…♡ずっときゅんきゅんしてッオナニーしても治んないんですッ♡」
「お、おう…まぁ…欲しいならもっとえっちに媚びて欲しいわねぇ?」
フォリーが若干困惑気味に煽ると、マッハは我慢ならない状態で玩具を引き抜くと、仰向けのM字開脚姿になり、両手でその秘部をくぱぁ♡と開帳させる。
「お願いフォリー…ッ♡そのおっきぃおちんちん挿れてッ♡♡おまんこもお尻の穴もフォリーのおっきいのでもうオナニーじゃ満足出来ないくらいッ壊してッ♡クソ雑魚マゾまんこにいっぱいザーメンびゅーびゅーって♡お願いッ♡♡♡」
目の前の現実から逃げる為、幸福な悪夢へ堕ちる為にマッハは甘い嬌声を上げ、下品な言葉も使って命乞いかの様に必死に求めて乞う。その姿にフォリーは一瞬、何かが揺らいだが、巨大なふたなりペニスより反応し硬度と太さを増す。フォリー自身も1ヶ月のセックス我慢に耐えていただけあり、抑えられなくなっていたのだ。
「あぁ…可愛いマゾ雌豚のマッハ…貴方はとっても良い子で…とっても悪い子♡めちゃくちゃに壊してやるわ」
そう言いフォリーはマッハに覆い被さるとその蜜壺を一気に突き破る様に挿入した。
ぬぷぅっ♡ぐにゅっごりゅっ♡♡
「お゛お゛お゛お゛ぉッ♡♡あ゛ッつッ♡♡」
1ヶ月ぶりの生のペニスの熱と固さに、マッハの蜜壺は悦び膣肉でギッチギチに締め付け、肉襞は擦られる度にマッハの脳を焼き尽くしてしまう程の快楽信号を送った。更に根元まで挿れられ、鬼頭が子宮口にぴったりと着き押し込まれるとマッハの腰は飛び上がり、挿入されるだけで絶頂してしまった。
「ハハハ…動かしてもないのにもうイッちゃったの?本当にこっちはよわよわ♡情け無い♡それにぎっちぎちに吸い付いちゃって♡おらッ♡」
「ほお゛お゛おぉッ♡♡お゛あ゛ッ♡お゛まんこし゛ぬ゛ッ♡♡お゛お゛ッ♡ん゛ぅッ♡♡」
ばちゅんっ♡ぶちゅっ♡ぐぽっずぷっ♡♡
ゴリゴリと奥深くへ押し込まれ、蜜壺のその中身全てを味わい尽くそうとする程に、マッハは中でフォリーの其れをキツく締め上げ何度も絶頂する。脳内がチカチカとして、まともに判断が出来なくなり、ただ快楽とフォリーとペニスのことしか頭に入らなくなる様は酷く無様であった。スーパーコンピュータ並みの頭脳に変えられる筈の女の脳は、そこらの娼婦と大差無い程にピンク色と赤色で染め上げられてしまい、快楽信号によりオーバーヒートしてしまっていた。
「お゛まんこきも゛ちぃッ♡♡生お゛ちんちん入ってきもぢぃよお゛ッほお゛ぉッ♡♡」
「へへ…ほらッもっと締め付けろッ♡」
「ん゛ぅ!?♡♡んう゛ぅ〜う゛ぅ〜ッ♡♡♡」
仮面を外したフォリーによる唐突な接吻で口を塞がれ、長い舌を喉奥にまで入れられてマッハは息が出来なくなり脚をジタバタとさせる。酸欠状態になったせいか中の締まりは良くなり、フォリーは膣圧で潰れてしまいそうな程に締め付けられた勢いでマッハの子宮に大量の濃厚ザーメンを注ぎ込んだ。
「んう゛う゛ぅッ♡♡んぐぅッ♡」
ぶびゅるるる〜っ♡♡ごぼぽっ♡ぼこぉっ♡♡
大量のザーメンはマッハの腹をぽっこりと膨らませ、子宮から溢れかえる。しかしなるべく蓋をする様に子宮口に亀頭をくっつけたまま暫く挿入状態にして脣を話した。
ねとぉ〜っ♡♡
「っはぁーッ♡はぁーッ♡フゥ…♡おなか…♡あかちゃんべやフォリーのザーメンでいっぱい♡お腹重いよぉ♡」
「アタシも…久々にたくさん出したわ…でも…♡」
ゆっくりと引き抜くと、ごぽぉっと溢れ返る精液。フォリーはそれを見ながらマッハをうつ伏せにすると、ペニスにたっぷりの潤滑剤をかけてからぷっくりとしたマッハの縦割れアナルを鬼頭で撫で回す。
「アハハ、出す為の穴なのに…おまんこみたい♡」
