TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

遥か遠い昔。朧気な記憶ながら___


「ねえママ。ひまも皆みたいに遊びたい!」

「ダメよ。貴方はお受験して、良い子になるんだから。」

「でも……。」

「何?」

「…ご、ごめんなさい。」


いつも、窓から年相応に遊ぶ同年代の姿を見ていた。自由奔放に遊んでいるのを見ると、羨ましく思う。


「お友達出来たから……遊びに行ってもいい?」

「……いいですか?でしょう。」

「は、はい……。」

「……ダメです。怪我したらどうするの?」

「えっ……な、なんで!」

「それにその友達って誰?」

「誰、って……。そんなの知ってどうするんですか…?」

「貴方に悪影響を及ぼすかもしれないじゃない。」

「で、でも…みんないい子で!」

「だめ。」

「えっ……。」

「私は、貴方のために言っているのよ。」

「……っ。」

「わかった?」

「はい……。」

「それに、その子とも縁を切りなさい。良くないわ。」

「……っ。」

「外に行くのも極力辞めてよね。」

下を向いたら涙が出そうだった。鼻が赤くなっていくのが自分でもわかる。掌に爪の跡が残るほど、強く握りしめていた。

なんで?なんでなの…?折角出来た友達なのに……。

反論したら、殴られて…。見捨てられる。


「見て…。今回のテスト、学年1位だったんです。」

「あら。凄いじゃない。貴方もやれば出来るのね。」

「!」

なんだ、言う通りに…『良い子』になれば認めてくれるじゃん。

たかがこれっぽっちの自分の感情を、押し潰すだけで。簡単…じゃん。

「ね…簡単だよね。」



ほら、本当はいつも、ずっとひとり。


友達じゃなくていい。誰か…誰か。


人が欲しい。


冷たい風が首元をすり抜ける。もう春とはいえど、寒いのは変わらない。それに、太陽が隠れ、日差しもないからだろうか。

高校の入学式。周りは偏差値の高い、いわばエリートの学校に受かった事を親やら友達に褒め称えられ、キラキラした目をしている。薄らメイクをしている女や、背伸びしてヘアセットをしている男。そんな奴らに虫酸が走る。

1人だけ異質な雰囲気を発している赫浦奈津は、良くいえば優等生。悪くいえばガリ勉の根暗。

別に高校生活に期待なんかしてない。高校とは勉強をして、進学する為の場所だから、とそう思う。

本当は、青春というものを味わっては見たいけれど、この人生を選択した時点で、諦めるべきだろう。

掲示されているクラス分けを確認すると、その教室に向かった。


ガラガラと音が鳴る古びたドアを開け、教室に入ると、いわゆる奈津とは真反対な___一軍系の人達が、もうグループをつくっている。流石に早すぎでは無かろうか。そういう人たちの考えは一生理解出来ないだろう。

そんなクラスの中心のグループの中心の、妙な染め方をしている奴と目が合う。

嫌な予感がした。

そいつは馬鹿にしたような不愉快その物の笑いと、仲間にコソコソと話す、奈津にとっては『気分を悪くするオンパレード』をしてみせた。天賦の才でしかない。

取り敢えず、そういう面では特別目立たないようにしておこう。成績が悪くなるだけだから、無駄でしかないと、そう思った。


「なぁ、お前。」

なんでだろう。目立たなくしたはずなのに、目の前にはあの妙な染め方をしているやつがいるじゃないか。

「……なんですか。」

「あんまり調子乗んじゃねぇぞ。」

そう間近で言われるが、調子乗ったつもりは全くもってない。偶然目が合ってしまっただけだ。

でも、そんな事言ったらもっと反感を買ってしまう。

「…わかりました。」

そう言うと、そいつは去って仲間の元へ戻っていった。本当になんだったんだろう。

「ま…いいや。」

気にしたら負けと言うのはこの様な時に使うのか。少し明日からが不安だが、行ってみれば何とでもなるはずだ。

ちなみに、あいつの名前を確認してみると、夢羅咲いるまというらしい。珍しい名字に珍しい名前だなというのが第一印象で、それ以上もそれ以外もなかった。

窓の外を見ると、雨雲が近づいてきたみたいで、更に暗くなっていた。

愛して♥して✘‎して

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

255

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