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年を越して3月。
もう慣れ親しんだ校舎とも
やっと、お別れができるらしい。
学校指定の制服はなくて
スーツで参加する卒業式。
通信制に転入して4年。
色々あったけど
あっという間だったような。
いや、長かったか。
まぁでも、そうでもないかもな。
式が終わって
仁人くんのお家に帰ってスーツを脱いで、
少しドレッシーなワンピースを着て
仁人くんと一緒に家を出た。
「卒業おめでとう。」
「…ありがとう、。」
「親来てた?」
「…うん。でも普通だった。」
「怒られなかった?」
「うん。」
少し肌寒くて、身震いすれば
「寒いよね。」
と、自分のジャケットをかけてくれた。
「…陽だまりに包まれて…」
「…小さな幸せも大切にしてね」
「っていう意味を込めて、『陽菜』だって。」
他人事みたいに、名前の意味を呟けば
「愛されてたね。」
って、仁人くんが言った。
「愛されてるとか、愛されてたとか、」
「そーゆーの、どーでもいいの。」
「ただ、…」
「…私を肯定してほしかった。」
「学校に行けない、不登校の私を、」
「ただ、認めてほしかった、。」
「仲良くしててほしかった。」
「ただそれだけ。」
少し気まずい空気が流れる。
「仁ちゃーん!陽菜ちゃーん!」
その空気をかき消すように
後ろから舜ちゃんの声がした。
「バカ!バレたらどうすんの?!」
「ごめんごめん。」
「陽菜にも迷惑かけることになるよ。」
「そうなったら私はもう会わない。」
仁人くんの家も出ていくって宣言する。
「はぁ?何勝手なこと言ってんの??」
「そうやで?仁ちゃんにお世話されとき?」
「ふは、ペットじゃあるまいし。」
ふたりに案内されて入った
少しお高そうな焼肉店の個室。
そこには花束を持った柔太朗さんがいて
佐野さんと塩﨑さんもいて
「ぇ…?」
困惑する私に、5人が声を揃えて言った。
「卒業おめでとう!」
柔太朗さんから花束を受け取って
佐野さんが5人からって言って
何かプレゼントをくださった。
「開けてもいいですか。 」
「いいよ。開けてみて。」
プレゼントは
ブランドに疎い私でも知っているような
有名なブランドのお財布だった。
「こんなの、私、受け取れないです、!」
そう言って 突き返そうとしたけど
「受け取ってよ。俺たちからの卒業祝い。」
佐野さんに拒まれてしまった。
だから
「ありがとうございます、。」
素直に受け取った。
「今日はほんと、ありがとうございました。」
卒業祝いも花束もプレゼントも
どれもこれも本当に嬉しくて
お礼を言って4人とお別れして
今日も仁人くんのお家に仁人くんと帰宅。
なんてことない日常が幸せだとは
思っていたけど
本当にこんなに幸せだとは思わなかった。