テラーノベル
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助けたい。
その気持ちだけは、誰にも負けたくなかった。
能力がなくても――。
-–
翌日。
学校。
昼休み。
湊、小春、神童の三人は中庭へ集まっていた。
小春が昨日の出来事を思い返す。
「猫さんが言ってた。」
「黒い車。」
「鉄のにおい。」
「大きな建物。」
「海の近く……。」
神童が腕を組む。
「海沿いなんて広すぎるぞ。」
湊も静かに頷く。
「うん。」
「でも、何もしないよりはいい。」
「手掛かりは、それしかないんだから。」
神童は苦笑した。
「昔の俺なら。」
「こんな事件、首を突っ込まなかった。」
湊が振り向く。
「神童……。」
神童は照れくさそうに頭をかく。
「でも今は違う。」
「お前を見てると、放っておけなくなる。」
湊は思わず笑った。
「ありがとう。」
小春も優しく微笑む。
「三人なら、きっと何か見つかるよ。」
-–
放課後。
三人は海沿いの工業地帯へ向かっていた。
港。
倉庫。
工場。
古びた建物が並んでいる。
神童が辺りを見回す。
「ここだけでも相当あるな。」
湊は地図を見ながら言った。
「猫さんの話だけじゃ場所は特定できない。」
「でも、一つずつ見ていこう。」
神童は湊を見つめる。
「本当に行くんだな。」
湊は真っ直ぐ前を見た。
「俺は無能力者だ。」
「だから戦えない。」
「でも。」
「誰かを助けたいって気持ちは、能力者にも負けない。」
神童は静かに笑う。
「……やっぱり、お前らしいな。」
-–
その頃――。
エデン仮アジト。
ブレイブが食事を運んでいた。
「ご飯です。」
少女は警戒したまま動かない。
「食べないと体を壊します。」
少女は少しだけブレイブを見る。
「……あなたも悪い人なの?」
ブレイブは返事に困った。
少し考え、静かに答える。
「分かりません。」
「でも……。」
「あなたを傷付けたいとは思っていません。」
少女はゆっくり食事へ手を伸ばした。
その時だった。
突然、部屋の空気が震える。
パァン……
透明な結界が少女を包み込む。
ブレイブは驚いて立ち止まる。
「また……。」
部屋へ入ってきたヴォイアントは静かに結界を見つめた。
「感情が不安定になると発動するようだ。」
「まだ制御はできないか。」
少女は自分の手を見つめる。
「また……出ちゃった。」
ヴォイアントは静かに部屋を後にした。
-–
能力犯罪総合対策本部。
篠宮が資料を机へ置く。
「港湾エリア。」
「工場跡地。」
「廃倉庫。」
「候補は百三十七か所です。」
御堂は静かに地図を見る。
「多いな。」
篠宮が頷く。
「ですが、一つずつ調べるしかありません。」
御堂は立ち上がる。
「総力戦だ。」
「必ず少女を救出する。」
-–
研究室。
博士は静かにコーヒーを口へ運ぶ。
テレビでは誘拐事件が報道されていた。
「蓬莱……。」
「お前は、本当にそこまで行くつもりなんだな。」
博士は静かに目を閉じた。
-–
夕方。
海沿い。
湊たちは工場地帯を歩いていた。
「あっ。」
小春が足を止める。
「どうした?」
湊が尋ねる。
小春は遠くを見つめていた。
「あの猫さん……。」
昨日話した野良猫が、防波堤の上から三人を見つめていた。
「ニャー。」
猫は歩き出す。
そして振り返る。
まるで。
「こっちだ。」
そう言っているようだった。
湊たちは顔を見合わせる。
「行こう。」
三人は猫の後を追い始めた。
-–
その頃。
エデン仮アジト。
グラビティがヴォイアントへ報告する。
「一般人がこちらへ近付いています。」
ヴォイアントは窓の外を静かに見つめた。
「いや。」
「彼は一般人ではない。」
グラビティが首を傾げる。
「ご存知なのですか。」
ヴォイアントは少しだけ目を閉じる。
「最初は気付かなかった。」
「母親が旧姓を名乗っていたからだ。」
「だが、調べれば分かる。」
静かに口元が緩む。
「朝霧湊。」
「彼女の息子か。」
グラビティは驚きを隠せない。
「では……。」
ヴォイアントは遠くを見つめたまま、小さく呟いた。
「運命とは、皮肉なものだ。」
その視線の先には――
猫を追い、港湾地区へ向かう三人の姿があった。
第51話へ続く
コメント
1件
うわあ、第50話、すごく熱い展開でしたね……!湊くんの「無能力者でも負けない」っていう言葉、胸に響きました。神童の「お前を見てると放っておけなくなる」も、関係性の変化が感じられて好きです。ヴォイアントが湊くんの母親を知ってる伏線、「運命とは皮肉なものだ」って台詞がゾクッとしました。続きがすごく気になる……!
20
あまね🍡💠
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