少し落ち込み気味で暗澹(あんたん)としたムードを醸し出していたギレスラの復活に、バストロだけでなくレイブとペトラも笑顔を浮かべて安堵した瞬間、ジグエラは言葉を続ける。
『それにしても興味深いわねぇ、アタシ達が出逢ったレイブは一心に南に向かって走っていたじゃない? ギレスラが追い掛けていたイシビベノブは一目散に北へ走っていた、んでしょう? 何か因果関係が有るんじゃあないかしら? どう、バストロ?』
問われたバストロは馬鹿独特のやり方、判らない事は他人に転嫁する、そんな感じで言う。
「だそうだ、俺には皆目見当が付かないんだがぁ、どうだレイブ?」
素直なレイブは馬鹿ではなくちゃんとしているジグエラに向けて言う、正解だろう。
「うーん、因果関係、って言葉の意味は判らないんだけどね? ハタンガの中央、無人の中洲で育てられた僕たち四人はさぁ、夜以外、日中はそれぞれ別の場所で過ごせって、そう長老に言われていてねぇ、僕は南、バーミリオンの里、『美しヶ池』って言われていた水場で過ごす様に言われていたんだけどねぇ」
ジグエラは大きな金色の瞳をギラリと意味有り気に輝かしながら先を促す。
『それで? アナタ、レイブ以外、他の三人は?』
ギラリを意に介さないままでレイブは指を折りながらそっぽを向いて説明だ。
「えっとね、イシビベノブは北、竜の渓谷の手前、フォグの里で昼間を過ごすように言いつかっていてね、シパイは西の里、ジョーヌから出たら駄目だって言われていてねぇ、ガトは東の里、ブランに行っていたんだよ」
『ふむ、東西南北、それぞれの里に一人づつ…… 何か意味有り気じゃ無いかい? 何だろうねぇ?』
訝(いぶか)しそうなジグエラの言葉も気にせずにレイブは腰に差していた短いナイフを抜き放って、見せびらかすようにしながら言葉を続ける。
「意味があるか無いかは判んないけどね、ほら見てよこのナイフっ! 長老から貰ったんだけどさっ、これ『ゼムガレのナイフ』って名前付きのナイフなんだよねぇ、特別の証? なんだって言われたんだぁ~、そっくりのナイフを三人も持たされていてねぇ、イシビベノブは『スキタイのナイフ』を持っていたし、シパイは『コサックのナイフ』とか言うのを、可愛いガトが持っていたのは『グルカのナイフ』って言うんだってさっ」
ほおぉ、四人の隔絶されて育てられた子供達をゴライアス、巨人の子? それにそれぞれが持たされている短剣、ナイフが、ゼムガレ、スキタイ、コサック、それにグルカ、ってか…… やけに物騒な名を冠しているようだな……
ハッキリとした巨人とユーラシアご自慢の戦闘民族、か……? 何だろうか、小さくない胸騒ぎを感じてしまう私、観察者である。
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