テラーノベル
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「そのとき劉磨がすごくビビってて面白かったんだ。今のあいつからは考えられないだろ。」
「劉磨さんが?普段あんなに強気なのに?」
聖さんと皆の話をしている。淡々と話す人なんだと思っていたけど、意外とそうでもないみたい……。
「びっくりといえば、前に部屋でキャンドル焚いてたらボヤ騒ぎ起こしたんだよね。悠夜さんに二度とキャンドル焚かないでくださいって言われちゃった…。」
「花月もキャンドル好きなのか?俺も好き。」
意外なことに聖さんと私は趣味嗜好が合うのか、共通点が多く話が尽きない。
「俺もここに来たばかりの時はキャンドル焚くなって言われた。でもバレないように焚いてる。たまにバレると持っていかれちゃうけど。」
「聖さんはローズ系?あ、柑橘系とか似合うかも……。」
「どっちも好きだ。基本的には自分でブレンドしてる。」
「え、これ、全部聖さんが作ったの?」
「そういうことになるな…。これ、よかったらもらってくれ。一番自信があるやつなんだ。」
「そんなにいいものもらえないよ。せっかくの出来なら自分で使わないと。」
「じゃあ…今つける。そうすれば2人で楽しめる。」
聖さんは無意識にかわいいことを言う。これがギャップというやつだろうか。
「湯が沸いた…。お茶淹れてくる。」
「私も淹れてみたい。やってみてもいい?」
「もちろんだ。でも熱いから気をつけろ…。」
ポットを手渡され両手で持つ。聖さんはあんなに軽々と持っていたけど結構重たい。
「あつっ!」
誤って手にお湯を引かけてしまった。ヒリヒリと痛みがある。
「痛…。」
「花月。」
ペロッ
「治った…。」
「あ…ありがとう。」
「怪我したら困るから…あとは俺がやる。」
何もなかったかのように、指を舐められた。なんだかドキドキしてくる……。
カップにお茶を注ぐ聖さんはすごく綺麗。これが絵になるってことなんだろうな。
「これ、花月の分。熱いから気をつけろ。」
「いただきます。」
息を吹きかけゆっくりと口の中にいれていく。すると甘い香りが鼻孔をくすぐった。
「すごくいい香り。」
「だろ…?これ、今のお気に入り。」
「前から思ってたけど、聖さんはおしゃれだね。洋服はもちろんだけど、こういう飲み物とか、使っている小物とか。」
「最近はこういうの、落ち着くから集めてる。」
「私、聖さんと一緒に買い物したい。いろいろなものを知ってそう。」
「今度行こう。約束。」
差し出された小指。自分の小指を絡ませ指切りをした。
「花月は…ここにきてからしばらく経つけど、慣れたか…?」
「う~ん…最初は怖かったし吸血鬼なんてって…思っていたけど皆と過ごして不安は減ってきたかな。」
「吸血鬼は血を吸うイメージが強いって言われるけど…基本的には普通の人間みたいな生活してる。それに、悪い奴だけじゃない。」
「私、家にいたときは外に出たことがなかったから友達…とかも知らなかった。ここにきて人と話すことの楽しさを知ることができた。すごく温かくて本当の家族みたい。」
「みたいじゃなくて……家族。花月が来て皆変わった。劉磨は過去のことに向き合えるようになった。奏は甘えるだけじゃなく強くなった。泰揮は部屋から出てくるようになった。悠夜は表情を表に出すようになった。俺も…こうやって話せるようになった。花月がいてくれるから…毎日が楽しい。来てくれて…ありがとう。」
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