テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
※ご本人様との関係一切なし
※妄想と捏造の塊
※処女作故駄作注意
ymoiお誕生日おめでとう、🎉
規則正しいアラームの音に悪態を吐きながら目を覚ます。
重力に抗えずにもう一度ベットに倒れ込み、二度寝をする。
目を覚ましたら既に日は沈みかけで絶望する。
そんな、当たり前の日常。これを32年間続けた。
とは言わないが、少なくともここ数年はこの生活を続けているだろう。
でも、今日だけは特別に。今日だけは、普段よりも明るい時間に起きて、二度寝もせず、活動を始める。
ただ自分が生まれた日、と言うだけでどうしてこんなにも特別感が生まれるのだろうか。…まぁ、30を超えてから嫌になってくる部分も多くあるのだが。歳取りたくねー
「よし、音声投稿でもするか」
そんなことを心の中でぼやきながら、ぐーっ、と背伸びをして、パソコンを起動する。
(バキ、と言う音が背中からして一瞬死を覚悟した)
「6月28日は土曜日!いかがお過ごし_」
「__そんな感じで、今日もふぁいとだ〜!」
適当に一分強程喋り、つい…Xに投稿する。
早くもぽつぽつとつくいいねやリポストに少し頬を綻ばせながら、既に夏の空気を纏った外に出る
「パパー!!」
「は、え??いやパパじゃねぇわ!」
外に出た瞬間、パパ、と叫びながら此方に走ってくる金髪の同僚。やけに大きい荷物を持っているが、何をしでかす気なのだろうか、そもそもそんな大きい荷物を持って森の中を走るのは不可能では?…これが歳と運動神経の差か…辛。
夢追の姿を見つけると驚いた様に目をぱちくりさせて、またもや大きな声で叫んだ
「あれ、パパが起きてる?!星川が起こしてあげようと思ったのに…」
この女、随分失礼じゃ無いか?と言うか、森とはいえどこんな大きな声で叫ばれたら世間体が随分と怖い。
「失礼だな、夢追も偶には早くに起きれますよ…ってか俺がライブハウスの中にいる前提で叫んでたんか?」
「うん!早くパパに会いたくって!」
「早くパパに会いたくって…?」
聞き間違いか?うん、聞き間違いだな、きっと。
と言うか聞き間違いであってくれないと明日から夢追の命がない。どうして誕生日に冷や汗をかかないといけないんだ
「…夢追の聞き間違いですか?」
「www聞き間違いじゃないから!ほら!」
大爆笑しながらずい、と先程まで持っていた大きな荷物を押し付けられる。
「…何これ?時限爆弾?」
「酷!誕生日プレゼントなんだけど?!クッション!ゆめおさんの家座る時痛いし!星川の分も合わせて二個ね!」
「…え、?誕生日…プレゼント…?星川さんが…?」
思っても居なかったことに思考が停止する
誕生日プレゼント、と言ったか?星川が?
