カゲロウデイズ パロディー(version:眞秀、怜)
その日は、桜が満開で綺麗だった。川も花筏ができていて、公園ではお花見客で賑わっていた。私は、怜と怜の家で飼っている、豆ちゃんという猫と一緒にお花見をしていた。私も怜も、21日は学校の創立記念日だった。最近は会えていなかったから…嬉しい。「綺麗だね」気づいたらそんな言葉が口からぽろっと出た。豆ちゃんもとても気持ちよさそうだった。「…そうだね」「もう、高校生になるのかぁ…」「本当に、私も信じられないよ」「時はすぐすぎて行くものだからね」桜を見ると、毎年こんな会話をしてしまう。一年なんてあっという間だ。
そして、また一年が過ぎていく。人間はそんなものだ。「思えば、一年大変なこともたくさんあったね」「うん、俺布団にコーラをこぼして大変だったよ…」「…布団では、飲み物飲まないでね…。私も小さい頃あったから」そんな他愛ない会話をしていると、豆が「にゃー」と鳴いて怜の腕から飛び出してしまった。「あ…」怜はそういうと、豆の後を追いかけた。そのまま、公園を出ていて気づいたら、怜は車道に飛び出していた。後ろからクラクションが鳴り、ブレーキの音も聞こえた。時間が止まったように感じた。いや、止まって欲しかった。私は、赤く染まった電柱を呆然と見つめていた。黒い何かが「これが現実だ」と嗤った気がした。
目を開けると、そこには見慣れた天井があった。ここは、私の家だ。慌てて時計を見ると3月21日の8時だった。怜を死なせないように、豆を置いてきてほしいと頼むことにした。私は、怜とのトーク画面を開く、そして「ごめん、豆は連れていけないと思うんだ…。勝手だけどまた、家に行った時触らせてくれないかな…?」と入力して、送った。しばらくすると、着信音が鳴った。「あ〜、やっぱり無理かなぁ?俺の家に来た時は沢山触ってね!」安堵の息とともに、またベットにもたれかかった。これで、大丈夫…だよね?
そしてまた、同じように他愛ない話をしていたら、昨日のことを思い出した。私は慌てて「じゃあ、そろそろ帰ろうか」と車に気をつけて公園を出た。しばらくすると、道を歩いていた人たちが上を見上げ、口々にこう言った。「にげろ」わたしたちは、信じられなかった。信じたくなかった。それでも、上から何かが降ってくるのが見えた。もう、防ぐことはできない。足は固まって動かなかった。「え…」ガーンと地面が鳴った。とても大きな音をたてて。私は、赤く染まった鉄骨を呆然と見つめていた。また、黒い何かが「かわいそうだな…」と私を嘲笑ったような、そんな気がした。
繰り返して、繰り返して何年経ったのだろうか?もう、幸せな一年は来ない…?時が止まって、おんなじ時間が繰り返されている。怜は、私の目の前で死んでしまう。そうだ…。最初からこうすれば…。いや、本当は気づいていた。でも、こうするのが嫌だったんだ。今日も、私は怜と公園で話した。帰ろうかと公園から出るとトラックが私たちの方へと向かってきた。もう、逃げることもしなかった。私は、怜の前へ飛び出し「これで、死なずに済むね」と言った。怜は、驚いた、泣きそうな、そんな顔をしていた。黒い何かは目を見開いていた。ふふ、ざまぁみろ
黒い何かは、怜の背後にもいた。え…?もしかして…
「あーあ…またダメだったよ。今度こそ行けると思ったのに…ねぇ?眞秀。」俺は豆を腕の中で抱っこしながら、一人そう呟いた。
END.元ネタ カゲロウデイズ
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