双つの黒。
何処迄も黒く、闇社会の恐怖の象徴。
片方は赫の髪に蒼い瞳。
赭色の異能を纏った。
もう片方は黒い髪に赫の瞳。
蒼色の異能を纏った。
彼等は双つの黒であり、
相棒であった。
何方かが欠けても、双つの黒にはなれない。
何故なら、黒は双つなのだから。
相棒であり、恋仲でもあった双つは、
罵り合い、嫌悪し合いながら、
其れでもお互い愛し合い、必要とし合っていた。
少なくとも、片方はそう思っていた。
そして、もう片方も
同じ様に考えてくれていると。
少なくとも、片方はそう思っていた。
片方の兄たる、巨大な魔獣に立ち向かった時も、
最悪の抗争において、
仲間を助け出そうとした時も、
双つが出会った、
其の時から既に双つは黒であった。
少なくとも、片方はそう思っていた。
片方が、もう片方に声をかけた。
『君は永遠に僕の狗だ。』
と。
不機嫌に顔を歪めたもう片方に、片方は続けた。
『君の相棒も、君の恋人も、
そして君の主人も、』
『永遠に僕だけだから。』
其の言葉に片方は笑い、
『判ってるよ、莫ァ迦、笑』
と。
そう返した。
その言葉にもう片方は、
『本当かい?』
と薄く笑った。
『本当だわ、手前こそ離れんじゃねぇぞ、』
片方はそう云い、笑いかけた。
『ふふふ、当然じゃないか。』
そう云い、片方はもう片方に、首輪にも
似たチョーカーを付けた。
付けられた片方は嫌そうに顔をしかめたが、
然しその後直ぐ、嬉しそうに笑った。
その首輪にも似たチョーカーは、
酷く片方の体に馴染んだ。
其れから1年後の事だった。
もう片方の黒は消えた。
片方の黒は酷く悲しんだ。
何故だ、何で。
そんな意味のない言葉を吐き、
ひたすらに葡萄酒を流し込んだ。
『離れないって、云ったじゃねぇか、嘘吐き。』
片方の口は止まらなかった。
『莫迦、最低、大嫌い。屑、糞。最悪だ、』
『…、其れでも、あいしてる…、』
片方のその言葉は誰にも聞こえず、
頬に流れる涙が誰かに見られる事も無かった。
ただ、片方は、自身の首に巻かれた、
首輪を外す気には慣れなかった。
其れを外すと、自身の片割れとの関係が、
消えてしまう気がした。
ただ、月が美しかった。
こんな別れの夜も、ヨコハマは美しかった。
其れから四年が経った。
片方の首に巻かれた首輪が変わることもなく、
片方は毎日のようにもう片方を求めた。
求めて、求めて。
抱きしめてほしくて、声を聞きたくて。
然し、その手は毎回宙を舞った。
求めても、手に入らない。
ただただ、虚しいだけ。
其れでもやめられない。
ある日、片方が見たのは、
4年ぶりのもう片方だった。
砂色の外套、顔の半分の包帯は消えていた。
そして、片割れは、
黒のはずのもう片方は、
光の、白い世界へ_____.。
其の時、初めて黒の中に生まれた感覚。
全てがどうでも良く感じた。
気づけば、黒は自身の家にいた。
そこで、思い返す。
片割れだと思ったていたもう片方は、
もう片割れなどではないのだと。
自身が黒ならば、もう片方は白。
等しく真反対な存在であった。
ふと、黒は自身の首に巻かれた、
忌々しい首輪を見た。
首輪にも似た其れを見て、
忌々しいと思ったのは初めてだった。
求めても求めても手に入らない。
虚しいだけ。
其れならば、自分から離れてしまおう。
唐突にそう思った。
普段から手入れをしていたナイフを構え、
一気に首輪を切り、外した。
実に5年ぶりの感覚がした。
重く、重く感じていた首輪がない。
酷く軽く、解放された気分だった。
彼奴のことはもう忘れようと。
あんな奴は元からいなかったのだと。
そう思い、黒は葡萄酒を流し込んだ。
その日、ポートマフィアに捕まった白は、
黒を見て顔を顰めた。
『…、外したの、』
首を見てそう云う白に、
黒は直ぐに何のことかを察した。
何故白が悲しそうな顔をするのか、
判らなかった。
『あァ、外したぜ』
『ッッ何で、!?』
怒声を上げた白に、黒は薄く笑い、応えた。
『裏切ったのは手前だろうが。』
その瞳は、何処迄も何処迄も黒かった。
かつてのもう片方と同じ目をしていた。
そんな黒を見て、白は更に顔を歪ませた。
之は、何処かであったかもしれない、
双つの黒の話。
next…♡×500
別アカで載っけたのを
コピペで貼り付けた手抜k(((
なんでもないです。(
コメント
2件
初コメ失礼しますッッ🙇🏻♀️ 「君は永遠に僕の狗だ」って太宰さんが言ってんのに太宰さん中也手放しちゃってチョーカー外しちゃう中也も、それに悲しむ太宰さんも可愛いですッッ... え、もう最高じゃないですか((