テラーノベル
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彼は涙もそのままに話を続けた。
「そんでな、屋上行ったんよ……。
別に、死のうとかそんなん思ったわけやないんよ? ただ、どこか遠くに逃げたかったんよ……。屋上まで走って走って、勢いよく扉開けたんよ。そこにはな、広くて青い空が見えてな? ぼーっと眺めてたんよ……。 そしたらな?…急に、天使が現れたんよ…」
そこまで言って、しゅんはゆっくりと顔を上げた。
涙に濡れたその瞳が、真っ直ぐに僕を捉える。
あの高校生の夏の日の屋上。
泣いているしゅんを見つけて、理由も聞かずにただ無我夢中で抱きしめた、あの日。
しゅんが言っている「天使」が誰のことなのか、その真っ直ぐな視線が物語っていた。
「天使がな、俺を抱きしめてくれたんよ」
とてつもなく優しい表情で、しゅんは涙の痕が残る僕の顔を見つめてくる。
その真っ直ぐな視線に射抜かれて、僕も彼から目を逸らすことができなかった。
「……じゅうのこと、見つけたんよ」
そう言って、しゅんの大きな手が僕の頬にそっと、愛おしそうに触れた。
じんわりとした体温が、僕の肌を通じて心の奥まで伝わってくる。
「、え……?」
「俺はな、あの時のじゅうの体温に、優しさに、本当に救われたんさ」
「でも……俺、あの時もしゅんの事情なんてなんも知らなくて、ただ……」
「うん。何も知らないじゅうが、何も聞かずに抱きしめてくれたから、良かったんよ」
「……、……」
何も言えなくなって、胸の奥から込み上げる感情に突き動かされるように、僕は自分からしゅんの身体を強く、強く抱きしめた。
今度は僕が、彼の傷ついた過去をすべて包み込んであげるみたいに。
「じゅう、ありがとう」
僕の肩に顔を埋めたしゅんが、掠れた声で囁く。
僕は言葉にならなくて、彼の背中に回した手に力を込めながら、コクリコクリと何度も首を縦に振った。
「あの時、じゅうがいなかったら、正直な話……俺、ほんまにどうなってたかわからん」
「だから、あの時俺を見つけてくれて、ほんまにありがとうな」
「……っ、そんな……辛い話させてごめん。……話してくれて、ありがと……」
「ううん、聞いてくれてありがとう」
腕の中で、しゅんが愛おしそうに僕の背中を優しく撫でてくれる。
その優しさが嬉しくて、同時に彼の痛みが苦しくて、僕の目からはボロボロと涙が溢れ出していた。
「あの時の俺が、もっとしゅんの事を知ってたら……ちゃんと守ってあげられたのに。なんも知らなくて……」
「ええんよ。あんなダサい自分、あの時は隠せてて良かったわ」
「……なんも知らなくって、ぐすっ……しゅんのこと、”リア充野郎”とか……勝手に言ってて……ごめん……っ!!!」
「あはは! ほんまやよ〜!もう、なんでじゅうが泣くん?」
「だってぇ……っ、うわぁぁん、」
感情が完全に決壊して子供みたいに泣きじゃくる僕を見て、しゅんは困ったように、でも世界一幸せそうに眉を下げて笑った。
「もーぅ、よしよし。じゅう、ありがとうね……」
そのまま僕の身体をすっぽりと包み込むように抱きしめ直して、大きな手で僕の頭を何度も優しく撫でてくれる。
知らなかった。
いつも眩しいくらいに笑っていた彼が、あの頃、そんなにも残酷で孤独な思いをしていたなんて。
高校生の自分が、どれだけのほほんと生きていたか。
もっと早く、彼の本当の姿を知りたかった。
もっと早く、彼の隣にいてあげたかった。
そう強く思いながら、僕は彼の胸に深く顔を埋めて、温かい体温をただ全身で感じていた。
to be continued……..
コメント
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#ちゃのざき
かわそ🍼💙 ☁️💫
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