「おしりおまんこ…♡こっちにも…挿れて♡もうダメなのッ♡ガバガバなっちゃったのぉ♡早く挿れてッお願いッ♡♡」
寂しそうに、切なさが抑えられなさそうに懇願するマッハは腰を揺らし、だらしない弛んだ肉の付いた尻をフリフリと振る。フォリーはその無様な姿を見てより自分の中で揺らぐ何かと、燃え上がる愛欲に笑みを溢し、それを見られない様に仮面を付け直すと挿入する。
ぐぶぅっ♡ぐににぃっ♡♡♡
「入ったッ♡♡あ゛ぁッ♡♡」
十分に拡張されたアナルはフォリーのモノをすんなりと呑み込み、S字結腸まで辿り着きそうだ。フォリーはそのまま腰を激しく打ち付け始める。
ぱんっ♡ぱんっ♡ぐにゅっ♡ぐにぃっ♡
「お゛ほッ♡ん゛ほお゛ぉッ♡♡きもちいッ♡すきッ♡フォリーすきッ♡♡♡」
腰を打ちつける度に揺れて振動が伝わる尻肉をふるふると揺らしながら譫言を叫ぶマッハはもはやぐちゃぐちゃに掻き混ぜられた脳で単純なことしか思考出来なくなっていた。大好きなフォリーと、快楽。ただそれだけを受け取っていた。更にうつ伏せになっているせいでシーツにデカクリが擦れてしまい、それがマッハに快楽の追い打ちをかけている。
「…嬉しいこと言ってくれるじゃない…ねぇ?アタシだけのか弱い可愛いマッハ…♡」
べちんっ、ぱんっとフォリーはマッハの尻肉を叩きながらS字結腸を潰す勢いで責める。マッハの白くて綺麗な豊かな尻肉は赤く腫れ、マッハは二重に打ち付けられる度に叫び喘いだ。
「あ゛あ゛ッん゛ぅッ♡♡きもちいッ♡きもちい゛い゛よぉッ♡♡」
自ら乳首を捏ねくり回り弄り、シーツにデカクリを擦り付け床オナ紛いのことをしながらアナルを犯されるマッハは、目をひん剥き、よがり狂う。至福の快楽を只々享受していた。一方でフォリーも段々耐えられなくなり、マッハの腰を掴み襞に擦り付け、肉を貪ると、その時が来た。
「…出すわよ」
どびゅるるる♡♡ごぷぷぅ♡
「お゛お゛ぉッ♡ほお゛お゛ぉイグッ♡♡♡」
フォリーの玉に溜まっていたザーメンがたっぷりとマッハのアナルにも注がれ、腹はとうとう妊婦並みに膨れ上がり、そのままマッハは海老反りになって目を上向かせ深い絶頂をした。
ぐぶっ…♡と引き抜けば、両の穴からザーメンを垂れ流し、肩で息をする極上の雌豚がフォリーの眼の前にいた。フォリーは其れの側に寄り添い、そっとこちら側へ向かせると、避妊薬を飲ませた。備え付けていた水で流し込むとマッハは素直に飲み込んでくれた。フォリーは正直、目の前のマッハが、完全に壊れ狂ってしまったかと思った。己の手で犯し壊し尽くした乙女の末路が、其処に居ると感じ、同時に、“まだ”早いと思い一応避妊薬を飲ませておいた。それも完全に信用できるものではなかったが。御呪いとして飲ませておいたのだった。
「……マッハ」
「…なぁに…♡」
「…アタシのこと、本気で好きなの?」
半ば冗談、半ば本気でそう訊くと、マッハは即答する。「大好きだよ」
泣きそうな、震えそうな声で発されたそれが、余韻による其の場凌ぎのものなのか、或いは、マッハが深層意識下に封印し続けていた本心なのか、どちらか判別出来なかったが、フォリーはそれだけでも、心の中がふと、愛に満たされ、ずっと望んでいた物を手に入れられた気がした。
「……アタシも、愛しているわよ…カロライナ」
フォリーは微笑みながらそっと、マッハの頬に接吻をすると、シーツをその裸の身体に掛けて、優しく寝かし付けた。普段冬眠機を使用しなければ眠られないマッハは、何故か、いや、確実にフォリーの影響により、そのまま深い柔らかな眠りに着いた。マッハの柔らかな寝息だけが聞こえる。
「…すぐ、戻ってくるから」
