テラーノベル
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ぴり、ぴりぴり…バチバチ…
なんだか今日、雰囲気が変だなぁ。レコーディングスタジオには、緊張感が漂っている。ミニマムで見落としてしまうような…そう、若井と涼ちゃんの間だけに流れている変な緊張感。レコーディングに対する緊張感とは違う。喧嘩した時はもっと明らかに気まずそうにしているから、違う所に原因がある気がする。
他のみんなは気付いていないみたいだから放っておいて、一旦休憩にしようと声を掛けた。
「もときー、こっちおいで」
ぽんぽんと膝の上を若井が叩く。誘われるまま若井にもたれるようにして座る。ぎゅぅと後ろから抱きしめられた。最近の若井はなんだか甘えん坊で、暇さえあれば抱きついてくる。俺は放置したり抱きしめ返したり、半々だ。
「元貴、くち開けて」
涼ちゃんがチョコをつまんでこちらをむく。あー、と開くと、ころんと口に入れてくれた。甘くて美味しい。涼ちゃんは最近お兄ちゃんブームなのか、甘やかしてくれる。食べ物をくれたり頭を撫でたり、その頻度が高くなっている。
「もときぃぃぃぃ…」
ぐっと腕の力が強くなる。痛い。涼ちゃんは我関せずで、次のお菓子を吟味していた。
この2人の間に漂っていた独特な緊張感が今はない。俺が挟まると収まるみたい。
うんうん考えていると、突然頭に疑念が湧いてきた。もしかして、この2人付き合い始めたのでは…?それなら辻褄が合う気がする。
付き合い始めて、意識しちゃうから緊張感が流れているんだ。俺が間にいることで、ドキドキが紛れるんだろうな。早く言ってくれればいいのに。
同居期間があったからそこで意識し始めたのかな。いいなぁ、2人ならお似合いだもん。初々しいのはいいけど、ずっとこのままなのはいつかレコーディングに影響しそうだ。少しずつでも慣れてもらわないと…
こうして、俺のキューピット大作戦は始まった。
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