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#シークレットベビー
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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「でも結婚する相手の仕事を理解するのも大切でしょ?」
「結婚してくれるの!?」
驚いてこちらを見るハムスター。その口にはクッキーの粉が沢山付いている。
「わかんない。でも理解して、好きになれたら結婚したいよ。ただ、プロレスって怖いって先入観があるから」
「もしもし? ジャーマネ? マイハニーに今週末のチケット一枚。うん」
「……」
質問したくせに最後まで聞かないとは。
今のはお見合い相手としてマイナスでしかないと思う。
ハムスターに見えている時点でマイナススタートだったけど、一慶さんはテンションが高くて無邪気で悪い人ではない。
「でも――」
「でも?」
「私、恋愛漫画みたいにドキドキしたり、トゥインクしたり、何て言うんだろう。ライバルに虐められても好きって気持ちが変わらない、イジメられても大切にしてくれる、そんな恋愛して結婚したいです」
一慶さんは素直でいい人だけど、ときめくかと言われたらまったく。
「ライバルって、ヒール? 武器とか持ってる感じ?」
「違います。私より可愛いし守ってあげたくなるような、私が不安になるぐらい性格のいいライバルです」
それでも平凡で何も取り柄がなくて、カバンの中身が漫画とお菓子だけの私を好きになってくれる学園のイケメンヒーローが良い。
……孔一くんみたいな、だれでも優しいのに親の言いつけで仕方なく結婚するみたいな態度ではなく真摯な人が良い。
「ふうん。よくわからんね」
「なんでわかんないんですか!」
「だってどんな可愛い子がいても、俺は流伽以外選ばないし。流伽と同じ土俵に上がれる子なんて世界中にいないもんね」
あっさりと言い「チケット取れたよ」と再びクッキーを食べながらいいのけるハムスター。
えええ。
今のセリフ、ハムスターじゃなかったら格好良かったのに。
「俺の試合中の姿を見たら、惚れてくれる可能性も0,0000000001パーセントはあるかもしれないし」
「なんで紺碧の王子様なのに、可能性が低いの」
「うーん。俺がプロレスラーになった動機が格好良くないから。自分では格好いいと思えない。あ、でもファングッズのプロマイドは加工、修正しててかなりイケメンかも」
四つ足でタタタタッと走って自分の部屋に入ると、少しだけドアを開けたまま出てきて閉めずに戻ってきた。
「俺のカメラ目線のパイルドライバーとか流し目のアイアンクローとか、笑顔で歯が輝いているジャイアントスイングとか」
「全部、ハムスターに見えます……」
あと技名を言われても分からないせいで、写真の中のハムスターが全部同じに見える。
ショックを受けて地面に倒れた一慶さんを横目に、少し開いたままのドアを閉めようとした。
「あ、だめ。俺、閉所恐怖症なんだ!」
「閉所? リビングは広いじゃないですか」
「あ、うん。でも、その、俺の部屋はドア、外してもいい?」
私の返事を待たずに、ドアのねじを外すと、上に軽々と持ち上げてしまった。
手に乗るぐらいの小さなハムスターが、大きなドアを持っている。
「危ないです」
「お、ごめん。でもこんなの片手でも余裕だよ。目を閉じて鼻くそほじりながらケンケンしてても持てるよ」
「私にはハムスターに見えるので、危ないことはやめてください」
もう。
テレビの後ろに外れたドアが置かれたシュールな光景。
しかも一慶さんの部屋はリビングから丸見えだ。
見たこともないトレーニングの機械だらけ。
「いやあ、ほら俺って、幼少のころ、ほぼ押し入れに閉じ込められてたから、仕舞ったドアが無理なんだよねえ」
「押し入れに!?」
「おっと。それすらも忘れてるのか。今のうっそーん」
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