ズボンを履き直したフォリーは、マッハの髪を撫でた後、実体化を解除し、霧となって何処かへ向かった。
無機質ながら規模の大きいオフィスは、マッハの雇用主である男性1人しか残っていなかった。大きな背丈の身体をコートに包んだ姿で、デスクに座ってパソコンを見ている。モニターには、調査員に撮ってもらったマッハの破廉恥な姿の写真が写っていた。
「…あのデカ女も、中々良い乳してるよなぁ、へへ…身体切っちまうのが惜しいが…後で使い放題になるならいいか…」
悪い笑みを浮かべながらズボンのチャックを下げようとしている。モニターの光がふわりと照らされている書類にはマッハの手術内容に関するものがあった。全ての内臓の置換、脳の改造による知能強化、四肢の切断、破壊能力の向上、王であった曽祖父の力の継承…大半のそれらは本来マッハの姉であるローラ、弟のクレイトが受ける手術であった。しかし予想外にも早くに亡くなった結果、その全てがマッハに押しつけられようとしている。姉弟其々の能力をマッハ1人の身体に全て組み込もうとしていたのだ。
更に…マッハには知らされていないものの中には、マッハの身体を…他の戦闘員の慰安の為にも使用できる様に生殖能力を失わせた上でより性的な意味での身体改造を行おうとしていた記録や予定表がある。
「…本当に良い身体だ…早く抱きてぇ…」
自慰を始めようとしたその時、ドアをノックする音が聞こえた。雇用主はズボンのチャックを渋々上げ、パソコンの画面を別デスクトップ画面に切り替える。
「…ったく誰だよこんな時間に…ほら、さっさと入れ」
そう言われて入ったのは、雇用主が調査員として派遣していた、金髪の少女だった。か細い身体を可愛らしい服で着飾ったその生娘は、何を考えているのかわからない表情のままテクテクと歩いてきた。
「何のために…いや、そういや通信機器貸し出しといて、まだ返してもらってなかったな。こんな時間に返しに来るとはご苦労なもんだ…ほら、早くよこしなさい」
そう言われた少女は、腕につけられた通信機器を雇用主の広い掌に出す。
「よし…データは…言われた通り消してくれたな。ほら、もう帰って良いぞ」
早く致したいのか、目も合わせずに少女にそう言うが、少女は一歩も動かない。
「…ほら、夜遅いだろう、早く帰って…」
少女を押し返そうとした途端、突然少女は銃を取り出し、雇用主の脇腹へ鉛玉を撃ち込んだ。
「う゛っ……!?オイ貴様何して」
「それはこっちのセリフだオッサン」
少女の姿が黒く染まり、巨大に変形したかと思うと、現れたのは真っ赤な目玉が幾つも身体から見え隠れする怪物…ドリームパラサイトであると、雇用主は認識する。
「お前っ何故こんな所に!?それにあのガキは」
「あの娘なら死ぬ前にご丁寧に通信機器渡して居場所教えてくれたわよ?何せ…アタシの熱烈なファンガールつーか…いや、狂信者って言った方が良いわね?それだから、アタシに殺されるのが本望って言って、めちゃくちゃ嬉しそうに殺されたわよ〜あぁそうそう、周りに居た同じ調査員の男も同じ様に狂信者で殺されてくれたわ」
ニヤニヤと、卑しい笑みを浮かべながら嬉々として語るフォリーに、雇用主はなんとか後退りをして逃げようとするが、フォリーはまたその脚に弾丸を撃つ。
「ヒィッ…た、頼む!殺さないでくれ!俺を殺したらお前は…」
「大丈夫だいじょーぶ、アタシ、もうカロライナ以外興味ないんだもの。アンタらの国のクソッタレ共なんて殺す気も起きないわ。約束するわ、カロライナとは無関係な人ら、殺さないから」
「……そ、それなら」
「だから」
バンッ
弾丸の狙撃音が鳴り、男の額に風穴が空いた。
「カロライナと雇用関係のあるアンタを、殺したわ」
