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紫倉 紫
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48
#再会
イツカ
1,188
第四十九話 シャッターの先に
「自分が信じた一枚には、きっと理由がある。」
十一月中旬。
フォトコンテストの応募締切まで、あと一日。
湊の机には、何枚もの写真が並んでいた。
夕焼け。
夏祭り。
文化祭。
秋の公園。
どれも大切な思い出が詰まっている。
けれど、応募できるのは一枚だけだった。
「……決められない。」
湊は深いため息をつく。
*
翌日の放課後。
写真部では、
それぞれが応募作品を封筒に入れていた。
「決まった?」
蓮が声をかける。
「うん。」
そう答えたものの、湊の手は少し震えていた。
最後に選んだのは——
『秋の贈りもの』
落ち葉を集める少女と、その隣で微笑む祖父。
何気ない日常。
でも、その写真には
温かい想いが確かに写っていた。
先生は作品を受け取り、優しく微笑む。
「神崎。」
「この一枚を、自分で選んだんだね。」
「はい。」
「なら、自信を持ちなさい。」
その言葉に、湊は力強くうなずいた。
*
帰り道。
空には細い三日月が浮かんでいた。
「これでよかったんだ。」
そう思えた瞬間だった。
スマートフォンが震える。
画面には、紬からの着信。
「もしもし?」
『神崎くん。』
いつもより少し弾んだ声だった。
「どうしたの?」
『今日ね、学校で写真の発表会があったの。』
『私の写真、先生に褒めてもらえた!』
「本当に!?」
湊は自分のことのように嬉しくなった。
「おめでとう!」
『ありがとう。』
『でもね……。』
一瞬、紬の声が静かになる。
『一番最初に伝えたいって思ったのが、神崎くんだった。』
その言葉に、湊の胸が高鳴る。
「俺も。」
自然と言葉がこぼれた。
「今日、応募作品を提出したんだ。」
『そっか。』
『神崎くんなら大丈夫。』
「結果は分からないけど。」
『ううん。』
『神崎くんの写真は、もう誰かの心に届いてる。』
その一言で、不安が少しずつ消えていった。
*
通話を終えたあと。
湊は部屋の窓を開ける。
夜空には、小さな星が瞬いていた。
写真を始めた頃は、ただ景色を残したかった。
今は違う。
誰かの笑顔。
誰かの優しさ。
誰かを想う気持ち。
そんな「目には見えないもの」を残したい。
その想いが、シャッターを押す理由になっていた。
湊はカメラを手に取り、夜空へ向ける。
カシャッ。
その音は、新しい夢への一歩のように響いた。
📷 Photo.049『信じた一枚』
撮影日:11月14日
大切なのは、
誰かに選ばれることじゃない。
自分で選んだ一枚を、
最後まで信じられること。
コメント
1件
「自分で選んだ一枚を、最後まで信じられること」——この一文が本当に沁みました。湊くんがたくさんの思い出写真の中から迷って、それでも『秋の贈りもの』を選んだプロセス、そして紬さんからの「もう誰かの心に届いてる」という言葉にじんわりしました。見えないものを残したいという気づきが、写真を撮る意味を深めてくれて。三日月の夜の電話シーン、とても温かかったです🌙