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「小柳さん、クリスマスって予定ある?」
「あ‥‥あるよ。俺だって予定の一つや二つ」
「ないですよ?小柳君の予定はガラ空きです」
「星導‥‥お前俺の何を知ってんの?」
「全部知ってます。仕事以外暇なのになにを見栄張って‥‥」
俺の家の縁側
オトモが雪で遊んでいる
そして星導と‥‥
あの日出会った男
『ライ』も一緒に遊んでいた
ライであってライではない‥‥
「オトモ!濡れたまま部屋に入るなよ?」
「にゃっ‥‥なーぅ」
「誤魔化されねーよ。ちゃんと拭いてから入れ」
タオルを広げると体をすり寄せて来る
「おい、お前らもだからな?」
「はいはい」
そう言いながら星導がタオルを取り、頭や体を拭き始める
それなのに‥‥
「おい、ライ?」
「なに?小柳さん」
「何してる?」
「俺も拭いて欲しいなって」
「お前は自分で拭け!」
体を拭かれたオトモは機嫌良さげに部屋に入って行った
それなのにまだ一匹
俺の膝に手を置き、じっと俺を見つめる奴がいる
「‥‥‥‥」
「‥‥まったく」
俺はオトモを拭いたタオルを向こうに投げ、新しいタオルを取り、頭をグシャグシャに掻き回す
「うわぁっ!もっと優しくしてよ!」
「してやってるだろ?ワガママな猫だな」
「ここで飼ってもらえる?」
「オトモで手一杯だ。ほら、終わったから中で温まったら帰れ」
「チッ‥‥今日も無理か」
「いつもいつもここに入り浸ってねーで、学校の奴らと遊べよ」
「俺はここが良い!」
「‥‥はぁ」
あの日
俺の名前を呼ばれた日
確かにコイツから『ライ』を感じた
でもコイツはコイツだ
俺の側に縛りたくない
それに何より俺はまだライが忘れられない
何十年経とうとも、あのシワが刻まれた手が愛おしかった
「お邪魔しましたー」
「気を付けて帰れよ」
「24日ケーキ持って来るからね!」
「いいよ来なくて」
「嫌だ、絶対行くもんね」
「俺が居なくても知らないからな」
「玄関前でずっと待ってるもん!ね、星導さん」
「俺?‥‥俺は行けたら行くよ」
「それって来ないやつじゃん」
「だって外出るの面倒だったら行きたくないでしょ?」
「分かったから早く帰れ。遅くなる」
俺は2人の背中が見えなくなるまで玄関前に立っていた
大きな瞳に優しい声
どことなく彼を感じる空気は心地良い
俺はズルいのかもしれない
また辛い思いをすると分かっているのに
彼を側に置いておきたい
そう思い始めていた
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