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おかえりと成長【出張シリーズ】
「今日は、さとちゃんがかえってくる日だよ」
朝ごはんのあと、そう声をかけると、
莉犬くんは目を輝かせて、勢いよくうなずいた。
「ほんと!?ほんとに!?」
「うん、ほんと。たのしみだね、莉犬くん」
⸻
午前中は、お気に入りのぬいぐるみたちをきれいに並べて、「さとちゃんに見せるの!」と準備をはじめる。
「いっしょに絵も描く?」と聞くと、
莉犬くんはクレヨンを握って、画用紙に絵を描きはじめた。
「さと……ちゃん……」
「りいぬ……」
「なーくん……!」
名前を口に出しながら、ひとつずつ、一生けんめいに描く。
それを見ていた俺も、思わずにこっと微笑んだ。
⸻
午後になって、さとみから連絡が来た。
「電車が止まってて、ちょっと遅れるみたい。あと2時間くらいで帰れるってさ」
なーくんがそう伝えると、莉犬くんの表情がピクリと揺れる。
「……やだ……やだ……」
ぽろぽろと涙がこぼれ、床におててをぱんぱんと叩きながら、足もばたばた。
でも――
「びっくりしたね、でもおてて痛くなっちゃうからやめよっか」
俺の声に、莉犬くんの動きがすこしだけ止まる。
はぁ、はぁと息を整えながら、小さくしゃくり上げる。
「さとちゃん……さとちゃん、まだ……?」
「だいじょうぶ。莉犬くん、がんばってるの、なーくん知ってるよ。
さとちゃん、ちゃんと帰ってくるから。もうすこし、いっしょにまってようね?」
莉犬くんは小さくうなずき、しばらくして俺の膝に寄り添うように座った。
⸻
夜。
「ただいまー」
玄関の音と、なつかしい声が聞こえた瞬間――
「さとちゃあああああん!!」
莉犬くんは勢いよく走っていって、勢いそのままに抱きつく。
「がんばったの……!ちゃんと……えらかったの……!」
安心した途端、涙が溢れて止まらない。
「うん、聞いてたよ。えらかったな、莉犬」
さとみはギュッと強く抱きしめた。
莉犬くんはその胸の中で泣きじゃくって、しばらく動けなかった。
⸻
(さとみ視点)
その夜。
「ねぇ……さとちゃん……」
布団の中で、小さな手が、そっと俺の手を探して握る。
「明日から、いっしょ?」
「うん、ずっといっしょだよ」
莉犬は、安心しきったように目を細めて、胸にぴとっとくっついてきた。
「さとちゃんのにおいする……」
そう呟いて、すうっと静かに眠りについていく。
小さな寝顔を見つめながら、
「よくがんばったな」
と、やさしく髪をなでた。
最近ネタが無くなってきたのでなにかリクエスト欲しいです!
よければコメントしてくださると助かります🙇♀️
コメント
8件
お庭でプールしてたら顔にかかってびっくりとか描いて欲しいです!語彙力なくてすいません
3番目がみたいかな
今回も最高でしたっ!!🥲✨