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私を助けてくれた人

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私を助けてくれた人

16 - 第16話

♥

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2024年06月17日

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少し前に始めたバイト。

そのお金を持って、スーパーへ。



今日は15日。仁人くんの誕生日。



「すーーはーー、」



大きく深呼吸をして、スーパーの中に入る。

あぁ、やっぱり苦手だな。



人目が怖くて、どうしても俯いてしまう。

早く出たい、。




お目当てのものを買って、レジに並ぶ。

待ってるだけなのに動悸がする。

カゴを放って逃げ出したい。



そんな衝動を抑えて、震える手でお会計を済ませた。




「疲れた、…。」




スーパーを出ると、どっと疲れが押し寄せた。帰ったらとりあえずケーキを焼こう。それから前に買ってた食材を使って何か作ろう。


今日は頑張った。


だってひとりでスーパー行って、レジも出来たんだもん。頑張った。頑張った。









「ただいまー。」




誰もいない仁人くんのお家。

自分の家より、自分の部屋より

うんと落ち着ける仁人くんのお家。


私の居場所はここだ。

私が「ただいま」を言える場所。








「とりあえず、…」














「ただいまー。」



夜、日付けを越すまでに帰って来た仁人くん。




「おかえりー!」




いつもより少しテンション高く出迎えれば




「なに?どうしたの?」




なんて優しく笑う。








「お誕生日、おめでと~!!」



クラッカーを鳴らして、精一杯の言葉を述べれば



「ふは、びっくりした~。」

「おめでとう。」

「うん、ありがとう。」



うまくいかなかった装飾を、愛おしそうにじっと眺めて、にこにこしてる。








「風呂入ってくるわ。」

「うん。じゃあ待ってるね。」




カレカノみたいなやり取りなんかして

仁人くんの誕生日に浮かれてる自分に

気が付いた。






「ひーなー」

「ん、」



仁人くんが帰って来た安心感からか

いつの間にか寝てしまっていたらしい。

仁人くんの声で起こされた。






「えぇ!買い出し行けたの?! 」

「うん、頑張った、。」

「てかこのハンバーグめっちゃうまい。」

「チーズインにしてみたの。」



ハンバーグは小さい頃、よく母と作っていた。そのおかげか、ハンバーグには自信がある。



「私、粗みじん苦手なんだよね~。」

「あ!言われてみれば細かいわ。」

「粗くできるようにしたい。」

「でもまぁいいんじゃない?」




誰かと話しながら食べる、温かいご飯。

知らなかったな。

こんなに美味しいってこと。

幸せだってこと。



家族と一緒に食卓を囲んでも

兄はいないし

日によっては父もいない。


父がいる日は必ずと言っていいほど

夫婦喧嘩が始まって

ご飯どころじゃなくなってしまうんだよね。


「おいしいね」なんて

いつの日か言い合わなくなって

みんな各々スマホを弄るだけの食卓。


正直、ご飯の味なんてしなかった。

ひとりで食べてた方がマシだった。



「仁人くん、お誕生日おめでとう。」

「私を助けてくれてありがとう。」



プレゼントの代わりのケーキに

そんな言葉を添えて手渡せば



「おぉ、すげぇ。」



いつもみたいに笑ってくれた。

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