テラーノベル
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重い扉が、ゆっくりと開いた。
空気が変わる。
いつもの部屋。
だが、その日は違った。
視線が、一点に集まる。
「……来たか」
低く、静かな声。
部屋の奥。
ソファに座る男が、ゆっくりと顔を上げた。
佐野万次郎
何も言わない。
ただ、見ている。
その視線の先にいるのは──
南暁音。
「……こいつ?」
不機嫌そうな声が響く。
三途春千夜 が、鋭く睨みつける。
「気に入らねぇな」
空気が張り詰める。
「まぁまぁ」
軽い声。
灰谷蘭 が笑う。
「面白いよ、この子」
「面白い?」
春千夜が眉を寄せる。
そのまま、ゆっくりと歩み寄る。
止める者はいない。
「……」
暁音は、動かない。
視線も合わせない。
「おい」
返事はない。
次の瞬間──
ナイフの刃が、喉元に当てられた。
「……っ」
誰かが息を呑む。
「これでも反応しねぇのかよ」
春千夜が、低く笑う。
刃が、わずかに食い込む。
血が滲む。
それでも──
「……なに」
声は、変わらない。
「……は?」
「任務?」
静かな声。
まるで、今の状況が“どうでもいい”かのように。
沈黙。
「……狂ってやがる」
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ゆるみちゃん
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春千夜が舌打ちをする。
その時。
「やめろ」
低く、重い声。
鶴蝶 が、前に出る。
「無意味だ」
春千夜が、ちらりと睨む。
「チッ……」
ナイフが離れる。
細い血の線が、首に残った。
それでも暁音は、何も変わらない。
「……」
その様子を、ずっと見ていた男がいる。
佐野万次郎
沈黙。
数秒。
「……お前」
ぽつり、と落ちる声。
「名前は?」
視線が合う。
初めて。
暁音が、ほんの一瞬だけ止まる。
「……南、暁音」
間。
ほんのわずかな、“ズレ”。
「へぇ」
マイキーが、小さく笑った。
「いいじゃん」
その一言で、
空気が変わる。
「気に入った」
誰も、口を挟まない。
逆らえない。
その言葉が、この場でどれだけの意味を持つのか、
全員が知っている。
「……は?」
春千夜が眉をひそめる。
「なんでだよ」
「強いから」
簡単すぎる理由。
それでも──
絶対だった。
「……」
暁音は、何も言わない。
ただ、そこにいる。
その姿を見て、
誰もが理解する。
この女は──
“扱いを間違えれば終わる”
そんな存在だと。
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