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手をつないで。【出張シリーズ】
出張4日目。
毎晩なーくんから送られてくる写真と動画は、ちょっとずつ変わってきてる。
最初は、泣き顔ばっかだったのに。
今日は、にこって笑って、なーくんの袖をぎゅっと握ってる莉犬が写ってた。
「そろそろ、お外も行けるかもです」
なーくんの報告に、俺は驚いた。
まだ距離があると思ってたけど……
手を繋いで、近くの公園まで行ってみよう、って提案したのは莉犬だったらしい。
⸻
「……おててつないで、おそといきたい……」
そう言って、なーくんの手に自分から手を伸ばしたって。
莉犬にとって、ままもりの母性は安心感があったのだろう。
公園までの道のりは短いけど、莉犬にとっては大冒険だったはず。
小さな手が、ぎゅっと握られて、揺れている写真。
その中で、莉犬は少しだけ、誇らしそうに笑っていた。
(ななもり。視点)
公園が近づいてきたとき、
「少し休憩する?」と声をかけようと思った矢先だった。
ピーポーピーポー……遠くから救急車の音。
莉犬くんの手が、ぴくっと震える。
次の瞬間、足を止めて小さくうずくまってしまった。
「いたいねっ……いたいねッ!……」
俺はすぐにしゃがんで、莉犬くんの顔をのぞきこむ。
「だいじょぶ。音、ちょっとだけだからね。お耳、ぎゅってしてみよう?」
手で莉犬くんの耳をふさいで、背中をゆっくりなでる。
そのとき、さらに追い打ちをかけるように バイクのエンジン音が響いた。
すぐ後ろで、小さい子たちの笑い声と叫び声も重なる。
莉犬くんの肩が跳ねて、顔がぎゅっと歪んだ。
「やだ、やだ……っ、いやあああ……!!」
そのまま、俺の胸にぶつかるように飛び込んできた。
小さい手で服をぎゅっと掴んで、涙をこらえるように震えてる。
「よしよし……お耳しんどいね。なーくん、ここにいるからね」
耳に近づけた声で、ゆっくり、何度もそう繰り返した。
⸻
家に戻ってからも、莉犬くんはしばらく動けなかったけど、
お昼寝のあと――
「これ、つける…」
と、小さな声でイヤーマフを指さした。
新しいイヤーマフをつけて、鏡の前でくるっと回って、
「どう?」と笑うその姿は、ちょっとだけ、冒険を終えた勇者みたいだった。
コメント
4件
ままもり安心感強そうすぎる
鏡の前でくるくるまわってるとか絶対可愛いじゃん!続き待ってます