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【顔】

1 - 【顔】カミアク

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2023年06月05日

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アクアside

【???】

カミキ)こんばんは。星野愛久愛海くん

アクア)えっと……

監督との待ち合わせまで数十分あり、近くを散策したのは良いが、見知らぬ人に話しかけられた。相手は俺より少し背が高い男性。ルビーのファンの可能性があるな。

?)君がずっと探し求めてた人なのに忘れたの?

そう言いながら相手はフードを取った瞬間、喉の奥がひゅっとなった気がした。

アクア)っ!?

?)パパって呼んでよ。愛久愛海

『愛久愛海』俺の本名だ。ルビーやミヤコさんでさえ、俺の事『アクア』と呼ぶのに。もしかして…っ、いや、もしかしなくても……

アクア)あ…っ……はっ………!

?)流石は僕の子。顔がこんなにもそっくりだ…

『カミキヒカル』恐怖を感じた。まさか、そっちから来るなんて思わなかったからだ。復讐の相手が目の前にいるのに、身体が動かない。こうして考えている間にも相手は1歩、また1歩と俺に近づいてくる。

アクア)ち、近づくな……!

カミキ)はい

アクア)え……?

感じたのは、困惑とまだ根付いてる恐怖。

カミキ)あれ、『近づくな』って言ってなかった?僕の聞き間違いかな?

アクア)っ、この……!

手のひらで踊らされていると知り、怒りのまま拳を振りあげようとする。

カミキ)あ、そうだ。足元には気をつけてね

アクア)はっ…?

瞬間、視界が回転した。転んだ。地面に頭を強く打ち付けた。頭がチカチカする。

カミキ)だから、『気をつけて』って言ったのに

アクア)ゔぁ…っ……!

悔しい。

カミキ)大丈夫、殺しはしないよ。僕は実の息子を殺すほどサイコパスじゃないしね

アクア)ぁ…ぅ……っ………

憎い。

カミキ)反応が薄いなぁ。ほら、顔を上げてよ

だけど、それ以上に

カミキ)ほら、起きて

アクア)ぅ、ぁ……!

怖い。

カミキ)僕をよく見て。君にそっくりでしょ?アイでも、ルビーでもない。僕と君は瓜二つ。いつか、入れ替わっても気づかなくなっていくんだろうなぁ……

アクア)……

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カミキside

返事をしなくなった。両手を愛久愛海の顔に添えて覗き込むと、目の星が不安定に揺れていた。

カミキ)…初めて見る現象だ。やっぱり君の星は特別に綺麗だよ

アクア)…………して

カミキ)ん?

アクア)は、なして……!

頭を強く打ったのか、痛みで顔を歪ませながら、愛久愛海はそう言った。面白いね。腕で退かせば良いのに。

カミキ)ふふ、そんなに僕と顔がそっくりなのが嫌なんだ……まぁ、血には抗えないけどね

アクア)っ…!

愛久愛海の耳元に口を寄せて囁くと、ガタガタ震え始めた。

カミキ)アイが死んだ時もこんなに震えてたんだね

『面白い』彼の…星野愛久愛海の全てが面白い。

カミキ)っ!

足音が近づいて来る。誰かと待ち合わせでもしてたのか。瑠美衣ちゃんとか?まぁ、どっちにしろ……

カミキ)タイミングが悪いな、少し君と話すぎたみたいだね。残念だけど、君には寝てもらうよ

予め睡眠薬を染み込ませておいたハンカチで彼の口元を覆う。しばらく抵抗していたが、恐怖からなのか、ほとんど意味を成さないまま眠った。可愛らしい抵抗だったな。そうだ、最後にひとつだけ伝えないとね。

カミキ)愛久愛海、『愛してる』

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ルビーside

【星野家 リビング】

お兄ちゃんが活動休止した。あの日、監督と会いに行ったアクアにどうしてか嫌な予感がして、前々から聞いておいた集合時間よりちょっとだけ早めに行ったらそこには監督とかいなかった。『双子のテレパシー』って感じなのかな。なんとなく、お兄ちゃんが危ない目に遭ってると思って、みんなを呼んでお兄ちゃんを捜した。そしたら…気絶してるお兄ちゃんを見つけたの。私の声で少しの間だけ目を覚ましてくれたけど、目が合った瞬間、お兄ちゃんが泣いちゃったの。…泣いたんだよ。あのお兄ちゃんが。いつも冷静で私を守ってくれたお兄ちゃんが泣いてたの。お兄ちゃんをこんな目に合わせた奴を許せなかったけど、今はお兄ちゃんの傍にいる事が大切。

ルビー)…お兄ちゃん

アクア)……

ルビー)久しぶりに、一緒にお出かけしない?

