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『【わたしはその頃、まさか純也さんが〝あしながおじさん〟だなんて全然気づいてませんでした。だから表参道で「連絡先を交換してほしい」って言ってくれたのがあなたからの「付き合おう」っていうアクションだってことも、そもそもあのお出かけ自体が最初はデートのお誘いだったんだってことも気づかなかった。初恋だったから、鈍感でごめんね。
わたしがそのことに気づいたのは、その年の夏休みにあなたと付き合い始めてから。あなたの、というか〝あしながおじさん〟の言動に何だか矛盾してるところがあるな、それって純也さんにしてみたら都合がいいんじゃないのかなって思うと、自然と〝あしながおじさん〟の正体があなたなんじゃないかって気がついたの。元々『あしながおじさん』の物語が好きで、だから分かったっていうのもあったけどね。
でも、わたしはずっと気づいてないフリをすることに決めたの。あなたのことだからきっと、わたしを欺いることが苦しくなるはずだから、その時にあなた自身の口から本当のことを話してもらうつもりでした。
でも、純也さんはずっと打ち明けてくれなくて。一度は大ゲンカになったこともあったよね。「自立心の強すぎる頑固なガキは始末に負えない」とか暴言吐かれて。わたし、あれを聞いた時、あなたはわたしに自立してほしくないのかなって思ったけど、違ったんだよね。わたしが自立していくのは嬉しいけど、自分に甘えてくれなくなるのが淋しかっただけなんだって、あの後謝ってくれたね。今思えば、あれは〝あしながおじさん〟としての発言だったんだって分かるよ。
初めて書き上げた長編小説がボツになってわたしが落ち込んでいた時、励まそうとしてショッピングに連れ出してくれたことも嬉しかった。『あしながおじさん』の物語の中では、ジャービスはジュディを励ますためにプレゼントをドッサリ送っていたけど、純也さんはそれの現代版をしようとしてくれたんだよね?
こんなふうに、わたしとあなたの間にはいつも『あしながおじさん』の物語があって、わたしたちはジュディとジャービスと同じような行動をなぞっていたけど、一つだけ違っていたことがありました。それはやっぱり、わたしがもう〝あしながおじさん〟の正体を知っていたこと。だから、最初に純也さんにプロポーズをされた時にわたしは悩んだの。あなたからの援助を受けていたわたしが、その厚意に甘えてそのまま結婚してもいいのかな、って。
ジュディは〝あしながおじさん〟に相談できたからよかったけど、わたしにはそれができなかったからひとりで悩むしかなかった。そして、純也さんと正面から向き合うしか方法はなかったの。
コメント
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わあ…この後日談、すごく切なくて温かい気持ちになりました。主人公があしながおじさんの正体に気づきながら、あえて気づかないフリをしていたっていうのがもう…初恋の不器用な優しさがぎゅっと詰まってて素敵です。「ガキ」発言の真相に今さら気づくシーン、胸がじんわりしました。自立してほしいけど甘えられなくなる寂しさ、すごくリアルで。プロポーズ後のひとり悩む姿にも共感しました。お二人だけの物語がこうして全部つながる感じ、本当にいいエピソードでした📖🤍
結愛
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#純愛
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な こྀི
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