TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

流れ星が落ちる季節

一覧ページ

「流れ星が落ちる季節」のメインビジュアル

流れ星が落ちる季節

10 - 第10話船

♥

18

2022年08月13日

シェアするシェアする
報告する

星々の彼方へと飛び立つ、巨大な船……

そこに描かれた印の意味を理解できる者はいないだろう。

星の輝きが失せる時……

それは始まりを告げる鐘の音となる。

海の底からやってきた異形の怪物たち……

それらは、星神の代理人として地上に現れた。

彼らは、ヒトを創造した神の代わりに、 その罪を裁いて罰を与えはじめたのだ。

それは、まさに天上の地獄であった……。

彼らは、人の心を暴き、惑わせて弄ぶことを好み、 また、人の心に潜み、人を喰らって堕落させることを好んだ。

彼らこそは悪そのものであり、人類にとっては敵である。

だから、彼らが滅びることを願うことは間違ってはいないはずだ。

それでも……

その願いが、叶うかどうかは別問題なのだ。

今はまだ、誰も知らない……。

星神よ、私を導いてください!……

空を舞う鳥たちの羽音を聞きながら、 彼女はゆっくりと目を覚ます。……まるで眠り姫のように。

天窓から差し込む光が、彼女を照らす。

それは、まぎれもない現実なのだけれど。

彼女が望めば、いつでもその光を失うことができるのだ。

ふらりと立ち上がって、 彼女は部屋を出る。……そして、また戻ってくる。

少し疲れているようだけど、 いつも通りの様子に見える。……

あの日のことは忘れないわ……。

だって、あなたが来てくれたんですもの……。

私はね、あの時とても嬉しかったの。

だから、あなたのことも覚えていたかったの。……ごめんなさい。

本当はもっと早く気づいていたはずなのに……。

あなたはとても優しい人だったから、 きっと無理をしていたのよね。……でも、それも今日までです。

もう、迷う必要なんてありません。

さあ、行きましょう。……私たちの新しい家に。

ずっと前から用意していたんですよ。

素敵なお庭もあるんですよ。

みんなで一緒に遊びましょうね。……

彼女の足元には、血溜まりがある。

そこに沈んだ少女の姿が見える……。……

ねえ、どうしてそんなことを言うの?……私が嫌いになったの? お願い、答えて……。……

そう。……それじゃ仕方がないですね。……

いいえ、いいんですよ。……あなたが決めたことなら。……

そうですか。……そうでしょうね。……お気遣いなく。……それは、とても嬉しいですわ。

ありがとうございます。……えぇ。はい。もちろん。

私もあなたを信じていますよ。……では、また後ほど。……いえ、気になさらないでください。

私のほうこそ、無理を言って申し訳ありません。……わかりました。それでは、お願いします。……ごめんなさい。……でも、やっぱり私は行けないんです。……本当に、すみません。……はい。……そうですね。……おっしゃるとおりだと、思います。……あぁ、こちらこそ失礼しました。……はい。……どうぞよろしくお願いします。……えぇ。……どうか、お元気で。……そういえば、あなたはいつも笑っていた気がします。……ふとした時に見せる笑顔が印象的で……。……そうでしょうか?……そうかもしれませんね。……えぇ、私もよく覚えていますよ。……あなたのことを。……ありがとうございます。……あの時、私がもう少し早く決断していたら……。いえ、なんでもないです。忘れてください。……そんなことはありません。……あなたは優しい方です。……はい。……では、またいつか会いましょう。さようなら。


月明かりの下……

夜の海を進む船上……

穏やかな風を受けながら、 少女は甲板の手すりにもたれていた。

「こんな時間に何をしている?」

背後からの呼びかけに振り返ると、そこには船長がいた。

少女は小さく微笑み、「少し考え事を」と答えた。

「悩み事なら相談に乗るぜ」と船長。

少女は首を振ると、空に浮かぶ月を見上げた。

「大丈夫ですよ。大したことではありませんから……」

船長もつられて月に目をやる。

すると突然、少女は何かを思い出したかのように言った。

「……そういえば、聞いたことがあります。月にはウサギがいるって」

「なんだそりゃ?聞いたこともないな」

呆れた顔を見せる船長に、少女はクスッと笑うと言った。

「実は私も知らないんですけどね」

船長の顔に困惑が広がる。

「おいおい、勘弁してくれよ……」

苦笑いを浮かべる彼に、少女はいたずらっぽく笑って見せた。

そして再び月へと目を向ける。……不思議そうな顔をして、船長もその隣に並ぶ。

ふたり並んで見上げる夜空には、 煌々と輝く満月が浮かんでいた。……いつの間にか、雲に隠れて見えなくなってしまったけれど。

この作品はいかがでしたか?

18

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