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地雷さんさよなら
俺は納棺師という仕事をしている
簡単に言えば、亡くなった人に化粧をする仕事だ
そして俺には兄がいる
これはそんな兄の話だ
俺の兄は髪が長くて
端整な顔立ちをしていて
誰でも優しくて
今にも消えてしまいそうなくらい儚く
美しい人だった
そんな兄がある日突然言ってきた
黒『なぁ、ないこ』
桃「ん?どうした~?」
黒『あのさ、俺が亡くなったら、絶対にないこが化粧してな』
桃「え?どうしたの?急に」
黒『別に深い意味は無いけど、ないこに化粧してもらった人はみんな、すごい嬉しそうな顔をしてるし』
黒『絶対に他の納棺師じゃなくて、ないこに化粧してほしいと思ってる』
桃「いいけど」
黒『ほんま?ありがとう!』
そんな会話をした
それから一週間後だったかな
病院から電話がきて
あにきの病気が悪化したって
もともとあにきは体が強い方ではなかった
持病も持ってた
でもその病気が悪化してることは初耳だった
きっとあにきの事だから
俺には黙ってたんだろう
もう俺が病院に着いた時には
あにきは息を引き取っていた
正直、怒っている
迷惑かけないように
とか言って、いつもあにきは人を頼らない
最期くらい迷惑かけさせてほしかった
あにきの事がこんなに大好きなのに
最期まで頼ってくれなかった
俺って、そんなに頼りなかったのかぁ…?
そんなバットモードに突入してしまう
でも…あにきとの約束は守んないとだよね…
あにきの葬式の日になった
あにきが亡くなってからの日々は
一ミリも楽しくなくて
葬式までは一週間もなかったのに
すごく長い時間に感じてしまった
あにきはみんなに好かれていたから
みんな泣いてる
もちろん、俺もその1人で
泣きながら
約束通り、あにきに化粧をする
男性の場合、亡くなった後の化粧は
女性のようにしっかりと化粧をするわけではなく
軽くしかしない
でも、化粧なんか必要ないほど
あにきの肌はつやつやで
それを見るたびにあにきはまだ生きてるんじゃないか
って思ってしまう
現実はそんなに甘くないけどね
そして、最後
口紅を塗る瞬間
急に頭が痛くなって
グラグラした
桃「あっ、いっ……!?」
「……こ!…いこ!ないこ!!」
誰かに声をかけられて起きる
夢か…?
水「もぉ~!ないちゃん!急に倒れないでよ!め~っちゃ心配したんですけど!?」
気づけば俺は見慣れた景色にいた
でも、あにきが見当たらなかった
ほんとに亡くなってしまったのかと
必死に叫んだ
桃「あっ!あにき!あにきは!?」
ガチャ
黒『あ、ないこ、目覚めたんか』
桃「あにき…あに…き」
桃「よかった…生きてて」
俺はあにきに抱きついてそう言った
黒『え?どうしたん?もっと寝た方がええんちゃう?』
白「ちょっと~、ないちゃんがおかしいんだけど」
青「はいはい、もう会議も終わったし、かえろーな」
赤「ってか、久々にないくん家でパーティーしようよ!」
水「めっちゃいいじゃん!」
白「ピザとか頼もうぜ!」
まだいいとか何も言ってないが
勝手に盛り上がってる奴らを片目に
おれの隣を歩くあにきが突然
いつもの笑顔を添えて言ってきた
黒『また、俺に化粧してな』
桃「え?」
夢だと思った
さっき見た出来事は夢ではなかったようだ
夢じゃないなら
あれは前世の記憶…?
詳しいことは考えても分からない
でも、もしあれが前世の記憶なら
前世で俺とあにきが本当の兄弟だったのなら
今世でも、家族みたいな関係になれた
俺らはきっと運命なんだ
だから来世も一緒に
桃「お互いの大切な人に生まれ変わろう」
そう笑い合った
〈来世も一緒に〉