「びっ…くりした」
はぁ、と大きな息を吐く。無意識に息を止めてたようで、息苦しさを感じる。これが息を止めてた事からなのか、世間からの視線からなのかはわからないが。
「びっくりしすぎじゃない?!パパの誕生日なんだし、星川もお祝いくらいするんだけど」
「いや、されてもTwitterで軽く…とかかな、って」
実際、家にまで来てお祝いとか、1ミリも予想していなかった事だし。なんて伝えると、星川は大きなため息を吐いた
「いった?!何で殴った?殴る必要はなかったやんか!」
「星川もお祝いくらいしたいんですー!それじゃ帰るんで!」
そう言うと星川はくるり、と俺から背を向けて帰ろうとする
「ちょ、待て待て待て、星川さん?!」
「何ですかー?もう星川帰るんだけど!」
「あの、その、ありがとう…」
口籠りながらそう言うと、にやにやと笑う星川の姿が見える。顔に熱が集中して、赤くなっているのが自分でもわかった
「あはは、パパ顔真っ赤!!」
「暑さのせいだわ!」
「はー、おもろ!そう言うことにしといてあげる!それじゃあ星川は帰るから、お返しはブランド品でいいよー!!」
そう言うと、今度こそ彼女は帰って行く。
本当にパパ活になりそうなので、死んでもブランド品を買い与えるつもりはないが、まぁ誕生日に何かお返しするくらいは考えておいても良いだろう。
「さて…散歩でもしようと思ったけど、暑いし、もう外には出たし良いか」
実際ライブハウスから出て数歩しか歩いていないのだけれど。
「はー、暑。茹だるわこんなん」
部屋に戻るとパソコンがDiscordに連絡が来たことを示していて。こんな時間に?誰だろうか、仕事の連絡かな
そんな事を思いつつディスコを開く。
「黒夢町サーバー…?」
珍しいな、近々なんかあったっけ。来月のゲームの誘いかな、にしてはだいぶ早いけど…
そんなことを考えながら会話を遡る。
〈ゆめおちゃんおたおめ〜!!!33歳?〉
〈ゆめおお誕生日おめでとー33歳か…〉
「…はは」
思わず笑みが溢れた。
〈33歳イジリやめろ〉
〈これから名乗り口上は夢追い続けて33年?〉
〈ゆめおもうそんな歳になったんだ〉
〈しみじみ…〉
〈しみじみ…〉
〈二人してしみじみしないでもらっていい??〉
ツッコミながらも温かい気持ちに包まれていると、どんどんとドアが叩かれる。壊れるんじゃねぇの、と思いながらドアを開けると、そこには先程まで会話してた筈の町田と黒井がいた
「え?二人とも、なんで?」
「来ちゃった!ケーキあるから食べよ!!」
「ゆめおの誕生日プレゼント渡したい、って町田が」
あー!黒井サプライズの体でしょ!と、町田が怒る姿に
驚いてしばらく固まる
「あれ、ゆめおちゃん?おーい!」
「え、あぁ。ごめん、びっくりして、こんな炎天下にわざわざ来てくれるとは…」
とりあえず上がってよ、お茶くらいならあるし、と招き入れると、二人は遠慮もなしに家主より先にくつろぎ始める。
「家主よりくつろいでるのは何?はい、お茶」
「ありがとー、ゆめおがくつろいで良いって言ったから…」
「ゆめおちゃんこの家の床硬ーい」
「でしょうね、ライブハウスだし…あ、クッションあるけど、使う?」
そう言いながら、先程星川から貰ったクッションを取り出す。星川チョイスだからどんなもんか、と身構えていたが、取り出したクッションは案外シンプルな見た目で使いやすそうで、声には出さないものの、心の中で驚いておく。
「ゆめおちゃんが、クッションを?!」
「失礼な、さっき星川が家に来て、誕プレつってくれたのよ」
「へー、星川が、良い子だね」
ね、夢追もびっくりしてさぁ_なんて、他愛もない雑談を続けていると、突然町田ががさごそと荷物を取り始め、小さな箱を渡してくる
「何、これ」
取り敢えず受け取ったものの、箱からは何が入ってるのか想像出来ずに、町田に聞くと、にこにこと笑いながら教えてくれる
「これはねーお揃いのキーホルダー!町田と黒井の分もあるよ!」
箱を開けると、そこにはデフォルメされた黒い柴犬のキーホルダー。
「…黒井?」
「だよね!?黒井に似てて思わずこれだ!ってなったんだよねー!」
「ゆめおもさ、なんかバックとかにつけてよ、黒井もポーチにつけてるんだ」
キーホルダーを手に取る。小さなそれは勿論軽くて。
それなのに何故か重みを感じて、何だか嬉しくなる
「ふふ、ありがと、つけるね」
「うん!黒夢町でお揃いだね〜!」
「ね、お揃い!…あ、町田ケーキ、溶けちゃうよ」
「やばいやばい!食べよ!ゆめおちゃんお皿ある?」
「あーある、取ってくるわ」
「ゆめお、フォークとナイフもお願い!」
夢追翔33歳。祝われる事も祝う事苦手だから、誕生日も歳を取るだけの行事だと、毛嫌いしていた。
…でも、祝われてこんなに嬉しい気持ちになれるのならば、誕生日も悪くはないのかもしれない。