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汚染
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あめ猫@サボり魔
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ありきたりな雑炊
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FORSAKEN――。
絶望と恐怖を喰らうためだけに存在する、終わりなきゲームの世界。
そのすべてを支配する黒幕、スペクターは――。
豪奢な浮遊チェアの上で膝を抱え、お腹を「ぐぅぅぅ……」と鳴らしながら、今にも干からびそうな顔をしていた。
「……はぁ」
「…………はぁ」
目の前の巨大モニターには、サバイバーロビーの様子が映っている。
そこでは――
「だから違うっつってんだろバカ! 発電機は『音』じゃなくて『振動』で覚えろ!」
シェドレツキーの影から半身だけ出した1xが、腕を組みながら偉そうに講義をしていた。
「なるほど~!」
「1xコーチすごーい!」
「今日チェイス三十秒伸びたよ!」
「ふん。当然だ。」
拍手。
歓声。
笑い声。
そして差し入れのライムパイ。
「……ありがとう1x!」
「別に礼なんかいらねぇよ。……あ、でもそれは置いとけ。」
シュバッ。
パイだけ影の中へ回収。
「また持っていかれた!」
「あははは!」
ロビー中が笑い声で包まれる。
「…………。」
スペクターは無言だった。
「…………恐怖は?」
誰も答えない。
「絶望は?」
誰も泣かない。
「悲鳴は……?」
聞こえるのは、
「あっ! 1xコーチ照れてる!」
「うるせぇぇぇッ!!」
だけだった。
スペクターは両手で顔を覆う。
「……違う。」
「僕が食べたいのは、こんな家族団らんじゃない。」
ぐぅぅぅぅぅ……
腹が鳴る。
「お腹減ったぁ……。」
昔なら。
罪を暴けば仲間割れ。
キラーを送り込めば阿鼻叫喚。
恐怖、嫉妬、裏切り。
最高級の絶望が山ほど採れた。
なのに今は。
1xが全部ぶっ壊す。
キラーが来れば――
「おい邪魔。」
ドゴォォォン!!
ワンパン。
サバイバー全員生還。
過去を暴けば――
「アイツ責めていいの俺だけだからな!」
ヴェロニカ大爆笑。
ビルダーマン拍手。
友情レベルアップ。
「…………。」
スペクターの頬がぴくぴく震える。
そして。
ついに。
ガバァァァッ!!
「もう無理だ!!」
赤いシルクハットを脱ぎ捨て、
髪をぐしゃぐしゃにかき乱し、
観測室中を歩き回る。
「営業妨害だよ!」
「絶望のデスゲームなのに!!」
「なんで育成シミュレーションになってるんだよ!!」
机を叩く。
壁を叩く。
チェアを回す。
「絶望のスープ作ってたら、砂糖入れられてミルクまで注がれてるじゃないか!!」
「もう甘ったるすぎて虫が湧きそうだよ!!」
その時だった。
にゅっ。
観測室の床に落ちる影から、
ドミノクラウンがぴょこんと現れる。
「よぉ。」
「…………。」
「腹減ってんの?」
1xだった。
「サバイバーから貰ったライムパイの残り食うか?」
一口サイズのパイを差し出す。
スペクターは真顔。
「……いらない。」
「甘い物嫌いなんだ。」
「そっか。」
「じゃあ俺が食う。」
ぱく。
もぐもぐ。
「……うま。」
スペクターの眉が引きつる。
さらに。
にゅっ。
今度はその横からシェドレツキーまで顔を出した。
「スペクター。」
「顔色悪いよ?」
「最近ちゃんと食べてる?」
「寝不足じゃない?」
「…………。」
「君まで来るな。」
「心配だから。」
「心配するなぁぁぁぁぁ!!」
スペクターの絶叫が観測室を揺らした。
「キラーとサバイバーがセットで黒幕の体調心配するなんて、前代未聞なんだよ!!」
「何なんだ君たちは!!」
「もう嫌だ!」
「本当に嫌だ!!」
「君たち見てると胃が痛い!!」
そして。
スペクターは勢いよくシステムコンソールへ飛びついた。
バチバチバチッ!!
「こうなったら!」
カタカタカタカタ!!
「全員!」
ッターン!
「解放だぁっ!!」
ゴオオオオオオオッ!!
FORSAKEN全土が黄金色の光に包まれた。
空が裂ける。
雲が割れる。
巨大な帰還ゲートが、ゆっくりと姿を現した。
「……え。」
ロビー中のサバイバーが空を見上げる。
「帰れる……?」
「現世へ……?」
ヴェロニカが目を潤ませる。
ビルダーマンが空へ手を伸ばす。
デュセッカーは静かにイルミナを握り直した。
「ふん!」
観測室からスペクターが叫ぶ。
「出ていけ!」
「全員!」
「二度と帰ってくるな!」
「僕にはもっと初々しく絶望してくれる新人サバイバーが必要なんだ!!」
「君たちはもう出禁!!」
「永久追放!!」
ロビーが静まり返る。
そして。
「……ぷっ。」
誰かが吹き出した。
「あはははは!!」
「スペクター限界だ!」
「黒幕がギブアップした!」
爆笑が広がる。
「笑うなぁ!!」
その叫びさえ、もう誰も恐れなかった。
シェドレツキーは空を見上げ、
足元の優しい影へ微笑む。
「行こう。」
「俺たちの帰る場所へ。」
影の中から、
1xが鼻を鳴らした。
『フン。』
『帰ったら激辛チキン十箱な。』
「十箱!?」
『約束だからな。』
「食べきれる?」
『食う。』
「ライムパイも?」
『……ついでなら。』
「素直じゃないなぁ。」
『うるせぇ。』
シェドレツキーは笑った。
影も笑った。
黄金の光が二人を包む。
恐怖も。
毒も。
悲しみも。
もうそこにはなかった。
あったのは、
光の中で重なる一人と、一つの影だけ。
そして――
新しい明日へ向かう、
最高の相棒たちの笑い声だった。