テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
※日帝さんとイギリスさんは元彼設定です
クリスマスの夜
アメリカ「Merry Christmas!」
イギリス「Merry Christmas」
日帝「…メリークリスマス」
ここ、イギリスにあるこの家で今、私達はちょっとしたパーティーをしている
イギリス「そんな風に食べては行儀が悪いですよ」
アメリカ「別にいいじゃねぇか、こっちの方がうめぇんだよ!」
英国と米国は時々喧嘩をしながらも楽しく会話をしていた。
私はというと、ただその光景を見ているだけである、会話についていけないし、何よりイギリスと話すのがとても気まずい。
まず、ここに呼ばれている意味が分からない。
イギリスではクリスマスは家族と過ごすものだと聞いたからだ、私はもう、彼とはそういう関係では無い。
恋人だった日々は幸せだった、一緒にティーパーティーをして、お互いの国にもよく行った。
何年過ごしたか、正確には覚えていないが、その年月も一瞬だった。
私が枢軸に入ってから、会うことは無くなった。
でも関係だけは続いていた、私達が事を起こすまでは。
米国と完全に敵対した事で、私達の関係は強制的に終わらされる事になった。
私はそれを黙認した。
これからもっと大きな事を成さなければいけない、恋人という存在は邪魔だったのだ。
別れは書面で終わり、顔を合わせる事も出来なかった。
別にそれでも良かった。
英国の顔を見るのが辛かったから。
そんな事を思った私が今、この場に居ていいものだろうか、否、許されることでは無い。
部屋には美味しそうな料理の匂いが充満していて、懐かしい紅茶の香りもする。
米国が流しているのだろう如何にも派手な音楽が鳴っている。
2国は言い合いと雑談を繰り返し、此方に気付く様子はない。
「黙って帰ってしまおう」私にはこの雰囲気が耐えられない。
それに、本来呼ばれるべきではない国なのだ、私は
私は飲まずにずっと持っていたワイングラスをテーブルに置くと、席から立ち上がって部屋を出た、玄関に着くと音楽は遠のき、静けさが戻ってきた。
玄関の靴箱の上には幼少期の米国の写真、そして昔の私の写真があった。
…この私の写真は処分しておこう、この幸せそうな表情を見ると心底腹が立つ、あれだけの事をこれから起こすというのに、呑気に笑っているのだから。
私は写真を手に靴を履くと、玄関の扉に手をかけた。
イギリス「…日帝さん?」
日帝「…っ!」
日帝「英国か…」
タイミングが悪い…
イギリス「帰ってしまうのですか?」
何故惜しそうにするのか分からない、未練でも感じているのだろうか、こんな私に。
日帝「…嗚呼」
イギリス「折角のクリスマスなんですし、もう少し楽しんでいかれたらどうでしょうか…?」
日帝「いや…」
イギリス「何か不快な事がありましたか、すみません、気付かなくて」
日帝「…」
英国を目の前にすると言葉が上手く出てこない、姿を見るだけで罪悪感に押し潰されそうだ。
イギリス「…」
気まずい沈黙が流れる。
日帝「すまない…ただ…」
その先の言葉が思い付かない、なんて言い訳をすればこの場から逃れられるのだろうか。
日帝「…私は帰」
アメリカ「あれ、日帝chan帰っちゃうの?」
アメリカ「sto~p!まだ居てくれよー!」
ズカズカと歩いて来たこいつは私に抱き着き、私を外へ行かせないようにしてきた。
日帝「邪魔だ!」
アメリカ「日帝chan無しで親父とクリスマスなんて俺干からびちゃうー!」
日帝「離れろ!」
そうして藻掻いていると、暴れたせいで手から写真が滑り落ちた。
イギリス「これは…」
アメリカ「あ、これ玄関に飾ってあるやつじゃん」
アメリカ「なんで日帝chanが持ってるの?」
日帝「それは…」
イギリス「これは私の物ですよ」
イギリスは屈んでその写真を手に取ると、手袋越しにそっとその写真を撫でた。
イギリス「私の…最も大切な物」
もう関係は終わったはずなのに哀愁の漂う顔でそんな事を言うものだから、私は色々と耐えられなくなってしまった。
アメリカ「えっ」
アメリカ「日帝cha…泣いてる……!?」
私は今泣いているのか……目の前がぼやけて上手く見えない。
見られたくないのに体が動かない、下を向いて涙をボロボロと流す事しか出来ない。
イギリス「日帝さん…」
日帝「私”とっ…お前”はもう終わった筈”だ…!」
日帝「なのに…なんでそんな事を言うんだ…!」
私そう言うと、英国は私を包み込むように抱擁をしてきた。
イギリス「私は終わらせた覚えはありませんよ」
イギリス「貴方はまだ私を想ってくれていると思っていましたが…私の自惚れでしたか?」
日帝「ちがう…私もお前を…」
その後私は言いたかった事を全てぶちまけ、英国は全てを静かに聞いてくれた。
米国は…しらん。
私が落ち着いて来た頃、英国は口を開いた。
イギリス「ずっと泣いていては泣いているままクリスマスが終わってしまいますよ」
イギリス「私は恋人とクリスマスを過ごしたくて貴方をお呼びしたんです」
そう言って英国は右手で私の手を握り、左手を背中に回すと、そっとそのまま身を寄せた。
玄関にはヤドリギの葉が1つ、飾ってあった。
コメント
1件