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放課後。
「神崎くん!」
教室を出ようとした奏斗が呼び止められる。
振り返ると、隣のクラスの女子が立っていた。
「ちょっと相談があって……。」
「え? 俺?」
「うん。」
困ったように笑う女子。
「少しだけ時間もらえる?」
「……いいよ。」
そのまま廊下の角へ歩いていく二人。
-–
その様子を、冴は教室の窓から見ていた。
「……。」
別に。
気にならない。
そう思って、本をバッグへしまう。
でも。
窓の外へ目が向く。
女子は笑っている。
奏斗も笑っている。
(……。)
胸の奥が、少しだけ痛かった。
-–
「石川。」
颯太が声をかける。
「神崎、待たなくていいの?」
「……。」
「今日は一緒に帰らないのか?」
冴は少しだけ考えた。
「……帰る。」
「そう。」
「神崎、忙しそうだから。」
そのまま教室を出ていく。
颯太は、その背中をじっと見つめていた。
-–
十分後。
「ごめん、待たせた!」
奏斗が教室へ戻る。
「……あれ?」
誰もいない。
「石川は?」
颯太が肩をすくめる。
「帰った。」
「え?」
「お前が来ないから。」
「……。」
奏斗は窓の外を見る。
夕焼けの校庭。
もう冴の姿はなかった。
-–
翌朝。
「おはよ!」
「……おはよ。」
挨拶はした。
でも。
それだけ。
昼休みも。
「図書室行く?」
「……今日はいい。」
「そっか。」
短い返事。
笑顔も少ない。
(昨日のことかな。)
奏斗はすぐに気づいた。
-–
放課後。
図書室。
静かな空間。
「石川。」
「……なに。」
「昨日。」
「うん。」
「怒ってる?」
「怒ってない。」
即答だった。
でも。
その声は少しだけ硬い。
「じゃあ。」
「なんで今日は避けるの。」
「……。」
冴は答えられなかった。
本当の理由が、自分でも分からない。
「……。」
しばらく沈黙が続く。
やがて冴が、小さくつぶやいた。
「昨日。」
「うん。」
「一緒に帰ると思ってた。」
「……。」
「だから。」
「帰れなくなって。」
「帰った。」
その言葉を聞いた瞬間。
奏斗は目を見開いた。
(……待ってくれてた。)
「石川。」
「昨日の子。」
「告白じゃない。」
「え。」
「妹さんへの誕生日プレゼントを相談されただけ。」
「……。」
「だから。」
「石川が一番。」
「え。」
「一緒に帰りたかった。」
静かな図書室。
時計の針だけが音を立てる。
「……ごめん。」
冴が小さく頭を下げた。
「俺。」
「なんか。」
「変だった。」
奏斗はふっと笑う。
「うん。」
「ちょっとだけ。」
「……。」
「でも。」
「そうやって話してくれて嬉しかった。」
冴はゆっくり顔を上げる。
「……。」
「また一緒に帰ろ。」
その言葉に。
冴は少しだけ笑った。
「……うん。」
その笑顔は。
今までで一番自然だった。
-–
校門を出る。
夕焼けの道。
「神崎。」
「ん?」
「昨日。」
「?」
「待ってた。」
「……。」
「ちゃんと言っとく。」
奏斗は立ち止まる。
そして照れ笑いを浮かべた。
「……それ。」
「今日だけで一年頑張れる。」
「一年?」
「うん。」
「長い。」
「じゃあ十年。」
「もっと長くなってる。」
二人は顔を見合わせる。
そして。
同時に笑った。
コメント
1件
第十二話、すれ違い、読んだよ……! 冴くんの「別に気にならない」って思うところ、すごく切なかった。でも本当は待ってたんだよね、ちゃんと。 図書室で「一緒に帰りたかった」って言えて、奏斗くんも「石川が一番」って返してくれて、もう……じんわりきたよ💧 最後の夕焼け道で「待ってた」って言い直す冴くん、すごく可愛かった。 二人が同時に笑うシーン、大好きです。素敵な話をありがとう🌙
*.꒰ঌ𝕐𝕦𝕚𝕜𝕒໒꒱.*
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#オリジナルキャラ含む
Luna Emma
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