返事はない。あの日から、お兄ちゃんは精神が少し不安定になった。いきなり泣き出したり、怖がったり…あと、ずっと謝ってた時もあった。

ルビー)あの日、お兄ちゃんに何があったのか、私には分からない。でも、いつまでもそうしてたら出来る事も出来なくなっちゃう!散歩するだけでも良いから、まずは外に出よう!

アクア)……

ダメなの?私じゃ、お兄ちゃんを助けられないの?ロリ先輩やあかねさんじゃなきゃダメ?

アクア)…行く

お兄ちゃんの声。言葉の意味に頭が追いつかない。でも、確かに今……

ルビー)ほ、ほんと!?嘘じゃない!?

アクア)あぁ。支度するから、待ってろ

笑った。お兄ちゃんが笑った!まだ弱々しい笑顔だけど、前に進めたんだ!

ルビー)っ、うん!

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アクアside

【洗面台】

ルビーに心配かけてしまった。いや、ルビーだけじゃない。ミヤコさんや有馬、MEMちょにあかねにも心配させてしまった。いつまでもアイツに囚われたままじゃダメだ。

考えながら顔を上げる。瞬間、鏡に俺とアイツの顔が重なった。

『僕をよく見て。君にそっくりでしょ?アイでも、ルビーでもない。僕と君は瓜二つ。いつか、入れ替わっても気づかなくなっていくんだろうなぁ……』

アクア)っ、ああああああああぁぁぁ!!!!!!

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ルビーside

【ルビーの部屋】

洗面台からお兄ちゃんの悲鳴が聞こえた。

ルビー)っ、お兄ちゃん!?

私は慌てて洗面台に走って行った。

どうして、お兄ちゃんに何があったの。もしかしてトラウマになっちゃったのかな。だとしたら、もっと許せない。お兄ちゃんを壊そうとしてる奴なんか…!

【洗面台】

ルビー)お兄ちゃん!

アクア)違う…おれはアイツなんかじゃない……かおなんて、にてない………!

泣くてる。やっぱり、お兄ちゃんが泣いてるのは何回見ても慣れない。何回呼びかけても返事をしてくれないし、ずっと意味の分からないことしか言ってない。

ルビー)お兄ちゃん…似てるって、なんの事?誰の事を言ってるの!?ねぇ!ねぇってば!!!!

強く肩を揺さぶったら、やっとお兄ちゃんの目がこっちを向いた。

アクア)っ、るびぃ…?

私の力が強すぎたのか、痛みに顔を歪ませていた。慌てて手を離し、今度は優しくお兄ちゃんの頭を撫でる。

ルビー)ご、ごめんね。鏡が怖いの?今日は外に出るのはやめよっか!

アクア)……

ルビー)無理させちゃって、ごめんね……

いくら混乱してたからって、お兄ちゃんの気持ちを考えずに色々言っちゃった…謝らないとダメだね。お兄ちゃんは頷いてくれたから、多分許してくれたんだと思う…これは、お兄ちゃんが元気になってから聞こうかな。

アクア)…そとにでる

ルビー)えっ……

アクア)いつまでもこのままじゃ、ダメだ。役者に戻れなるなるのは、嫌だ……

お兄ちゃん。結構酷いめに遭わされた筈なのに、強い。かっこいい。私は、そんなお兄ちゃんを支えられるようにならなきゃ!

ルビー)分かった!でも、今日は休も?明日、みんなを誘って公園とか散歩しようよ!

アクア)あぁ。ありがとう、ルビー

ルビー)えへへ、どういたしまして!

小さい頃から…転生した者同士だと知る前から、お兄ちゃんは私を守ってくれた。だから、今度は私がお兄ちゃんを守るんだから!

終わり

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