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20
あまね🍡💠
75
猫の後を追い掛けた三人は、港湾地区の奥へ進んでいった。
港。
倉庫。
工場。
古びた建物が立ち並び、人の気配はほとんどない。
海風だけが静かに吹き抜けていた。
やがて野良猫は、一軒の古びた廃工場の前で足を止める。
「ここまでニャ。」
「昨日、お姉ちゃんはこの中へ入ったニャ。」
「でも、中には怖い人がいっぱいいたニャ。」
「僕は怖くなって逃げたニャ。」
小春は優しく猫を撫でた。
「ありがとう。」
「教えてくれて。」
猫は嬉しそうに喉を鳴らす。
「気を付けるニャ。」
そう言うと、防波堤の方へ走り去っていった。
-–
三人は物陰へ身を隠した。
廃工場の中には灯りがついている。
時折、人影が行き来していた。
神童が小声で呟く。
「結構いるな……。」
湊も慎重に様子をうかがう。
「暗くて正確には分からない。」
「でも、十人以上はいる。」
神童が目を細める。
「十五人くらいはいそうだ。」
小春は不安そうに湊を見る。
「どうする?」
湊はすぐに答えた。
「警察へ連絡しよう。」
「僕たちだけじゃ助けられない。」
神童も頷く。
「それが正解だ。」
湊は一一〇番へ電話を掛けた。
「もしもし。」
「港湾地区の廃工場です。」
「誘拐事件の犯人らしき集団がいます。」
「暗くて正確な人数は分かりませんが、十人以上……十五人前後はいると思います。」
通報を終えた湊は静かにスマートフォンをしまった。
「後は警察を待とう。」
-–
その頃――。
能力犯罪総合対策本部。
篠宮玲司が作戦室へ駆け込む。
「通報です!」
「港湾地区の廃工場で、不審な集団を発見したとのことです!」
御堂鷹臣は地図を確認する。
「場所は?」
「こちらです。」
御堂は静かに立ち上がった。
「全隊、出動。」
「現場へ急げ。」
-–
エデン仮アジト。
ブレイブが少女へ食事を運んでいた。
少女はブレイブを見上げる。
「ねぇ。」
「ブレイブって、本当の名前じゃないよね?」
ブレイブは少し照れくさそうに笑った。
「もちろん違うよ。」
少女は首を傾げる。
「じゃあ、本当の名前は?」
少しだけ考えた後、ブレイブは静かに答えた。
「愛澤優斗。」
少女の表情が少し和らぐ。
「優斗お兄ちゃん。」
優斗は思わず笑みを浮かべた。
「ありがとう。」
その時だった。
少女の表情が曇る。
「パパ……。」
瞳から涙がこぼれ落ちる。
パァン……
透明な結界が少女を包み込んだ。
優斗は驚いて立ち止まる。
「また……。」
ヴォイアントが静かに部屋へ入ってきた。
結界を見つめ、静かに呟く。
「恐怖や不安。」
「それが発動条件か。」
少女は震える声で尋ねた。
「これ……何?」
ヴォイアントは優しく答える。
「まだ分からなくてもいい。」
「今はゆっくり休みなさい。」
そう言い残し、部屋を後にした。
-–
その頃。
廃工場の外。
神童は近くの鉄骨へ飛び乗った。
雷を足へまとわせ、一気に上へ駆け上がる。
高所から工場内部を見渡す。
「湊!」
「建物の奥にも人影がある!」
「やっぱりここだ!」
神童が地上へ飛び降りた、その時――。
「そこから先は危険だ。」
突然、背後から落ち着いた声が聞こえた。
三人は一斉に振り返る。
黒いコートを羽織った、一人の男が静かに立っていた。
神童は反射的に雷をまとわせる。
小春も一歩後ろへ下がる。
湊は男を見つめながら口を開いた。
「あなたは……誰ですか?」
男は穏やかに微笑む。
「初めまして。」
「朝霧湊。」
湊の表情が変わる。
「どうして……。」
「僕の名前を知っているんですか?」
男は静かに湊を見つめる。
「君とは、一度話をしてみたかった。」
夕暮れの海風が静かに吹き抜ける。
三人は目の前の男から、ただならぬ雰囲気を感じ取っていた。
第52話へ続く
コメント
1件
いやあ、今回も引き込まれました。猫が案内してくれたおかげで廃工場に辿り着き、すぐ警察を呼ぶ判断──湊くんの冷静さが光りますね。一方でエデン側のシーン、ブレイブの本名が「愛澤優斗」と明かされて、一気に親しみが湧きました。少女の能力が発現したラストも、結界の描写が美しくてゾクッとします。そして最後に現れた謎の男……湊くんの名前を知っているって、伏線の配置が巧みすぎます。続きが気になって仕方ないです!