テラーノベル
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薄暗い部屋。
窓の外は、静かな夜。
「……暇」
退屈そうな声が落ちる。
ソファに寝転がる
灰谷蘭 が、天井を見上げた。
「ねぇ」
視線が向く先。
壁際。
南暁音。
今日も、変わらない。
動かない。
何も感じていないみたいに。
「暁音ちゃん」
「……なに」
即答。
間は、ほんの一瞬。
「こっち来て」
「……」
数秒の沈黙。
それから、ゆっくりと歩き出す。
目の前で止まる。
「なに」
同じ言葉。
同じ声。
「ねぇさ」
蘭が、身体を起こす。
ぐっと距離が縮まる。
近い。
普通なら、反射的に離れる距離。
それでも暁音は動かない。
「ほんとに何も感じないの?」
「……わかんない」
即答。
「ふーん」
蘭の指が、ゆっくりと伸びる。
頬に触れる。
冷たい感触。
それでも──
「……」
無反応。
「ねぇ、これでも?」
次の瞬間。
チクリ、とした痛み。
ナイフの先が、頬をかすめた。
赤が滲む。
それでも暁音は──
「……なに」
変わらない。
「……っは」
蘭が、小さく笑う。
「やば」
もう一度、刃を滑らせる。
わざと。
ゆっくり。
「普通さ、嫌がるんだけど」
「……そう」
興味なさそうな声。
その瞬間。
蘭の手が、止まる。
数秒。
「……ねぇ」
声が、少しだけ低くなる。
「なんで逃げないの?」
「……?」
本当に、分かっていない顔。
「逃げる理由、ない」
その一言で──
何かが、変わった。
「……あー、」
蘭が、ゆっくりと笑う。
「そっか」
手を離す。
「じゃあさ」
ぐっと顔を近づける。
耳元。
「俺が何してもいいってこと?」
囁く声。
普通なら、ゾッとする距離。
それでも。
「……任務なら」
変わらない。
沈黙。
そのあと、
「……っはは」
笑い声が、漏れた。
止まらない。
「なにそれ」
肩を震わせながら、蘭が笑う。
「ほんとにさぁ」
顔を上げる。
その目は、もう“遊び”じゃない。
「最高じゃん」
歪んだ笑み。
「壊れないんだ」
その一言に、
ぞくりとした空気が流れる。
暁音は、何も言わない。
ただ、そこにいる。
その姿を見て──
蘭は、確信した。
これは、ただの“面白い”じゃない。
「……ねぇ、暁音ちゃん」
「……なに」
「もっと見せてよ」
その声は、もう止まらない。
興味は、
確実に──
“執着”に変わり始めていた。
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🌙月見🌿
#狂気
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