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「……へ⁉︎」
奇声の方へヴィオラとレナードは、視線を向ける。
「テオドール様⁉︎」
柱の影から、観念したように姿を現したのはテオドールだった。
「いつ、お戻りになられたんですか」
ヴィオラは、驚きながらもどこか嬉しそうな顔をする。
「あー……さっき、だよ」
「そうなんですか。お出迎えする事も出来ずに申し訳ありません」
「いや、それはいいんだ。それより、さっきの話……どういうこと?」
テオドールは、戸惑った様子でヴィオラを見遣る。
「……私、テオドール様がお留守の間、ヴィルヘイム様に勉強を教えて頂いたんです。これまで勉強なんてした事なくて……簡単な文字くらいなら読める程度だったから、結構大変でした。でも、これも全てテオドール様に恩返しをする為だって思いながら、必死に頑張ったんです。だから、テオドール様……私を」
テオドールは無論の事、レナードも息を呑む。頬を染め目を潤ませ上目遣いのヴィオラ。
この流れならきっと、私を妻にしてくださいとでもいいそうな雰囲気だ。
「私を……テオドール様の側近にして下さい‼︎」
愛の告白ではなく、仕事の打診だった。テオドールは呆気に取られ、レナードは声を出して笑った。
「側近……どうして、僕の側近」
期待を裏切られたテオドールは、軽い放心状態だ。
「どうして、側近なの?え、妃にじゃなくて?え……」
「……私はテオドール様にフラれてた身です。そんなおこがましい言葉をかける事など出来ません」
「フラれた……誰が誰に⁉︎」
いまいちヴィオラと、話が噛み合っていない気がして、確認をした。
「テオドール様に私が、です」
ヴィオラは、悲しそうに微笑んだ。
「ヴィオラ、違う!そんなのは誤解」
「ヴィオラ」
そこまで言ったところで、声を被せるようにヴィルヘイムが割って入ってきた。あの後追いかけきたらしい。
「ヴィルヘイム様」
「兄上……」
ヴィルヘイムは、ヴィオラの元へ歩いてくる。
「テオドール、彼女は貴方の為に努力をしたんですよ。貴方の力になりたい一心で」
「……」
「だから、テオドール。彼女を貴方の側近にしてあげて下さい」
「は?……」
ヴィルヘイムの予想外の言葉に、テオドールは思わずまの抜けた声が洩れる。
「テオドール、いいですね」
「え、はい、いや……」
全然良くない。
「し、しかし、兄上。女性の側近などこれまでに例がないですが……ですから、ヴィオラは側近とかではなく……その、僕のつ、つ、妻に」
「大丈夫ですよ、問題はありません。既に話は通してあります。特例ではありますが、ヴィオラはとても優秀でこの国の利益になり得ます。それに、彼女の事は何れ王太子妃に向かい入れようと考えてますので」
そこまで言って、ヴィルヘイムはにっこりと微笑んだ。ヴィオラ本人も初耳だったらしく、かなり驚いている。
「あ、兄上が、……ヴィオラを王太子妃に……ははっ」
テオドール以外黙り込む中、彼の乾いた笑い声だけがその場に響いていた。