笑顔を浮かべながら、届いていないと分かっていながらも、フォリーはそう言った。
「はぁ…さて」
フォリーは雇用主だった男が使っていたパソコンを弄る。画面を元のデスクトップに戻すと、保存されていたマッハの画像群全てを完全に削除する。更に手術内容に関する文書データの内、性的な改造に関する記述を削除及び不適切であったから削除したという文言を加え、更新日時もデータを弄り偽造した文書データを更新版として共有サーバーに送信した。勿論その他の予定表や記録も全て削除、偽造している。紙として残っている物は全て細かく切り裂き血で汚し二度と戻せない様にした。それから他のデスクから拝借した指紋を銃に付着させ、己の能力で防犯カメラ映像をあたかも別人が殺害したかの様に変えた。フォリーは実体化させていなかった為当然フォリーの指紋なる物は付着せず、後から着けられた別人の指紋だけが銃に残っていた。フォリーが全てを済ませて銃をデスクに置いた頃には、朝日が昇っていた。朝焼けの陽射しを少し眩しいと思いながら、フォリーは呟く。
「……こんなに良い空が見られるのに、汚い奴も、居たもんだな」
血の飛び散った居心地の悪いオフィスから、フォリーは霧となって去った。
フォリーが戻ってきた頃には、マッハは目醒めており、元のいつも通りの、化粧もせずあの紫のスーツにサラシを巻いた姿でピルビーと一緒に朝食を食べていた。あれだけ激しく行為をした後であるというのに、マッハは至って平常そうに見えて、性の匂いも隠し切っている。
「……おーい」
「ひっ…フォリーさん…?何でここに…」
「おはようフォリー…朝食でも食べるか?ベーコンと目玉焼きにトーストだけだが」
「…パンケーキ無い?」
「材料を切らしてる、また材料買ったら作ってやるから」
「……はぁ」
寝てる間にもう1発出来たらなと思っていたフォリーは少し落胆気味に、ソファに座った。ピルビーは怯える様な表情のまま、目を泳がせて縮こまっていたが、マッハは昨日よりも柔らかな表情で、自らフォリーの隣へ座る。
「…フォリー」
「大丈夫大丈夫…てか、アンタ素直になったわね、そっちの方がよっぽど可愛いわよ?」
「煩い…別に、ただ…今はこうしたいだけなんだ」
そう言いながら、マッハはそっと、フォリーの大きな手に触れると、フォリーもまた指を絡め、手を繋いだ。
「……ねぇ」
「愛してる」
フォリーが訊くまでも無く、マッハがそう答えると、フォリーは驚いた様な顔をした後、顔を赤らめながらも、マッハに囁いた。
「…アタシも、愛してるわよ…カロライナ」
2人寄り添いながら、暖かな手の温もりを感じる。この後きっと激しく全てが一変し、何もかも崩れるだろう。組織は今頃突然死んだ雇用主に混乱し、残された指紋の持ち主を強制逮捕し、大きな騒動が巻き起こるだろう。けれども、それももうすぐに、カロライナ・マッハという乙女にとっては関係の無い事になるだろう。
鳥籠から、優しい悪夢へと堕ちたのだから。もう彼女の心配するもの、抑圧するもの、縛る物は何も無くなったのだから。
フォリーはマッハの手の柔らかさと、マッハの内なる期待に微笑いながら、今晩のことを考えていた。マッハもまた、フォリーのあの温もりと愛に触れ合うことだけを考えていた。全てを気にしなくて良くなった今、もうあとは堕ち続けるのみであったから。
終………?
……ただ一点、寄り添い合う2人を白けた目で見ながら恐怖心から疑心へと移り変わり、己がまた大切なものを失おうと、今度は奪われようとしている事に気付いてしまった芋虫だけを除いて。
続く(?)
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