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え、第91話……もう王都に戻ってくるんだ。最初の頃の断罪ルートを思うと、人々が「アイリス領の救世主だ!」って呼ぶ光景が本当に感慨深いよ……。フローラがまだ目覚めないところが切なくて、でもバイオレッタが諦めないで進む姿がかっこよかった。レオンの「凱旋式を用意して待ってるよ」って手紙もズルいな、痺れるわ。次の展開が気になりすぎる🔥
――現在、アイリス領。
「……そんなことが、王都で」
しばらく、言葉を失うしかなかった。国王の崩御。偽りの勅書。王妃カサンドラによる、摂政就任の企み。
そして――レオンの反撃。
リリアンヌとジュール男爵から一通りの報告を聞き終え、私は深く息を吐いた。
その時だった。
――コツン。
窓を叩く、かすかな音。続けて。
――コツン、コツン。
「……?」
窓を開け放つと、夜風とともに飛び込んできたのは、小さな白銀のユニコーンだった。
「ソル……!」
レオンの魔獣だ。その口には、一通の封書がくわえられている。
「レオンから……?」
急いで封を切った。
『バイオレッタへ。王都の盤面は、だいたい整ったよ』
「だいたい……?」
その下には、見慣れた筆跡で続いていた。
『だから、早く来て。君たちのために、凱旋式を用意して待ってるよ』
顔を上げ、隣に立つアレクを見る。
「アレク、王都へ行くわよ」
そう言い切ったものの、アイリス領にはまだやるべきことが山ほど残っている。
負傷者の治療。捕虜の管理。壊された街道や家屋の復旧。マレフィカ侯爵軍の残党にも、警戒が必要だ。
「……でも、この領地を放ってはいけないわね」
「でしたら」
リリアンヌが立ち上がった。
「ここは、わたくしにお任せくださいませ」
「……え?」
「エルベルト公爵軍もしばらくアイリス領に駐屯いたします」
彼女は、まっすぐ私を見つめた。
「負傷者の救護も、捕虜の管理も、復旧の指揮も。責任を持ってお引き受けしますわ」
「でも……」
「以前、わたくしはあなたに救っていただきましたもの」
彼女が微笑んだ。
「今度は、わたくしの番です」
「……リリアンヌ」
ジュール男爵が、一礼した。
「私は、バイオレッタ様方とともに王都へ参ります」
「ジュールも?」
「はい。アイリス領で何が起きたのか。貴族連合の代表として、王都の貴族たちの前で証言いたします」
***
王都へ向かう馬車。後方には、ジュール男爵や騎士たちを乗せた馬車が続いていた。
私は、隣で眠るフローラの手を握っていた。クッションを敷き詰めた長椅子の上。窓の外には、緑の景色が流れていく。けれど、彼女は今日も目を覚まさない。
「……ねえ、フローラ」
返事はない。
「レオンったら、凱旋式なんて開くっていうのよ。ただみんなを守りたくて必死だっただけなのに……」
向かいに座るアレクが、珍しく口を挟む。
「十分な功績だ」
「……聞いてたの?」
「同じ馬車にいる」
「それは、まあそうだけど」
ふふっと笑って、またフローラへ視線を戻した。
「だから……ねえ」
細い指を、そっと包み込む。
「早く起きてよ」
返事はない。
「王都大神殿には、精霊魔法を扱える神官がいるらしいわ」
眠る頬にかかった髪を、そっと払う。
「もしかしたら、あなたの魂が今どこにいるのかも、分かるかもしれない」
自分自身に言い聞かせるように、続けた。
「だから……諦めないからね」
その時だった。大きな手が、私の手の上に重なった。
「バイオレッタ」
「……なに?」
「一人で背負うな。フローラは、お前だけの仲間じゃない」
「……うん」
私は、小さく頷いた。
「ありがとう」
馬車は、王都へ向かって走り続ける。眠るフローラを乗せたまま。
***
やがて、窓の向こうに高くそびえる白い城壁が見えてきた。
「……着いたわ」
馬車が城門へ近づいていく。通りにいた人々の視線が、次々とこちらへ集まり始めた。
「あれは……ベルシュタイン公爵家の紋章?」
「黒獅子の馬車だ!」
「まさか、アレク様が……?」
ざわめきが、少しずつ広がっていく。やがて、誰かが声を上げた。
「アイリス領を守った方々だ!」
その一言をきっかけに、小さな歓声が湧き起こる。
「アレク様!」
「バイオレッタ様!」
名前を呼ばれ、胸の奥が熱くなった。本来のゲームシナリオなら、悪役令嬢バイオレッタをこの王都で待っていたのは――。
断罪。破滅。そして、死だった。それなのに今――。人々が、私の名を呼んでいる。
「バイオレッタ様!」
「アイリス領の救世主だ!」
歓声は、少しずつ膨らんでいった。窓の外を見つめる。すぐ隣で眠るフローラの手を、もう一度握り直した。
「……聞こえる? フローラ。私たち、王都にきたのよ」